可視化ベッセルによる田下凝灰岩の三軸圧縮クリープの観察
5.考察

5.1 3次クリープにおける軸歪と横歪

クリープ試験は強度破壊点以前の応力−軸歪曲線上より開始され,クリープ軸歪の増加とともに図上での位置は徐々に右方向へと移動していく.福井ら11)は一軸圧縮クリープでは,クリープ軸歪速度が最小になるときの応力と軸歪の位置は強度破壊点から除荷した線上(除荷曲線上)にのり,破壊1s前での位置は強度破壊点以降の応力−軸歪曲線上にくるとしている.趙ら2)は周圧下でのクリープ試験結果から,破壊10s前での応力と軸歪の位置は強度破壊点以降の応力−軸歪曲線上にのるとしているが,軸歪0.03で試験を中止しているため,破壊が延性的な場合については確認していない.また,横歪に関しては,クリープ試験結果と応力−歪曲線の関係についてほとんど議論されていない.

そこで,Fig.14では周圧5.9MPaでの5本の試験片の応力−軸歪曲線および応力−最大横歪曲線上に,クリープ歪速度が最小になるときの応力と歪の位置を黒塗り記号で,クリープ破壊5s前の位置を白抜き記号で示す.軸歪に関しては,歪速度が最小になるときの歪は強度破壊点での歪と同程度であった.また,従来の知見通りに,かなりのばらつきがあるものの,破壊5s前の位置は強度破壊点以降の応力−歪曲線近傍にきた.最大横歪に関しても,強度破壊点以前の応力−歪曲線上からクリープが開始され,▲の位置までは歪速度が減少しながらクリープ歪が増加していく.▲の位置でクリープ歪速度が最小になった後,位置はさらに左方向へ移動し,クリープ歪速度は増加していく.やがて,クリープ破壊5s前に△に達するが,その位置は強度破壊点以降の応力−歪曲線近傍にくる.

クリープ破壊直前(1〜10s前)の応力と歪の位置が,強度破壊点以降の応力−歪曲線の近傍にくるというのは,従来は比較的脆性破壊をする場合に,しかも軸歪に関してのみ確認されていたが,今回のように破壊が延性的な場合にもあてはまり,さらに,最大横歪に関してもほぼあてはまるということがわかった.ただし,軸歪,横歪ともにばらつきは大きく,破壊の何秒前の値を採用するか,どの歪速度での応力−歪曲線を採用するかについても任意性がある.この点については今後の検討課題としたい.

次に,軸歪と横歪の関係について,クリープ試験結果と圧縮強度試験結果とを比較してみる.まず,Fig.15には今回のクリープ試験結果から求めた(3)式中のパラメータa3と周圧との関係を示す.軸歪から求めたa3zおよび最大横歪から求めたa3xと周圧σpとの間には,片対数グラフ上で直線関係がみられ,それぞれ次式であらわされる図中の直線で近似できる.

log(a3z)=0.14σp-3.3 (4)

log(a3x)=0.10σp-2.8 (5)

(3),(4),(5)式より,クリープ軸歪εczと最大横歪εcxの増分に関して次式が成り立つ.

log(dεcx/dεcz)=log(a3x/a3z)=-0.04σp+0.5 (6)

 Fig.16には,横軸を周圧として,(6)式であらわされる直線を示す.また同図には,圧縮強度試験で強度破壊点を越えてから応力が強度の85%まで低下する間の dεx/dεzも示す.図より,クリープ試験結果(実線)と圧縮強度試験結果(◆)はおおむね一致しているといえる.つまり,3次クリープと圧縮強度試験の強度破壊点以降における横歪と軸歪の増分の比がほぼ等しく,両者の周圧依存性も似ているということがわかった.この結果のみから判断すれば,クリープ試験と強度試験(定歪速度試験)における破壊機構の差は,小さいといえる.

5.2 クリープ寿命の予測

3次クリープのある時点での残存寿命は,(3)式中のa3を知ることにより推定できる.なお,a3はa1,a2を用いて次式であらわされるため,a1,a2からでも推定は可能である.

a3=log(e)/a1=a2・log(e) (7)

Table1には各周圧下で求めたa3x,a3zの値を示すが,周圧9.8MPaでは破壊が緩やかであり破壊時刻の決定が困難であったため,a3は求められなかった.なお,a1,a2,a3はクリープ試験終了後はもちろん,試験中にも一軸圧縮クリープ試験の場合と同様に求めることができる13).

児玉ら12)は,登別溶結凝灰岩の一軸圧縮クリープでは横歪速度が軸歪速度の2〜4倍程度であるとしている.田下凝灰岩で,残存寿命が同じ時点での(最大横歪速度/軸歪速度)をTable1の値から求めると,周圧2.0MPaでは2.6程度,周圧7.8MPaでは1.5程度であり,児玉ら12)の結果と近い値であった.また,周圧の増加とともに(最大横歪速度/軸歪速度)が減少することもわかった.

以上のように(4),(5)式を用いることで,任意の周圧下でのa3を求めることができる.したがって,(3)式より破壊1s前,すなわち破壊直前の軸歪速度や最大横歪速度を知ることができる.例えば(4)式によると,一軸圧縮クリープでの破壊1s前の軸歪速度は約5×10−4となり,これは過去の試験結果14)と近い値である.また,周圧9.8MPaでは破壊1s前の軸歪速度は約10−2/s,破壊の10s前でも約10−3/sとサーボ試験機による制御が非常に困難であり,周圧9.8MPaでa3の値が求められなかった原因の一つであると考えられる.

クリープ軸歪に関して(3)式が成り立つことは,一軸応力下では大久保ら13)が,三軸応力下では趙ら2)が確認しており,児玉ら12)は一軸応力下ではクリープ横歪に関しても成り立つことを示した.今回,三軸応力下でクリープ横歪に関しても成り立つという点を指摘したが,これは,地震など地下深部での岩盤破壊の予知にも応用できる可能性があると考える.