岩石の強度とクリープ寿命の分布特性に関する一考察
3.一軸圧縮,一軸引張および圧裂引張試験結果

3.1 強度とクリープ寿命

強度のばらつきとクリープ寿命のばらつきについては,個々にはかなり研究されてきたが,強度と寿命の関連についての研究は少ない.西松・山口5)は一軸引張強度試験と一軸引張クリープ試験とで,破壊の確率過程に差異がないと仮定して,クリープ寿命のばらつきから一軸引張強度の変動係数を推定して,推定値と実験結果とはほぼ一致するとした.大久保・秋7)は,一軸圧縮強度とクリープ寿命のばらつきの間に,比較的簡単な関係のあることを確定論と実験にもとづいて指摘した.

Table 3に,山口8)と秋9-11)がおこなった一軸圧縮強度試験とクリープ試験を再整理した結果をまとめて示す.試料岩石と試験方法については,参考文献8)〜11)を参照されたいが,試験片はすべて直径25mmで高さ50mmの円柱形である.bは,ワイブル分布を仮定した時の強度に関する形状母数である.クリープ試験の場合には,クリープ寿命の形状母数b'=b/(n+1)をもとめ,これに(n+1)を掛けてbを計算した.なお,形状母数のもとめ方には,ワイブル確率線図を描いてその傾きからもとめる方法と,変動係数から計算する方法とがある.前者は,実験をおこなった当事者が,データの取捨選択をおこないながら整理を進める場合には適当と考えられる.本論文では,多くのデータを整理する必要があったので,客観性が高い後者を採用した.また,データ整理にあたっては,データの選別は一切おこなわず,すべてのデータを用いて計算した.

Table 3に示した一軸圧縮強度試験とクリープ試験からもとめた形状母数を,Fig.1にそれぞれ横軸と縦軸にとって比較したが,多少のばらつきはあるものの大差はないといえる.この結論は,西松・山口5)や大久保・秋7)の主張を再確認したものといえる.

Fig.2に形状母数bとnを比較して示す.2状態1段ポアソン過程では,Table 1からわかるようにb=n+1となるはずであるが,図では実線b=n+1を上限としてこれより下部にほとんどの点が存在する.すなわち,2状態1段ポアソン過程で予測されるよりばらつきがおおきい場合がほとんどである.この図を見る限りでは,2状態1段ポアソン過程で予測されるばらつきは,実際のばらつきの下限を与えるといえよう.

3.2 気乾と湿潤状態での強度

Table 4に,秋9)と金12)が行った気乾状態と湿潤状態における引張試験結果を再整理して示す.なお,秋が使用した圧裂引張試験片は,すべて直径25mmで高さ13mmの円柱形である.金はA,B,Cと3つの岩石ブロックから切り出した試験片を使用して圧裂引張試験をおこなったが,岩石ブロックAとBから切り出した圧裂引張試験片は,秋と同寸法である.金C(Table 4のJin C)の圧裂引張試験片のみ直径50mmで高さ25mmである.また,金の一軸引張試験片は直径25mmで高さ50mmである.

Fig.3に,Table 3に示した一軸圧縮強度試験と,Table 4に示した引張試験からもとめた形状母数を示すが,これからわかるように,圧縮試験結果については,気乾状態と湿潤状態の形状母数はかなりよく一致する.引張試験結果についても,両者の形状母数はある程度一致しているといえよう.この結果は,従来の指摘7),13)を再確認したものといえる.

Fig.4に気乾状態と湿潤状態の一軸圧縮強度試験(Table 3)と引張試験(Table 4)からもとめた形状母数とnを示す.これからわかるように,湿潤状態の一軸圧縮強度試験からもとめたbは,実線b=n+1の周辺に位置する.他方,気乾状態の一軸圧縮強度試験からもとめたbは,実線の下方に位置する.引張強度の場合も,湿潤状態の方が実線b=n+1の近くに位置する.

確定論の立場にたった説明の一例は次のようになる.気乾状態でも湿潤状態でも強度のばらつきを決める主因は構成方程式中のαの分布である.この分布は気乾状態でも湿潤状態でも同じと仮定すると,湿潤状態の場合にはnが小さくなるのでFig.4のように,気乾状態が右側に,湿潤状態が左側に分布する結果となる.他方,確率過程論の立場にたてば,湿潤状態の試験においては,試験室の温度変化や湿度変化の影響を受け難いので実験誤差が小さくなる.湿潤状態での結果は,実験誤差の減少分だけ,2状態1段ポアソン過程から予測される直線b=n+1に近付くことになる,と説明できる.