インデント型鋼繊維の引抜抵抗に関する研究
2.試験片と試験方法

2.1 試験片

Fig. 1(a)に,鋼繊維引抜試験用の試験片の外観(写真)を示す.Fig. 1(b)に示した断面図からわかるように,塩化ビニル製管キャップを型枠としてモルタルを打設した.モルタルとしては,これまでに使用経験8) があって特性がわかっているケー・エフ・シー叶サSNドライモルタルを採用した.このドライモルタルの重量配合比はセメント:細骨材(細砂)=1:1である.よく知られているように,モルタル打設時の流動性や,固まった時の強度は加える水の量により左右されるが,試行錯誤の後,打設がし易く,かつ適当な強度を発現する水セメント比W/C=0.5とした.

あらかじめ管キャップ上部に直径8mmの孔をあけておき,モルタルを打設直後に,この孔に鋼繊維を差し込んだ.使用した鋼繊維の諸元をTable 1に示す.この鋼繊維はインデント型の神鋼建材工業叶サシンコーファイバーで,Fig. 2からわかるように約8mm間隔でインデントが施されている.なお,この鋼繊維を混入した鋼繊維補強モルタルの一軸引張特性2),一軸圧縮特性9),曲げ特性3)はすでに公表されており,今回実施する引抜試験結果とこれらとを比較・検討できると考えてこの鋼繊維を選定した.

鋼繊維引抜試験用の試験片は,急激な水分の蒸発によるひび割れを避けるためにプラスティックシートで軽く覆い,試験に供するまで温度23±3℃,湿度70±15%の試験室で養生・保管した.

モルタルの強度などの特性を把握するため,鋼繊維引抜試験用試験片と同一ロットのモルタルに対して,一軸圧縮試験と圧裂引張試験を行った.一軸圧縮試験片は直径50mm,高さ100mmとした.圧裂引張試験片は直径18mm,高さ26mmで,鋼繊維引抜試験用試験片と同じ管キャップにモルタルを打設して作製した.養生と保管は,鋼繊維引抜試験用試験片と同様である.

2.2 試験方法

鋼繊維引抜試験は,Table 2に示すような条件で3回にわたって行った.第1回の試験は,鋼繊維のモルタル中への埋込深さを10mmとし,モルタルを打設した時から7,14,21,28,29,30,69,70日目に試験を実施した.第2回の試験も鋼繊維のモルタル中への埋込深さは10mmとしたが,28日目以降の変化は少ないとみて,試験実施時期は7,14,21,28,29,30,31,32日目とした.29日目以降の試験は,28日目の試験結果の再現性を見る目的で行った.第3回の試験は鋼繊維のモルタルへの埋込深さを6,8,14mmと3段階に変えて試験を実施した.この場合には試験数が多かったので,試験の実施時期は21日目を除いた7,14,28,29,30,31,32日目とした.

鋼繊維引抜試験には容量10kNのサーボ試験機を使用した.Fig. 3(a)は試験装置で,上部プラテンには鋼繊維を把持するためのドリルチャックが取り付けられている.下部プラテンにはロードセルが,またロードセルの上には鋼製円板Aがねじ止めされている.

Fig. 3(b)は鋼繊維を把持して試験を実施中の写真であり,試験は次の手順で行った.
@ 試験片下端に鋼製円板Bを,エポキシ樹脂で接着する.
A 鋼繊維をドリルチャックで軽く把持した後,鋼製円板AとBが接触するまで,上部プラテンを降下させる.
B 鋼製円板AとBを左右の手万力で挟んで両者を密着させた後,ドリルチャックを締めこむ.
C 上部プラテンを定変位速度0.1mm/sで上昇させて,鋼繊維をモルタルから引抜く.

Table 2にはモルタルの力学試験を実施した材齢(打設日からの日数)も示した.一軸圧縮試験には容量1500kNのMTS社製サーボ試験機を用い,定歪速度10−4/sで試験を行った.測定項目はロードセルより求めた荷重と,差動変圧器より求めた変位である.材齢28日目の試験に関しては歪ゲージにより縦歪と横歪を測定した.圧裂引張試験には容量10kNの万能試験機を用い,定変位速度約0.02mm/sで試験を行った.