コンプライアンス可変型構成方程式の拡張とクリープ試験結果による検討
3.大久保・西松(1986)がおこなった一軸圧縮応力下でのクリープ試験結果による検討

3・1 応力レベル77%の歪速度曲線からのパラメータの導出

初期段階のクリープでは,λが1より少しだけ大きな値をとるので,(3)式右辺第1項が第2項に比べて大きくなり,(3)式は次式で近似できる.

/dt = a1(σn1(λ−1)−m1  (4)

この式は解析的に解くことができ,弾性歪を差し引いたクリープ歪ε=σ(λ−1)と歪速度は次のようになる(大久保・福井,2002).

クリープ歪   (5)

クリープ歪速度   (6)

(6)式からわかるように,縦軸をクリープ歪速度とし,横軸を経過時間とした両対数グラフ上に計算結果を描けば,その傾きは−m1/(m1+1)となる.例として三城目安山岩のクリープ試験で,寿命が幾何平均値にもっとも近い結果を図1に示すが(大久保・西松,1986),初期段階を図に示した破線で近似することにすれば,図上の傾き−m1/(m1+1)が−0.9となるので,m1=9を得る.さらに,このm1と既知の応力レベルσ=0.77を(6)式に代入して,(6)式より得られる計算結果が図の破線とほぼ重なるときのa1を求めると10−9[1/s]となる.

次にλが十分に大きくなった3次クリープの場合を考えてみると,(3)式右辺第2項が支配的となり,(3)式は次式で近似できる.

/dt = a3(σn3(λm3 (7)

この場合にも解析解があり既報で示した(大久保,1992).解析解の内,m3>1のときは次のようになる.

クリープ歪   (8)

クリープ歪速度   (9)

なお,m3<1では,急激な破壊がおこらないので,今回の議論の対象外とした.さて,(9)式は若干の変形をすると次式となる.

クリープ歪速度   (10)

ここでTは,破壊するまでに残された時間(残存寿命)であり,縦軸をクリープ歪速度とし横軸を残存寿命として両対数グラフ上に計算結果を描けば,その傾きは−m3/(m3−1)となる.図1と同じ三城目安山岩の試験結果を図2に示すが(大久保・西松,1986),3次クリープを図に示した破線で近似することにすれば,図上の傾き−m3/(m3−1)が−1.018となるのでm3=55を得る.さらに,このm3と既知の応力レベルσ=0.77を(10)式に代入して,得られる計算結果が図の破線とほぼ重なるときのa3を求めると10−8[1/s]となる.なお,同一条件でおこなった他の試験結果によれば,−m3/(m3−1)の傾きの測定には−1.01〜−1.03の範囲でばらつきがあり,対応するm3は35〜100の範囲で変化する.傾きの代表値として採用した−1.018は単純平均値である.

クリープの初期段階のデータからm1とa1を,破壊に近い3次クリープからm3とa3を求めた.以上の検討から採用した(3)式中のパラメータをまとめて記すと次のようになる.

a1=10−9[1/s] 

a3=10−8[1/s] 

n1=35  n3=35 

m1=9   m3=55

3・2 応力レベル77%のクリープ試験結果と数値計算結果との比較

3・1で求めたパラメータを(3)式に代入すれば,初期段階から最終段階までのクリープ歪速度曲線がもとまり,さらに若干の計算の後にクリープ歪曲線が求まるはずである.

大久保・西松(1986)は,応力レベル77%で6回のクリープ試験をおこなっている.使用した三城目安山岩の一軸圧縮強度などを表1に示す.図3には,クリープ歪速度およびクリープ歪の試験結果と計算結果とを示す.図中の実線は計算結果である.●は前節でパラメータを求める際に使用した試験結果であり,その他の試験結果は●以外の記号で示した.これからわかるように,クリープ歪速度はしばらくの間,時間の経過にともなって低下していき,やがて寿命の半分あたりの時間より増加に転じることがわかる.これは,これまでおこなわれた多くの試験結果で確認されている事項である(例えば児玉ら,2001).実線で示した計算結果も同様の傾向をみせることがわかる.既に述べたように,従来のコンプライアンス型構成方程式では(3)式の右辺第2項しか考えていなかったので,1次クリープの挙動はうまく再現できなかったが,右辺第1項を追加したことにより,実際の試験結果をかなりよく再現できるようになったといえよう.図3(b)には,クリープ歪曲線も描いておいたが,クリープ歪曲線の形状についても,試験結果と計算結果とはかなり似ているといえよう.なお,6本の試験結果の寿命(幾何平均値)は24×10sであったのに対して,計算結果では49×10sとなった.n1とn3が等しい場合,寿命はa1とa3に反比例するので,これらの値を修正して試験結果と計算結果の寿命を一致させることは簡単にできるが,これまでの経験から,試験片ごとの強度のばらつきによりクリープ寿命は大きく変わることが知られており,2倍程度の差異は重大でないとして話を進めることにする.

3・1で述べたように,パラメータの中でもっとも求めにくいのがm3であった.m3が大きくなるとクリープ歪線図は急に折れ曲がるようになり,逆に小さくなると徐々に1次クリープから3次クリープへと遷移していく.図3のクリープ歪曲線をみると計算結果と試験結果とはある程度一致しており,m3=55とした選択はクリープ歪線図の観点からみてもほぼ妥当な選択であったといえる.

図4には,横軸を残存寿命としたときの試験結果と計算結果とを示す.これまでの試験結果によれば,クリープ破壊直前の挙動にもある程度の規則性があり,近似的に破壊までに残された時間(残存寿命)と歪速度は反比例する(大久保・西松,1986).図4に示したように,計算結果でもこのような傾向がうかがえるが,これは(3)式右辺の第2項しか考えない従来のコンプライアンス可変型構成方程式でもいえたことである.従来のコンプライアンス可変型構成方程式は主として3次クリープの再現を重く見たものであるが,(3)式のように右辺第1項を追加したとしても3次クリープでは,第2項が支配的となり,従来の構成方程式とほとんどかわらない計算結果となる.

3・3 応力レベル87%のクリープ試験結果

大久保・西松(1986)は,応力レベル87%でも11回のクリープ試験をおこなっている.図5には,クリープ歪速度およびクリープ歪の試験結果と計算結果とを示す.この場合の寿命の計算値は0.68×10sであるのに対して,試験結果の寿命(幾何平均値)は0.21×10sであった.応力レベル77%のときと同様に,この場合にも計算値の方が大きくなりその差異は約3倍であり,応力レベル77%の2倍と比較して差がやや広がった.その原因は試験にあるのか,構成方程式にあるのか不明であるが,現時点ではさほど重視する必要がない程度の差であると考える.クリープ歪速度曲線およびクリープ歪曲線については,応力レベル77%のときと同様に,計算結果と試験結果とはまずまずの一致みせるといってよかろう.

図6には,横軸を残存寿命としたときの試験結果と計算結果とを示す.応力レベル77%の場合と比較して,寿命が短くなっているだけで定性的な傾向はほぼ同じといえよう.この場合にも,計算結果と試験結果の一致はまずまずといえよう.