岩石の強度とクリープ寿命の分布特性に関する一考察
6.まとめ

確定論の立場からは,主として下に再掲する構成方程式の定数の設定について検討した.

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構成方程式には,m,n,αの3つの定数が含まれるし,他に試験条件の応力速度Cも変動する可能性があるが,§2.1で見積もりをした結果ではm,n,Cが変動しても強度は高々0.2%程度しか変動しないことがわかった.そこで,1/αが,形状母数b/(n+1)のワイブル分布に従ってばらつくとした.今回の検討対象とした岩石では,Table 7に示すように,気乾状態と湿潤状態とで形状母数bはほとんど変わらないといってよかろう.また,強度とクリープに関しても形状母数はだいたい同じ値をとるといえよう.気乾状態の三軸圧縮強度については,岩種によって周圧に対する傾向が異なる結果となり,今後の検討が是非とも必要である.湿潤状態の三軸圧縮強度は排水条件により傾向が左右される可能性があるので慎重な実験が必要であるが,今後の検討課題としたい.さらには,寸法効果についても検討する必要がある.§5.2で指摘したように,要素の大きさによりαを変えた試算などが候補としてあげられる.

確率過程論の立場からの検討もおこなった.クリープ試験結果を整理したP−t曲線は下に凸となることが多いが,2状態1段のポアソン過程ではP−t曲線は直線となり,多段ポアソン過程では上に凸となる.西松・山口5)は,破壊に関する本質的なばらつきと他の要因によるばらつきで説明可能としている.すなわち,実際のばらつきは本質的なばらつきと他の要因によるばらつきとの加算値であり,2状態1段ポアソン過程は,ばらつきの下限を与えると解釈すれば,今回の検討対象とした実験結果と矛盾しない.

確率過程論の欠点は,その理論を直接に証明する手段が今のところ見つかっていないことである.例えば,実験データのばらつきのうち,どのくらいが本質的なばらつきであるかをもとめることは極めて難しい.しかしながら,既に述べたように,載荷速度依存性,強度のばらつき,寸法効果などを遷移確率から導くことができるし,本論文で検討したところでは,確率過程論による推定値は実際の実験結果と桁が違うようなことはないので粗い見積もりには使用できる.この点は重要であり,今後のさらなる検討が必要と考える.