可視化ベッセルによる田下凝灰岩の三軸圧縮クリープの観察
1.はじめに

岩石の時間依存性挙動を調べるために,クリープに関する研究が数多くおこなわれてきた.しかし,そのほとんどが一軸圧縮応力下でおこなわれたものであり,三軸圧縮応力下でのクリープに関する知見はいまだに少ない.地下の岩盤は三軸圧縮応力状態であり,地下空洞の長期安定性を評価するためには,三軸圧縮応力下でのクリープ試験結果の蓄積が今後ますます重要になると考えられる.

従来の研究で得られている岩石の三軸クリープに関する知見として,Kranz1)は,周圧の増加とともに3次クリープ開始点での非弾性体積歪が増加するが,クリープ応力の増加とともにクリープ寿命が減少することは周圧によらないとしている.また,趙ら2)は,最小クリープ歪速度が寿命に反比例し,3次クリープではクリープ歪速度が残存寿命に反比例するとしている.しかし,これらの試験結果は,クリープ寿命や載荷軸方向の変形特性に関するものがほとんどであり,載荷軸と垂直な方向への変形特性に関しては,ごく少数の定性的な知見しか得られていない3).

三軸圧縮応力下における破壊過程の解明も十分に進んでいるとは言い難い.例えば,構成方程式の構築にも必要と考えられる,クリープ破壊直前の変形特性の把握や,クリープ破壊過程と他の載荷条件下での破壊過程との比較などについても過去の研究は少ない4).

一軸応力下と比較して,周圧下でのクリープに関する研究が少ない原因としては,周圧の制御の困難さや,金属製ベッセル内で試験をおこなうことに起因する変位計測の難しさなどがあげられる.周圧の制御については,Breadthauer型の周圧ベッセル5)やサーボ制御式の周圧維持装置の使用,もしくはアキュムレータを周圧ベッセルと圧力源との間に入れることが試みられてきた.一方,変位計測,特に横変位の測定にはいまだ困難がつきまとう.エンドピースに設置した多数の片持梁式変位計による試験片中央断面の横変位の測定6)や,デュアル平均値伸び計(軸方向)とローラーチェーン型伸び計(周方向)の組み合わせ7)などが試みられてきた.最近になって,大久保ら8)は透明なアクリル樹脂製の可視化ベッセルを開発し,三軸圧縮強度試験中の試験片の破壊過程を観察することに成功した.また,撮影した写真に画像処理を施すことで試験片の横変位の測定に成功した.

本稿では,可視化ベッセルを用いて三軸圧縮クリープ試験をおこなった結果を報告する.三軸圧縮強度試験では,一定の時間間隔で写真撮影をおこなえばよいが,クリープ試験の場合には,変形の大きい3次クリープでは短い間隔で写真撮影をおこなう必要がある.そこで本研究では,可視化ベッセルを用いた三軸圧縮クリープ試験をおこなうにあたり,試験片の変形と連動する写真撮影システムを構築した.また,変位の測定精度の向上および効率化のため,写真による横変位測定をコンピュータプログラムにより自動化した.得られたクリープ試験結果については,特に破壊直前の挙動について重点的に検討をおこなうとともに,三軸圧縮強度試験での挙動との比較もおこなった.