トンネル変形の巨視的指標の提案
5.おわりに

式(4)の右辺と左辺にH=(AA)-1をかけると次式となる.

x = (AA)-1y    (5)

これからxは計算できるが,Hの性質がよくないと誤差を生じ易いのでHを誤差行列と呼ぶことがある.Hの対角要素が大きく,また対角要素間の比の小さいことが性質のよさにつながる.もっとも性質のよいH(理想のH)はI(単位行列)ということになる.この誤差行列Hはαのみに依存し計測結果には依存しないので,計測の計画段階で試算できる.よって,Hの試算結果を参考にしながら,内空変位の測点や岩盤内変位計の設置位置を決めることができる.

最小二乗解は全体をみて辻褄を合わせたものであり,式(5)から得られるxにAを掛けて得られる計算値は,測定値と比較して次の残差を持つ.

(I−(AA)-1)y

この残差は各地点での測定値が,平均とどのくらい乖離しているかを表しており,この残差をモニターするのも一案であろう.

これまで述べてきた方法は3次元に拡張できる.(x,y,z)座標を考えたとき,方向余弦(l,m,n)であらわされる方向の歪は次式となる.

 (6)

よって,式(3)に対応する方程式は次式となる.

Ax = y    (7)

xの転置=(εx εy εz γxy γyz,γzx)

yの転置=(ε(l1,m1,n1) ε(l2,m2,n2) ε(l3,m3,n3) ・・・)

歪xをもとめる計算手順は2次元と同じである.

大断面のトンネルだけでなく,地下発電所,岩盤内燃料タンクなど,大規模な地下空間の設計施工では,2次元解析だけでなく3次元解析が要求されることが増えてくると思われる.また,それに伴って今後光学式など非接触式3次元計測が多用されると予測するが,2次元より格段に表示方法に工夫を要する3次元でも,固体力学や材料力学をはじめとする他分野と共通性の高い指標で,トンネルの変形を表示できることは有意義と考える.