長尺さく孔におけるさく孔深さの影響
1.はじめに

さく孔特性と岩盤特性との関係は古くから調べられている1−4).例えば,U. S. Bureau of Mines1)は,衝撃落錘試験での岩石の破砕性から求まる強度係数(coefficient of rock strength)とさく孔速度の相関性がよいことを報告した.プロトジャコノフはいくつかの岩石強度の尺度を提案し,一定深さまでさく孔する時間と岩石の一軸圧縮強度との関係式を提案した2).Schunnesson5,6)や石丸ら7)はさく孔速度,スラスト,回転トルクなどから岩盤特性を類推し,その可視化に関する研究を行った.これまでの知見によれば,さく孔深さが比較的浅ければ,さく孔速度と岩盤特性との相関は良好といえる.

最近になってトンネル掘削を安全に施工するため,長尺さく孔(さく孔深さ20 〜 50 m)を行い,得られたさく孔速度や掘削体積比エネルギーから岩盤特性を把握する研究が行われている.例えば,橋詰ら8)は20 cmごとのさく孔データを用いて支保パターンの選定を検討し,木村ら9)は軟弱地山におけるさく孔データと岩盤特性の関係を調べた.山本ら10)はTBMの掘削データとさく孔データを組み合わせて,切羽の岩盤特性の把握を行った.

長尺さく孔では,ロッド連結部での弾性波の反射・減衰や,ロッドと孔壁との摩擦などの理由から,さく孔深さの増加によりさく孔速度は減少することが報告されている.例えば,Lundberg11)はロッド連結部でのインピーダンスの変化を考慮した数値計算によりさく孔深さによるエネルギー効率の変化について報告した.また,三上12)はロッド連結部でのエネルギー損失と発熱を,長年の計測結果に基づいて定量的に検討した.

さく岩機によるさく孔速度とさく孔深さの関係は,発破孔のさく孔計画の策定にあたって重要であるのみならず,切羽前方の岩盤特性を把握しようとするときには是非とも必要な情報といえる.そのために古くから検討がおこなわれてきたが,さく孔深さが深くなったときの扱いには定説がない.これまでの長尺さく孔に関する研究の多くはデータ数が少なくまた散発的であった.そのためさく孔深さによりさく孔速度が変化したとしても,その原因が岩盤特性にあるのか,さく孔深さの増大によるものかの判別が困難であったといえよう.

本研究では,道路トンネル建設現場において,場所を変えて68回のさく孔をおこなった.各さく孔深さにおけるさく孔速度の平均値を求めて,さく孔深さとさく孔速度の関係を調べた.こうすることにより,あるさく孔深さにおける岩盤特性の影響をほぼ取り除けると考えたからである.岩盤特性の影響を取り除いたさく孔速度とさく孔深さの関係を求めることが本研究の最大の目的である.また,従来の文献では,さく岩機とさく孔条件に関する情報が不足している場合が多かったので,本研究ではこの点にも可能な限り留意して現場実験をおこない,打撃圧,回転圧,ダンピング圧とさく孔深さの関係についても報告する.なお,今回対象としたトンネルは,主に花崗岩と堆積軟岩層の2種類の岩盤から構成されていたため,岩種の影響に関しても検討した.