TBMの掘削抵抗を利用した岩盤分類(平谷トンネル)


4.岩盤強度と岩盤特性の比較

トンネル側壁に対しシュミットハンマー打撃試験を5mごとに行った.シュミットハンマー打撃値Sから岩盤強度への換算として次の実験式を用いた(富士物産,1995).

log(Q)=0.0307S+6.393   (6)

式(6)は様々な種類の岩盤を打撃した際の平均的な関係式として提案されている(菊池ら,1982).本トンネルで式(6)をそのまま用いてもよいかどうかについては問題であるが,領家ら(1998)は花崗岩からなる高取山トンネルの岩盤強度の推定に使用しており,本研究でもそれにならうこととする.

式(6)から推定した岩盤強度と,式(3),(4)から推定した岩盤強度がなるべく一致するように式(3),(4)の定数c1,c2を求めたところ,c1=5m,c2=7m^0.5であった.

距離程2500〜2900mの区間における,式(3),(4)により,推力とトルクから求めた岩盤強度の変化を図3に示す.図には式(6)によりシュミットハンマー打撃値から求めた岩盤強度と,岩盤等級も示した.3章で述べたように室内試験と異なり,原位置での計測結果では様々な要因(測定器の一部破損や,測定環境の劣悪さなど)で実際の値を正確に測定することが難しく,間違った測定をしてしまうことが多々ある.そのため,データに関する信頼性がより要求されるが,式(3),(4)より独立に求めた岩盤強度はほぼ同じであることが図3でわかり,得られた岩盤強度の信頼性はかなり高いと考えられる.

図3で,2550〜2565mの区間の掘削抵抗から推定した岩盤強度は10〜20MPaと最も低い値となっている.この区間ではシュミットハンマーから求めた岩盤強度も約10MPaとかなり低く,岩盤等級もDであり,岩盤が最も軟弱な区間であることがわかる.2730m付近で,掘削抵抗から推定した岩盤強度は約150MPaとかなり大きい値を示した後,多少の増減はあるものの大局的には徐々に減少し,2800m付近で約20MPaにまで低下している.この区間では,ばらつきはあるもののシュミットハンマーから求めた岩盤強度も,トンネル進行に伴い減少してゆく傾向にある.また,岩盤等級も当初CHであったが,2760m付近でCMに,2780m付近でCLと等級が下がっており,岩盤が軟弱化していく傾向はすべて同じである.この区間以外でも,大局的にみれば,推定した岩盤強度の増減はシュミットハンマーから求めた岩盤強度ならびに岩盤分類と同様に変化する傾向を示しており,かなり高い相関があった.従って,掘削抵抗から推定した岩盤強度は岩盤の硬軟の変化をよく反映しているといえる.

さて,シュミットハンマー打撃試験と掘削抵抗から推定した岩盤強度との関係がほぼ同じであったことについては,既報(福井ら,1996:領家ら,1998)で述べたが,以下のように考えている.シュミットハンマー試験で現れる岩盤特性はせいぜい数cm程度の寸法の物性を代表しており,対象とする寸法からすれば室内強度試験で使用される試験片と同程度といえる.しかしながら,室内試験では割れ目のない部分を選んで試験をしがちである.他方シュミットハンマーで打撃しているのは,割れ目が存在する岩盤である.数cm程度の領域に割れ目が存在した場合には,割れ目の数・状態や風化度合いに応じて打撃値は当然低下し,これから求めた強度も低下する.よって,シュミットハンマー打撃試験では,割れ目間隔と風化度合いの影響を受ける.他方,TBMの掘削抵抗に影響を与える領域は切り込み深さの数〜10倍程度までと考えると,切り込み深さは平均で数mm程度であるので,掘削抵抗から推定した岩盤強度は切羽から数cm程度の岩盤特性によってほぼ決定されると考えられる.また,この場合も,岩石強度(コア強度)に割れ目の影響(間隔と風化度合い)が付加されたものが,岩盤を掘削する際の掘削抵抗として現れる.このように,掘削における掘削抵抗とシュミットハンマー打撃値は,同程度の領域の物性を表していると考えている.

