可視化ベッセルによる田下凝灰岩の三軸圧縮クリープの観察
3.三軸圧縮強度試験結果

今回おこなった試験では試験片の変形がかなり大きくなったが,応力,歪ともそれぞれ初期断面積,初期長さを基準とした微小変形の場合の式を用いた.また,本論文では原則として,軸歪は縮む方向を,横歪は伸びる方向を正としたが,Fig.3Fig.8では見やすいように横歪は縮む方向を正としてある.

各周圧で得られた応力−軸歪曲線の例をFig.3に示す.軸歪は差動変圧器より求めた値であり,応力,歪とも周圧のみを加えた時点での値を0とした差応力,差歪である.いずれの周圧下でも周圧の変動は約±0.01MPa以内であり,問題なく制御できた.なお,一軸圧縮試験はベッセルを用いずにおこなった.周圧の増加とともに,強度が増加し強度破壊点以降の応力の低下が緩やかになっている.

Fig.3で示した試験片のうち,周圧2.0,5.9,9.8MPaでの,試験片の横方向変形の経時変化をFig.4に示す.周圧が同じでも変形の様子は試験片毎に少し違うが,ここで示したのはその一例である.図では,初期の試験片の高さ方向における各地点での,直径の変化を示した.試験開始から軸歪が0.048に達するまでの変化を,軸歪が0.004増加する毎に示した.初期の試験片は直径25mmの円筒形であるが,側面の研磨をおこなっていないため,試験開始の時点で±0.1mm程度の凹凸が見られた.強度破壊点付近に相当する軸歪0.012〜0.016までは,いずれの周圧下でも試験片の上部から下部までほぼ一様に膨らんでおり,端面による拘束の影響はあまり見られなかった.その後は,試験片の中央部分の膨らみが顕著となり,周圧2.0MPaでは最大2mm程度,周圧5.9,9.8MPaでは最大1.5mm程度の直径の変化が生じた.周圧5.9,9.8MPaでは周圧2.0MPaと比べて端面の拘束の影響が大きく,上下端面から約15mm以内における直径の変化は小さかった.一方,周圧2.0MPaでは試験片上部で1mm程度の直径の変化が生じた.

Peng9)は縦横比2の試験片で一軸圧縮試験をおこない,試験片の中央3分の1の部分は端面の拘束の影響が及びにくく,横歪の分布がほぼ一様であるという結果を得た.しかし,三軸圧縮試験で端面の拘束の影響や破壊が及ぶ範囲などを調べた実験的研究はほとんどない.そこで,軸歪0.05の時点で横変位0.5mm以上の部分を膨張した部分とみなして,その部分の長さを測定した(Fig.5カット図参照).Fig.5には膨張した部分の長さと周圧との関係について示す.周圧2.0MPaでは試験片間でのばらつきが大きいが,その原因として明瞭なせん断面ができる場合が多く,写真撮影を一方向からしかおこなっていないためと考えられる.一方,周圧3.9MPa以上では膨張した部分の長さのばらつきは比較的小さかった.いずれの周圧下でも膨張した部分の長さは20〜30mm程度であり,試験片の約半分の部分が,横方向に大きく変形していることがわかる.

従来の研究では試験片中央が最も膨らむと考え,その位置での変位や歪を測定することが多かった10).しかしながら,可視化ベッセルを用いた今回の試験結果によれば,横歪が最大値をとる高さは試験片ごとにかなり異なることがわかった.例えば,Fig.4(a)では最終的には高さ20mmの位置で横歪は最大値(最大横歪)をとる.Fig.6には,周圧5.9MPaにおける試験片中央の横歪と,最大横歪の関係を示す.なお,本論文でいう最大横歪とは,ある時点において測定した横歪中の最大値であり,変形の進行とともにその位置は変化する.5例中,試験片中央の横歪と最大横歪とがほぼ一致するのは1例だけであった.周圧下で最大横歪の測定ができるのは可視化ベッセルの利点の一つであり,試験片中央の横歪よりも最大横歪の方が破壊進行の程度を示す代表値としてより適切と考えて,以下では主に最大横歪を用いて議論をおこなうことにした.なお,破壊進行の程度を示す代表値としては,試験片全体の横歪の平均値も考えられるが,今回は試験片の上下端面付近での測定ができなかったため,議論の対象とはしなかった.

Fig.3左側には同図右側に示した試験片における最大横歪の変化を示す.分解能が不足しているため,強度破壊点以前での挙動はわかりにくいが,強度破壊点以降は軸歪と同様に,周圧の増加とともに応力の低下が減少している傾向がみられた.

Fig.7には各周圧下での最大横歪と軸歪の関係を示す.図では各周圧下でおこなった5本の結果中で標準的と思われる例を示した.いずれの周圧下でも曲線は強度破壊点付近で屈曲する.この屈曲前の曲線の傾きはいずれの周圧下でも0.4前後であった.屈曲後,軸歪0.02付近までの傾きは周圧の増加により低下する傾向がみられ,周圧2.0MPaで約2.6,周圧9.8MPaでは約1.3であった.軸歪が0.02以上での周圧による傾きの変化は小さく,5本の曲線はほぼ平行となった.