可視化ベッセルによる田下凝灰岩の三軸圧縮クリープの観察
4.三軸圧縮クリープ試験結果

今回構築した写真撮影システムにより,クリープ破壊直前の連続写真撮影を試みた.Fig.8(a)には,周圧5.9MPa,応力レベル90%でおこなった試験での連続写真の一部を示す.この試験片の軸歪および最大横歪の経時変化と写真撮影をおこなった時点をFig.8(b)に,試験片の変形の経時変化をFig.8(c)に示す.1次,2次クリープ(図中@〜B)では試験片は上部から下部までほぼ一様に膨らんでいるが,変形は小さい.Cで試験片中央部分の膨らみが目立ち始め,その後,軸歪が急激に増加するに従い直径も大きくなっている.試験片の中央約20mmの部分では直径がほぼ一定であり,軸歪0.086(図中G)では2.5〜3mm程度の直径の変化が生じている.一方,上下端面から約10mmの部分の直径の増加は非常に小さく,特に下端付近は端面の拘束の影響が大きい.

Fig.5と同様に,試験片の膨張した部分の長さと周圧との関係をFig.9に示す.なお,同周圧下では応力レベルの違いによる相違が見られなかったため,図にはTable1で示したすべての試験結果を示した.ばらつきが大きいので確たることはいえないが,周圧の増加にともなって最大値は減少する傾向がみられた.これは定歪速度試験と同様に,周圧が小さいほどせん断面が顕著であり,一方向から撮影をおこなったためと考えられる.なお,各周圧での最小値は20〜25mm程度であり,少なくとも試験片全体の40〜50%以上の部分が顕著に膨張することがわかる.

Fig.10には,各周圧下での応力レベル95%でおこなった試験の内で,標準的と思われる軸歪と最大横歪の関係を示す.図ではクリープ開始からの変化を示した.周圧2.0MPaではクリープ開始から破壊までほぼ直線的であり,それ以外の周圧では軸歪0.02程度まで下に凸の曲線を描いた後,直線的に変化している.周圧3.9MPa以上では,軸歪0.02以降の傾きは周圧の増加とともに若干小さくなっており,Fig.7と似た傾向を示している.なお,応力レベルの違いによる影響はほとんど見られなかった.

Fig.11(a)には応力レベル95%でのクリープ軸歪とクリープ軸歪速度との関係を示す.縦軸は最小クリープ軸歪速度で正規化し,各周圧下での結果のうち標準的なものを示す.クリープ開始後クリープ軸歪速度は減少していき,最小値をとった後増加に転じる.クリープ軸歪速度が最小値をとるときのクリープ軸歪の値は周圧の増加とともに増加している.また,周圧9.8MPaではクリープ軸歪が0.007から0.016の間は歪速度がほぼ一定の定常クリープがみられる.軸歪速度が最小値をとった後は,グラフはほぼ直線的であり,その部分のクリープ歪εcとクリープ歪速度との関係は次式で近似できる.

log(dεc/dt)=a1・εc+b1 (1)

ただし,a1とb1は定数である.Fig.11(b)には応力レベル95%でのクリープ最大横歪(クリープ開始1s後を基準とした値)とクリープ最大横歪速度の関係を示す.縦軸はクリープ最大横歪速度の最小値で正規化し,各周圧下での結果のうち標準的なものを示す.最大横歪に関しても軸歪と同様に,歪速度は最小値をとった後ほぼ直線的に増加しており,破壊直前では(1)式での近似が可能である.

Fig.12(a)には,周圧5.9MPa,応力レベル95%での軸歪と残存寿命との関係を示す.残存寿命とは破壊までに残された時間であるが,急激な破壊が起こりにくい周圧下でのクリープ試験で破壊時刻を決めるのは難しい.また,軸歪速度が大きくなるとサーボ試験機の制御が追いつかなくなり,応力が低下する恐れがあるため,結果の整理には慎重を期す必要がある.そこで今回は,いずれの周圧下でもクリープ応力が1%低下した時点を破壊時刻とし,その5s前までの結果について整理をおこなった.Fig.12(a)より,破壊直前では軸歪と残存寿命との関係はほぼ直線的であり,近似的に次式が成り立つことがわかる.

εc=-a2・log(T)+b2 (2)

ただし,Tは残存寿命,a2,b2は定数である.Fig.12(b)には,周圧5.9MPa,応力レベル95%での最大横歪と残存寿命との関係を示す.なお,Fig.12(a)で示した試験片のうちの1本は写真撮影をおこなっていない.グラフはFig.12(a)と非常に似ており,破壊直前では近似的に(2)式が成り立つ.また,試験開始から破壊までをほぼ直線で近似できる試験片もあった.

Fig.13にはFig.12で示した試験片での,軸歪速度および最大横歪速度と残存寿命との関係を両対数グラフ上に示す.軸歪速度,最大横歪速度ともに破壊直前では,残存寿命との間に反比例の関係があり,a3を定数として,(2)式を微分した次式で近似できる.

dεc/dt=a3/T (3)

従来の研究結果では,一軸応力下では多くの岩石でクリープ軸歪,クリープ横歪とも破壊直前の挙動が(3)式で近似できることが知られている11,12).しかし,三軸クリープ試験で確認された例は少なく,横方向に関して(3)式が成り立つという点を指摘したのは本研究の成果の一つといえる.