ただし,掘削抵抗はトンネル進行方向に対しての岩盤特性であり,シュミットハンマー打撃試験はトンネル側壁で行っているため,トンネルの進行と鉛直な方向の岩盤特性である.割れ目はいくつかの卓越した方向に集中するので,岩盤強度には異方性の影響が現れることが考えられる.そのため,掘削抵抗から推定した岩盤強度と,シュミットハンマー打撃値から推定した岩盤強度に差があることは考えられるが,現段階ではその影響を見積もるまでには至っておらず,今後の課題としたい.なお,シュミットハンマー打撃試験は,試験を実施する局所的な場所による,ばらつきが大きい.そのため,数回の平均値を用いるが,それでもばらつきがどうしても現れる.他方,掘削抵抗は数十個のカッタ抵抗の積算値として現れるため,比較的ばらつきは小さく,利用しやすい特徴を有している.

次に,トンネル全体に対して,側壁の岩盤観察結果と,推力から求めた岩盤強度とを比較することとする.表4に岩盤観察結果による項目ごとの,推力から求めた岩盤強度の単純平均値を示す.まず,側壁の岩盤にわずかでも損傷(著しく風化しているか,割れ目の交差などによって,側壁がきれいな円形断面となっていない状態)が見られた箇所は全体の約14%である.表で損傷が存在した場合には,岩盤強度は約半分程度となっている.この様子を詳しく調べるために,損傷が見られた場合と見られない場合に分けた岩盤強度の累積確率分布を図4(a)に示す.図では側壁に損傷が現れた場合,岩盤強度が15MPaあたりから急増し,40MPaでは70%,60MPaでは90%に達しており,損傷がない場合に比べ,明らかに岩盤強度は小さい.岩盤強度5MPaごとの頻度分布を図4(b)に示すが,損傷が現れた場合,20MPa付近で最も頻度が大きくなっていることもわかる.著しく風化しているか,割れ目の交差などによって側壁が損傷していれば,当然その影響で岩盤強度は低下することとなり,掘削抵抗から推定した値はその様子をよく表していることがわかる.

二番目は湧水量によって区分した場合である.湧水は,岩盤強度を低下させ切羽が軟弱化するだけでなく,TBMの配線・資材の浸水や作業環境の劣悪化など様々な問題を生じさせる.平谷トンネルでは土被り25m以下となる沢の直下を通過したため,切羽から毎分4mを排水できる設備をTBM内に設置し,突発的な湧水対策を施した(近藤ら,1995).表では,湧水量が増すにつれ岩盤強度が小さくなっており,湧水が激しい箇所ほど岩盤が軟弱であることがわかる.このトンネルでは岩盤の基質部からの湧水はほとんどなく,割れ目からの湧水であるので,岩盤強度が小さくなったものと考えられる.また,普通,割れ目幅が大きいほど,湧水量の多い傾向があるため,湧水が激しい箇所ほど岩盤強度がより小さくなっているものと考えられる.さて,湧水が現れるためには,その割れ目が水みちとなっている必要がある.そのため,割れ目があったからといっても必ず湧水を伴うわけではなく,また割れ目幅が大きいといっても湧水量が多いとは限らないので,岩盤強度が小さいからといっても,湧水の有無の判断はできないことはつけ加えておく.

三番目は変成作用による影響であり,トンネルの25%が変成作用をうけている.変成作用により岩盤強度は74MPaから65MPaと,9MPa低下しているが,損傷や湧水に比べてその変化は大きくない.

このように,岩盤が損傷を受けていることや湧水が多いこと,すなわち花崗岩中に存在する割れ目と風化・軟弱化の度合いは岩盤強度に大きく影響しているのに対して,変成作用により変成岩となった場合にはさほどの変化は見られていないことが,今回の対象トンネルでは見い出された.