岩石の強度とクリープ寿命の分布特性に関する一考察
1.はじめに

強度や寿命のばらつきは重要で,古くから多くの研究がなされてきた.例えば,平田・寺尾1)は主としてガラスを対象とした先駆的な研究をおこない,脆性材料を対象とした後進の研究に大きな影響を与えた.横堀2)は,主として金属材料を対象として,広範な実験的,理論的な研究をおこなった.特に確率過程論にもとづいた強度や寿命の研究は著名であり,鋼の疲労試験における寿命(繰り返し数)などを確率過程論で説明できるとした3).西松は岩石の強度や寿命のばらつきについて,極値統計学4)と確率過程論5)の両面から,長年にわたって研究をおこない,岩石を対象としたこの方面の研究の基礎を築いた.その後の研究も合わせて考えると,岩石の一軸圧縮応力下での強度のばらつきについてはある程度の知見が蓄積されたといえるが,強度とクリープ寿命のばらつきの関係,気乾状態と湿潤状態でのばらつきの関係,さらには一軸圧縮応力下と三軸圧縮応力下でのばらつきの関係については不明な点が多く残されている.

本論文では,まず,これまでにおこなった実験結果を再整理して,一軸圧縮応力下における強度とクリープ寿命のばらつきについて検討する.ついで気乾状態と湿潤状態での強度のばらつきについて調べる.さらにこれまでの知見が少ない,三軸圧縮強度のばらつきについては新たに実験をおこない,重点をおいて検討する.

よく知られているように,強度や寿命のばらつきの扱いには,確定論4)と確率過程論3)によるものがある.確定論でばらつきを論ずる際の基礎データを得るには,多数の試験片が必要であり,今後も大幅に軽減される可能性は小さい.ただし,自動車の部品のように,十分な量のデータが無理なく得られる分野においては,確定論(統計的な処理)が向いているかもしれない.一方,確率過程論で必要なのは遷移確率だけであり,これによって強度の載荷速度依存性,クリープ寿命の応力依存性,強度と寿命のばらつき,さらには寸法効果を論ずることができる3)5).この定数をもとめるには精密な実験が必要であるが,今後の実験技術と装置の進歩により,少数の試験片を用いて自動化できる可能性がある.このように考えると,確率過程論が今後より多用される可能性がある.

本論文では,確定論と確率過程論の両者を念頭において議論する.実験結果の整理と理論的な検討結果を総合して,岩石のばらつきの概要をあきらかにするとともに,実用上重要な,ばらつきを考慮した構成方程式中の定数の設定についても一定の方針を示すことを目的とする.