可視化ベッセルによる田下凝灰岩の三軸圧縮クリープの観察
2.試験方法

2.1 試料岩石と試験装置

試料岩石として田下凝灰岩を用いた.試験片は直径25mm,高さ50mmの円柱形とし,整形後,温度・湿度が管理された試験室内に2週間以上放置し自然乾燥させた後,試験に供した.載荷装置として容量500kNのサーボ試験機を用い,周圧は最大圧力35MPaのサーボ式周圧発生装置で加えた.荷重は容量200kNの歪ゲージ式ロードセルで,軸方向の変位はサーボ試験機に組み込まれている差動変圧器で測定した.三軸ベッセルとして透明なアクリル樹脂製の可視化ベッセルを用いた8).このベッセルの許容最大圧力は約55MPaであるが,安全率を5として,今回の試験では周圧を10MPa以下に設定した.試験片の撮影には,有効画素数266万のディジタルカメラ(Nikon-D1)と望遠系単焦点レンズ(105mm F2.8D)を用いた.画像の歪曲は画像中央部と端部で最大でも±0.1%程度であり,変位の計測にはほとんど影響を与えないことがわかっている.また,ベッセル内の試験片を撮影した場合でも,アクリル製円筒によるゆがみは生じないということもわかっている8).

試験では,まず,試験片の上下に同径の鋼製円柱を密着させた後に,全体を熱収縮性チューブで覆った.その後,鋼製円柱とチューブとの隙間に瞬間接着剤を流し込み,硬化を待った.組み立てたベッセルを試験機上に置き,空気抜きをおこなった後,変位の零点の調整をおこなった.周圧を設定値まで増加させ安定した後,載荷を開始した.圧縮強度試験は定歪速度10×10−6/sでおこない,クリープ試験では応力速度1MPa/sで予め定めたクリープ応力まで応力を増加させた.なお,クリープ試験で破壊が起こらない場合は約1日で試験を打ち切った.周圧は2.0,3.9,5.9,7.8,9.8MPaの5通りとした.Table1には,クリープ応力レベルを決める際の基準となる,10×10−6/sの定歪速度試験で得られた各周圧下での強度と,今回おこなったクリープ試験片の本数を示す.

2.2 写真撮影と横変位の測定

大久保ら8)は一定時間間隔毎に写真撮影をおこない,周圧下での圧縮破壊過程の観察に成功した.クリープ試験では1次,2次クリープでの変形は3次クリープと比べて小さい.そのため,1次,2次クリープでの写真撮影は少なくても良いが,急激な変形が起こる破壊直前の写真を数多く撮る必要がある.しかし,圧縮強度試験と比較して試験時間が長く,破壊の予測も困難であるため,手動もしくは一定時間間隔毎の写真撮影では,クリープ破壊過程の観察は難しい.そこで,軸歪が一定量増加する毎に写真撮影をおこない,破壊直前に歪が急激に増加するときには連続撮影に切り替わるようなシステムを構築し,既存のシステムに組み込んだ.

Fig.1にシステムの概略図を示すが,組み込んだ写真撮影システムでは差動変圧器の出力が増幅器で増幅され,ついで分解能16bitのA/D変換器を経て,パソコンに送られる.パソコンでは,その入力値が一定量増加する毎に写真の撮影ができるように,パソコンに組み込まれたリレー出力ボードからカメラへ出力信号が送られる.今回は,周圧2.0MPaでは軸歪が5×10−4程度,周圧9.8MPaでは軸歪が15×10−4程度増加する毎に写真撮影をおこない,その間の周圧では適宜撮影間隔を調整した.そして,破壊直前に軸歪速度が急激に増加し,周圧2.0MPaで5×10−5/s以上,周圧9.8MPaでは15×10−5/s以上になると連続撮影に切り替わるようにした.連続撮影での撮影速度はカメラのシャッター速度や絞り,記録メディアの容量により若干変化するが,今回は毎秒1枚であった.

大久保ら8)はディジタル写真から手作業で試験片の横変位を測定したが,精度の向上と効率化のため,今回は次のようなコンピュータプログラムにより試験片の直径を求めた.まず,メディアンフィルタにより画像のノイズを除去した後,横方向に関して,隣接する画素間の輝度値の差を計算した.その差の絶対値が最大となる点を試験片の端とした.つまり,横方向に関して輝度値の変化が最も激しいところを試験片の端とした.これを試験片の高さ方向に関して約900箇所でおこなった.この際,検出を容易にするためFig.2(a)のように試験片の端の部分に黒色マーカで色をつけた.初期の試験片の上下端面付近はベッセルの上下金属板に隠れて見えないため,試験片の中央約40mmの部分について横変位を求めた.なお,撮影した写真はカラーであるが,今回は簡単に測定をおこなうために白黒画像に変換をおこなった.

Fig.2(a)の試験片で測定した試験片の側面の形状をFig.2(b)に示すが,側面の凹凸が再現できている.試験片の横変位の分解能は約0.03mmであるが,上述のようにコンピュータプログラムによる処理・測定をおこなったため,測定誤差は分解能と同程度と考えられる.なお,アクリル製円筒の表面に汚れがあると誤差が大きくなるので,試験開始前に円筒の表面の汚れをきれいに拭き取っておく必要があった.