長尺さく孔におけるさく孔深さの影響
2.さく岩機の特性とトンネルの概要

2.1 さく岩機の特性

本研究で使用したさく岩機は,前後室交互加圧方式のアトラスコプコ製COP1440であり,表1に諸元を示す.さく孔径は64 mmで,ロッドの直径は32 mm,長さは3.05 mである.ロッドは一端におねじ,もう一端にねめじが切ってあるタイプであり,このおねじとめねじによりロッドが直接連結されるので,スリーブ型継ぎ手を使用した場合より,エネルギー損失が少ないと考えられている.なお,孔曲がりを防ぐために,最も先頭のロッドのみ,直径を45 mmと大きくした.

ロッドを伝播した弾性波はビット先端に到達し岩盤を破砕するが,一部反射波として戻ってくる.本研究で使用したさく岩機には,反射波を受け止め減衰させるために,図1に示すように,ダンピングシリンダとピストンよりなるダンパーが付加されている.このダンピングシリンダ内の圧力(ダンピング圧)の観察結果から反射波を推定し,間接的に岩盤特性を把握することが可能であるとされている9).

今回は検層を目的としたため,さく孔中なるべく下記の1)〜4)を満たすように,油圧や油量を調整した.なお,油圧源の電動モータは1台で,@打撃,スラスト用,Aロッド回転用,Bダンピングシリンダ用の3台の油圧ポンプを駆動する形式であった.
1) スラストは,油圧シリンダからワイヤを介してさく岩機に加えられる.ワイヤ部分における摩擦力は数%程度とみて,摩擦力は無視し,スラストが10kNとなるように,油圧シリンダの油圧を調整した.
2) 打撃用シリンダへの油量は,ロッドが1本しか連結されていないさく孔開始時に,打撃圧(時間平均値)が17.5 MPaとなるように流量調整弁を調整した.ロッド本数が多くなっても流量調整弁の開口は変えなかった.
3) ロッドは油圧モータにより回転する.油圧モータへ送られる油量を調整して毎分180回転となるようにした.
4) ダンピングシリンダへの油量は毎分0.001m3とした.ダンピングシリンダには小さなドレイン孔があり,さく孔していない時のダンピング圧は3MPaであった.

2.2 トンネルの概要

本研究で対象としたのは,第二名神高速道路鈴鹿トンネル上り線工事である.鈴鹿トンネルは鈴鹿山脈の南端部を東西に貫く延長約3.9 kmのトンネルで,三重県の東側坑口付近に設けられた作業横坑から,2 %の上り勾配で滋賀県の西側坑口に向けて掘削された.

図2に示すように,トンネルの地質は中生代白亜紀の花崗岩(鈴鹿花崗岩)および第三紀中新世の砂岩,泥岩,礫岩で構成された堆積軟岩層(鮎川層群)で成り立つ.鈴鹿花崗岩は三重県側に,鮎川層群は滋賀県側に分布し,両者の間に黒滝断層が存在する.また,黒滝断層付近の花崗岩部には,中生代ジュラ紀のホルンフェルス(田村川層)が部分的に分布する.比較的健全な試験片の一軸圧縮強度は,鈴鹿花崗岩で100 MPa程度,鮎川層群で40 〜 70 MPaであった.

直径5 mのTBMによる導坑先進工法の切羽前方探査として,全線にわたって1回あたり約50 mのさく孔深さで,さく孔検層を行った.さく孔は図3に示すように切羽後方約5 mのルーフサポート後端の天端部から5°〜 10°上向きに,前回の探査区間と距離程で約5 m重なるように実施した.図2に示すように本研究ではこのうち,鈴鹿花崗岩で42回(距離程0 〜 1,787 mの区間),鮎川層群で26回(距離程3,120m 〜 3,336 mを除いた距離程2,286 m 〜 3,624 mの区間)実施したさく孔データを用いることにした.なお,距離程とは東側坑口から測った距離を表す.

さく孔中,打撃圧,回転圧,スラスト圧,ダンピング圧,さく孔速度の5項目を測定した.圧力はさく岩機から油圧ホース長で1 m程度離れた位置でひずみゲージ式圧力計によって測定し,1 Hzのサンプリング周波数で記録した.さく孔速度はスラスト用シリンダの吐出油量より算出した.さく孔速度は3 cm/s程度であるので,さく孔深さ1 mでは約30データが得られる.データ整理にあたっては,各さく孔におけるさく孔深さ1mごとの平均値をまず計算した.