インデント型鋼繊維の引抜抵抗に関する研究
5.まとめ

鋼繊維補強モルタルは将来性のある複合材料であり,その力学的特性の基本となるのは鋼繊維の引抜特性であると考えられる.本研究ではモルタル中に埋込んだ鋼繊維の引抜試験をさまざまな埋込深さで3回にわたって行い,引抜抵抗曲線を実験的に求めた.その結果,最大引抜抵抗を示した後における引抜抵抗の減少の仕方は複雑で一様ではないことがわかった.この点に注目してすべての試験を4つの様式に分類したところ,最大引抜抵抗後の領域で引抜抵抗が徐々に低下していく様式1が多数を占めることがわかった.

試験で求めた鋼繊維引抜抵抗曲線に基づいて,最大引抜抵抗と引抜エネルギーに関する実験式を求めた.前者は埋め込み深さの0.8乗に,後者は1.7乗に比例することがわかった.さらに,鋼繊維補強モルタルの一軸引張試験における残留強度を計算してみた.残留強度を大きめに見積もった計算値#1と小さめに見積もった#2を求めたが,例外的な場合を除いて,試験結果は計算値#1と#2の間に挟まれることがわかった.

鋼繊維の形状寸法や材質にはいろいろなものがある.例えば鋼繊維の形状には,今回使用したインデント型以外にもフック型,ドッグボーン型などがあり,その引抜特性が異なるということも考えられる.今後さまざまな鋼繊維の引抜試験を行うことで,鋼繊維の補強効果をよりよく引き出すための鋼繊維の形状寸法,材質,モルタルの強度などについて検討する予定である.

今後より詳細に鋼繊維の引抜特性を明らかにし,力学特性をモデル化できれば,鋼繊維補強モルタルの力学的特性の再現が可能となると考える.さらに実構造物にまで数値計算を応用できれば,鋼繊維補強モルタルのより幅広い用途にも繋がると思われる.