トンネル変形の巨視的指標の提案
4.高度重圧帯での整理結果

同和鉱業(株)花岡鉱業所松峰鉱山は前章の深沢鉱山からわずかの距離にあるが,鉱床および周辺岩盤は熱水変成作用を受けて粘土化しており,より変形の大きいことが知られている.この松峰鉱山の試験坑道(地表下約300m)で測定をおこなった結果を整理して紹介する.支保は鉱山用I型鋼SMI-115の2部材からなる鋼アーチ支保であり,枠間は0.6mであった.計測断面は図−6に示すようで,深沢の場合と同様に3点の計測点を設けて内空変位を測定した.また,全長6mの6点式岩盤内変位計を打設した.内空変位計測断面と岩盤内変位計測断面との距離は3mであった6)7).

図−7に内空変位から計算した最大主歪を示すが,これからわかるように10日後には4%に達する.また,この場合にも横軸に時間の対数をとって整理したところ,最大主歪は,直線かわずかに下に凸の曲線に沿って増加することがわかる.

同図には,岩盤内変位から計算した最大主歪についても示す.岩盤内変位は,坑道壁面と深さ0.5m,1m,2m,3m,4mおよび6mの固定点との間の変位を測定した.図−7には各深さごとに整理した結果を示すが,これからわかるように坑道壁面に近いところほど,最大主歪が大きいことがわかる.また,増加傾向は内空変位と同様といえる.内空変位からもとめた最大主歪は,深さ1mでの結果よりは小さく,深さ2mでの結果とほぼ同じとなった.これが意味するところや一般的に言えることかどうかは,現在のところ不明であり,今後も計測データを積み上げて検討する必要がある.

図−8には内空変位と岩盤内変位から計算した最小主歪を合わせて示す.最小主歪も時間の経過にともなって徐々に増加していくことがわかる.ここで注目すべきは,深さ0.5mでの岩盤内変位から計算した値だけが符号を異にしている(縮んでいる)ことである.これは,深さ0.5mまでの領域は圧縮破壊をしており,圧縮応力が最大の方向に縮んでいる可能性を示している.

図−9には,最大主歪とx軸(水平)とのなす角度を示したが,これからわかるように計測期間中の変化は比較的少なかった.現場での観測結果では,図−10に示す様に左側が比較的軟弱で,右側が強固であった.その結果,左側壁は下部から斜め上向きに押し出してくる傾向がみられたので,内空変位から計算した最大主歪の方向は,水平から30〜40°となった.また,左肩部分は軟弱で緩み領域が奥まで広がり岩盤内変位がおおきくなったので,岩盤内変位から計算した最大主歪は左肩から斜め下に向かう方向になったと推定する.

ここで述べたように,内空変位からもとめた結果と岩盤内変位からもとめた値とは,増加傾向が似ているのみならず,値においても相関のあることがわかり,両者を合わせみれば信頼性に優る情報が得られると考える.