コンプライアンス可変型構成方程式の拡張とクリープ試験結果による検討
7.考察

7・1 一軸圧縮試験への拡張の可能性

本稿では従来の構成方程式の右辺にもう一つの項を追加し,以上では,応力一定とした条件下での挙動について計算結果と試験結果とを比較してきた.従来のコンプライアンス可変型構成方程式の特徴の一つとして,クリープのみならず応力緩和や一軸圧縮試験などにも適用できることがあげられる(大久保,1992).この特徴は今回提案した構成方程式でも損なわれていない.ただし,定量的な一致については個別に検討する必要がある.詳細な検討は後報にゆずるとして,第3章で求めたパラメータを用いて,定歪速度による一軸圧縮試験をシミュレートしたら,試験結果と計算結果とはどの程度一致するかどうかを調べてみる.

図10には,図3や図4と同様にパラメータを選んだときの応力−歪曲線の計算結果と試験結果とを示す.計算,試験とも次式であらわされる応力帰還制御(大久保・西松,1984)で載荷速度C=10−5/s,α=0.5の場合である.

ε−α(σ/E)=C・t (11)

試験結果の最初の部分はやや下に凸になっているが,この原因の一つは端面の変形でありもう一つは三城目安山岩独自の特性である.試験結果は既報に掲載したもの(大久保・西松,1986の図9)と同じであり,平均強度よりやや強度が小さい.計算結果より試験結果の強度がわずかに小さい原因の一つである.

m3が大きいので定歪速度と仮定して計算した場合,強度破壊点直後に応力が急激に低下する.試験結果では,強度破壊点を越えた直後にA点からB点まで応力が10%強低下するが,この部分の応力−歪曲線の傾きは正で,計算結果とよくあっている.しかし,その後,応力−歪線図上でB点からC点まで斜め下にわずかに移動し,それから再度正の傾きとなる.このように破壊が何段階かにわたって生じるのは試験片の不均質性によるものと思われるが,計算結果ではそこまでの詳細な現象を表すことに成功していない.強度試験から得られる応力−歪曲線に関する詳しい議論は稿をあらためておこなうことにする.

7・2 周圧下への拡張の可能性

本稿では一軸応力下でのクリープについて検討してきた.従来のコンプライアンス可変型構成方程式と同様に,今回提案した構成方程式も周圧下に適用できるが,構成方程式中のパラメータについては不明な点が多い.

一般に周圧下でのクリープ試験には,周圧を良い精度に長期間保つことが困難であることなど難点が多く,一軸応力下での試験結果と比較して報告されている例が格段に少ない(山口ら,2000;山口・大久保,2000).幸い本稿で対象とした三城目安山岩については,ある程度の試験結果が公表されており,次のことが指摘されている(趙ら,1995).

@周圧の増加に伴って,n3が増加する.そしてn3は破壊差応力にほぼ比例する.

Am3はほぼ同じである.追加した(3)式右辺第1項にかかわるパラメータについては,既報(趙,1995)のデータより次のことがいえる.

Bn1については有力な情報がない.

C1次クリープの段階におけるクリープ歪速度と経過時間の関係に大幅な変化はない.したがってm1の変化も比較的小さいと考えられる.

  これ以上の議論は後報にゆずる.

7・3 FEMなどへの組み込みの可能性

コンプライアンス可変型構成方程式をFEMなどの数値計算プログラムに組み込むことは,徐々に進みつつあるといえよう(大久保・金,1993).今回の構成方程式の開発にあたっても,従来の構成方程式との連続性を重くみて,基本的な理念を可能な限り変えないよう努力したつもりである.その結果,今回提案した構成方程式のFEMプログラムへの組み込みは従来どおりのプログラミングでよいと思う.また,既に従来のコンプライアンス可変型構成方程式が組み込まれているFEMプログラムの場合,(3)式右辺第1項を追加するだけであり,ごく短時間の作業でできることと考えている.

これまで使用してきた(1)式の構成方程式では,地圧が大きく坑壁の周囲がかなり損傷するときが,主たる対象であった.この場合にはピーク強度を超えた部分が坑壁から順次奥へと広がるにつれて,コンバージェンスが増えることになる(大久保・金,1993).今回,1次クリープの項を追加したことで,比較的地圧の小さい場合や掘削直後のコンバージェンスがより良く再現できる可能性がある.

7・4 他の構成方程式との関係

Dragon & Mroz(1979)や大久保・西松(1986)のように,非弾性歪が増加することを重視して構成方程式を組み立てる方式もある.実際は,コンプライアンス,非弾性歪ともに変化するはずであるが,両者を分別することは難しく構成方程式のパラメータを求めることが極めて困難である.よって,どちらか一方だけが変化するとして構成方程式を組み立てるのが実用的と考える.現在のところ非弾性歪を変化させる場合と,コンプライアンスを変化させる場合とでどちらが総合的に有利かは不明である.一つだけいえるのは,既存の有限要素法プログラムに組み込むには,後者の方が簡単なことが多いことである.