コンプライアンス可変型構成方程式の拡張とクリープ試験結果による検討
5.秋ら(1995)がおこなった一軸引張応力下でのクリープ試験結果による検討

一軸引張応力下でのクリープ試験結果に関する報告は少ない(西松・山口,1980).秋ら(1995)は,三城目安山岩を使用した一軸引張クリープ試験を実施した.簡単な考察をしてみると,荷重を一定に保った場合,岩石試験片に含まれる亀裂は徐々に数を増すとともにその長さも増大していくので,クリープ歪速度も単調に増大しそうであるが,試験結果をみると,一軸圧縮クリープの場合とほとんど同じで,最初の間はクリープ歪速度が減少していき,寿命の半分ほどの時間が経過した後には歪速度が徐々に増大し破壊に至る.

上記のように一軸引張応力下でのクリープ挙動は定性的には一軸圧縮応力下でのそれと似ていることがわかったので,次の段階として,両者を比較しつつある程度定量的に議論するために,今回提案した構成方程式による計算結果と比較してみる.

表1に示すように秋ら(1995)の使用した三城目安山岩の一軸引張強度は3.78MPaである.この一軸引張強度は,歪速度10−6(1/s)とした定歪速度試験で求められたものである.さて,(3)式の構成方程式は無次元化されており,無次元化する際に用いる強度は同じ無次元化歪速度dε/dtで求められたものでなくてはならない.言葉を変えていえば,強度破壊点に達するまでの試験時間tが圧縮と引張で同じとする必要がある.調べてみると大久保・西松(1986)の一軸圧縮試験のtは約800sであるのに対し,秋ら(1995)の一軸引張試験でのそれは約500sである.そこで,多少の差はあるが両者の無次元化歪速度ないしtFは同等とみなし,大久保・西松(1986)の試験結果を根拠として求めたパラメータをそのまま使用して計算をすることにした.

図9には,応力レベル82%,88%,98%におけるクリープ歪速度の試験結果と計算結果とを示す.太い実線は(3)式によるものであり,パラメータは3・1の最後に示した値を用いた.試験結果の寿命は計算結果より長いことがわかる.また測定結果の応力レベル82%と88%の寿命の差が大き過ぎるようにおもわれる.しかしながら,クリープ試験の初期段階におけるクリープ歪速度の値,図上の曲線の傾きは,測定結果と試験結果とでかなり良くあっているといえよう.また,クリープ歪速度が最初減少し,やや停滞し,最後に加速的に増加する傾向もかなりよく一致しているといえよう.残念ながら一軸引張クリープは難度の高い試験であり,これ以上の議論をするのに十分な試験結果がないが,一軸圧縮クリープで求めたパラメータをそのまま使用して計算した結果が,図9に示したように一軸引張クリープにもある程度あてはまることは本稿がはじめて指摘したとおもう.