トンネル変形の巨視的指標の提案
2.巨視的指標の提案

2.1 内空変位

トンネル周辺の岩盤が軟弱で内空変位や支保荷重が大きくなる可能性のある区域では,内空変位を定期的に測定している.もっとも簡単な例を図−1(a)に示すが,このように設置した3点を結ぶ3角形の3辺を測線として内空変位を測定すると,水平な2点間の内空変位のみを測定した場合と比較して,得られる情報量が大幅に増加する.

ここでは3点を結ぶ三角形の歪をもってトンネル変形の巨視的指標とすることを提案する.つまり,図−1(a)の内空変位用測線1,2,3で構成される三角形内が一様歪状態であると仮定し,二次元弾性論にもとづいて歪を計算する.

 測線の初期長さをL0とし,変形後の長さをLとする.また,図−2に示す様に,その傾きαをx軸(水平)から反時計回りにはかるものとすれば,垂直歪 =(L−L0) / L0は次のようにあらわせる.なお,トンネル断面は掘削が進行するとともに減少するのが普通であるから,多くの場合,垂直歪 は0より小さい.これは,引張歪を正と定義しているからである.

 (1)

εx, εy, γxyは,それぞれ三角形の垂直歪のx,y成分とせん断歪をあらわす.ここで,3本の測線の傾きをα1,α2,α3とすれば,式(1)と同様な式が3個成り立ち,行列を用いてあらわせば次のようになる.

Ax = y    (2)

ただし,

xの転置=(εx, εy, γxy)

yの転置=(ε(α1), ε(α2), ε(α3))

式(2)は容易に解けてその解である εx, εy, γxyまたはこれらから計算できる主歪ε1, ε2, およびε1の傾きを,トンネル変形の巨視的指標として提案する.

これまでに述べてきた考えは,図−1(a)に示すような単純な場合だけではなく,図−1(b)に示すようなやや複雑な場合にも適用できる.一般にn個の測線で内空変位を測定したとしよう.その場合には,式(2)は次のようになる.

Ax = y    (3)

ただし,

xの転置=(εx, εy, γxy)

yの転置=(ε(α1), ε(α2), ε(α3),・・・,ε(αn))

式(3)では方程式の数がn個で未知数は3個であるので,最小二乗解をもとめることにする.良く知られているように,最小二乗解は正規方程式

Ax = Ay    (4)

の解としてもとまる.

nの数がせいぜい10個程度の小さな問題なので,式(4)の解は簡単にもとめることができる.たとえばExcelなどの表計算ソフトに,フリーソフトとして提供されている付加機能(アドイン)を加えてもできる3).

2.2 岩盤内変位

図−1(a)に示す様に岩盤内変位計を埋め込んで計測する場合も多く,緩み領域の範囲を決める有力な判断材料となっている.前節と同じように,この岩盤内変位計の測定値をまとめて巨視的指標としてあらわすこともできる.

側壁と岩盤内変位計先端との距離を測る場合を考えてみる.側壁と岩盤内変位計先端間の距離Lは,初期値をL0として時間の経過にともなって伸びることが多い.ここでもし緩み領域が岩盤内変位計先端より内側にとどまっており,岩盤内変位計先端はほとんど動かないとすれば,内空変位からもとめた巨視的指標と岩盤内変位からもとめた巨視的指標とは,符号が異なるものの同様に変化する可能性が高い.したがって,内空変位と岩盤内変位とからそれぞれもとめたトンネル変形の巨視的指標をモニターするならば,信頼性の高いモニター手段となると考えられる.