トンネル変形の巨視的指標の提案
3.中程度重圧帯での整理結果

同和鉱業(株)花岡鉱業所深沢鉱山部の探鉱坑道(地表下400m)のロックボルト支保区間と鋼アーチ支保区間の2箇所で計測はおこなわれた4)5).参考までに,岩盤物性や地圧を表-1に示す.図−3に示す試験坑道は幅4.5m,高さ3.3mのアーチ型坑道であった.ロックボルト支保区間では長さ3m,直径(山径)25.4mmのSNツイストボルトを1断面当たり9本,坑道軸方向に1mピッチで打設した.鋼アーチ支保区間では,鉱山用I型鋼SMI-115の三部材をM形継手で緊定したものを坑道軸方向に1mピッチで施し,枠間には木製矢板を掛けた.

1981年9月28日から1982年10月28日までの内空変位の計測結果は既に公表した4).その後も1984年7月4日まで測定をおこなった.この未公表データを合わせて整理した結果を図−4に示す.これからわかるように,変形はかなり大きくパーセントオーダーとなる.ロックボルト支保区間では,ロックボルトにより坑道周辺の岩盤が一体化するので,最大主歪と最小主歪との差が比較的小さいことがわかる.これに対して,鋼アーチ支保区間では,矢板と岩盤との間にかなりの初期隙間があったので,岩盤はほぼ自由に変形を続けた.その結果,最大主歪と最小主歪との差が大きくなった.なお最大主歪の方向は,水平線(図3のスプリングライン)から反時計回りに測って,ロックボルト支保区間で約100°,鋼アーチ支保区間で約140°であり,この角度は測定期間中大きく変化しなかった.この点は,次に述べる高度重圧帯でも同じであった.

興味深いことに,図−4のように横軸に時間の対数をとると,直線かあるいはわずかに下に凸の曲線に沿って主歪は増加していく.しかしながら,主歪の増加速度は急速に低減していくので,坑道は安定期に入りつつあると解釈してよい.

図−5には,鋼アーチ支保区間における内空変位と岩盤内変位からもとめた主歪を比較して示す.なお,内空変位は縮み(圧縮)を正,岩盤内変位は伸び(引張)を正として表示した.正負のとり方は以下の図も同様とした.この図からわかるように,岩盤内変位も時間の経過にともなって徐々に増加していく.大きさをみると,最大主歪は内空変位よりもとめた最大主歪より小さい.他方,最小主歪は内空変位よりもとめた最小主歪より大きいので,最大と最小主歪の平均値は,岩盤内変位からもとめた場合と内空変位からもとめた場合とでほぼ一致する.