インデント型鋼繊維の引抜抵抗に関する研究
1.はじめに

鋼繊維補強モルタルは,モルタルに鋼繊維を混入して,延性やひび割れに対する抵抗性を増したものであり,その利点を活かしてトンネル覆工,道路舗装や斜面への吹き付けなどに用いられてきた1).最近では,トンネル覆工や高架橋からの破片落下を一つの契機として,延性が高く直ちに落下や破壊しない鋼繊維補強モルタルが,以前にも増して注目されている.

鋼繊維補強モルタルの力学特性は,これまでにも多くの研究者によって研究されてきたが,本研究のテーマである鋼繊維の引抜特性と密接な関係のある一軸引張応力下での研究は比較的少ない.福井ら2)は鋼繊維補強モルタルの一軸引張試験を行い,ピーク強度後に残留強度が認められること,またその大きさは鋼繊維混入率にほぼ比例するとした.大久保ら3,4)は,曲げ試験に関する検討を行い,一軸引張試験における残留応力と曲げ強度との間に密接な関係があることを示した.

鋼繊維補強モルタルに限らず繊維で補強した複合材料において重要なのは繊維の補強効果である.鋼繊維補強モルタルにおける鋼繊維の補強効果は,主として鋼繊維の引抜抵抗(荷重)に起因すると考えられ,これまでにもかなりの研究がなされてきた.槇谷ら5)は鋼繊維の引抜試験を行い,引抜強度は細骨材によりかなり左右されることを示した.趙ら6)は,5種類の鋼繊維の引抜試験を行い,引抜試験結果と曲げ試験結果との関係を検討した.Sumitroら7)は,32本の鋼繊維を同時に引抜く試験を行い,その結果を基礎とした力学模型を提案した.

このように,かなりの数の研究発表があるにもかかわらず,鋼繊維の引抜試験法は確立されているとはいえず,引抜抵抗について不明な点が多く残されている.特に,鋼繊維補強モルタルの延性と関連が深いと考えられる最大引抜抵抗を越えた後の引抜抵抗については不明な点が多い.また,引抜抵抗と鋼繊維補強モルタルの力学特性との関係も十分に解明されていない.例えば,引抜抵抗と一軸引張試験における残留強度,引抜抵抗と曲げ強度との関係は十分にわかっていない.

本研究では,まず,最大引抜抵抗を越えた後の領域(一種のpost-failure region)にも適用できることを主たる目的として開発した,鋼繊維の引抜試験法について述べる.試験機としては,載荷条件を管理するのに便利なサーボ試験機を用いることにした.開発した引抜試験法を用いて,最大引抜抵抗を越えた後の領域での引抜特性と,モルタル中に埋め込まれた鋼繊維の長さと引抜特性との関係を中心に検討した.さらに,本研究で得られた引抜特性と,福井ら2)が行った鋼繊維補強モルタルの一軸引張試験結果との比較・検討をした.