TBMの掘削抵抗を利用した岩盤分類(平谷トンネル)


5.岩盤強度と岩盤分類の関係

表4に示した岩盤等級は,CHの区間が約54%とトンネル全体の半分強を占め,等級が1つ下がるごとにその存在割合は半減し,Dの区間は約6%と小さくなっている.岩盤等級ごとの岩盤強度は,CHで約92MPaと最も高く,CM,CLとなるにつれて岩盤強度は減少し,岩盤が最も軟弱であるDでは約25MPaとかなり小さくなっており,岩盤等級ごとに明確な差がみられる.この関係をより詳しく見るために,岩盤等級ごとに分けた岩盤強度の累積確率分布を図4(c),岩盤強度5MPaごとの頻度分布を図4(d)に示す.Dの場合,15〜40MPaの間にほぼ集中しており,20MPa付近で最も頻度が大きくなっている.CLは20〜70MPa(最大頻度は30MPa付近),CMは25〜100MPa(最大頻度は45MPa付近),CHは30〜200MPa(最大頻度は80MPa付近)の範囲にほぼ分布しており,岩盤等級が高くなるにつれて,岩盤強度は大きくなりながら,その分布範囲が拡がる様子がわかる.また,平均値を中心軸とする対称な分布ではなく,右側の裾が広い分布となっている.以上のように,推定した岩盤強度は地質状況や岩盤分類との相関もよく,かなり信頼性の高いことがわかった.

そこで,掘削抵抗から推定した岩盤強度から岩盤分類を行うことができるかどうかを調べてみることにする.表5に示すように掘削抵抗から推定した岩盤強度の値で,D〜CHまでの4等級に区分する.ただし,表5での各等級間の閾値は,表4に示した岩盤等級ごとの平均値の中間を採用することとし,その値を丸めたものである.距離程2500〜2900mの区間において,表5により求めた岩盤等級を図5に示す.ただし,支保パターンをこまめに変更すると,施工上,段取り替えなどにむだな時間を消費してしまうため,本トンネルでは図3に示したように,岩盤分類の最小区間長は10mであった.他方,掘削抵抗から推定した岩盤強度は約1mごとのデータであるため,細かく変化してしまう.そのため,今回は,実際の岩盤等級が同じ区間で区分して,その区間での平均岩盤強度を表5に適用して岩盤分類を行った.図には比較のため,実際の岩盤等級も示した.図で2570〜2580m,2660〜2685m,2825〜2900m以外では,同じ岩盤等級が得られた.実際と異なった判断をした場合でも,等級が1つずれているだけであり,しかも閾値に近い値であった.よってこの区間では推定した岩盤強度から,ほぼ岩盤分類が可能であることがわかる.この他の区間についても調べたが,ほぼ同じような結果であった.以上より,今回のトンネルでは,表5のような区分で岩盤分類を行えば,ほぼ実際の岩盤等級に近い結果が得られることがわかった.

菊池(1990)は,提案されている20種類程度の岩盤分類に関して,分類のポイントとなる分類要素を示した.大きく分けて,岩石種類・岩石強度(コア強度),割れ目間隔・状態,ハンマー打診の3つがあげられている.本研究で対象としたトンネルは,全域にわたってほぼ花崗岩であった.花崗岩に関しては,深成岩という成因から判断して,風化が全くなければかなりの広範囲(この場合トンネル全体)で,岩石強度はさほど変わらないと考えられる.また,4章で述べたように変成作用によってもさほど岩盤強度は変化しておらず,その影響は小さいものと考えられる.このことより,本研究で対象としたトンネルでは,岩石種類と岩石強度の影響は比較的小さいと考える.なお,砂岩・泥岩のような堆積岩では同じ岩種であっても,成因上,トンネルの位置により岩石強度が大きく変化することが多いため,岩石強度が重要視されている.

花崗岩では割れ目に沿って,湧水などにより風化作用が生じることが軟弱化の主な原因の一つである.そのため,花崗岩の岩盤分類では割れ目間隔と風化度合いが重要である.ハンマー打診に関しては,岩石の硬さと割れ目間隔・風化度合いとが合わさった形で現れることとなる(日本応用地質学会出版小委員会,1992).花崗岩のトンネルという限定を入れれば,岩石強度は比較的安定しているので,ハンマー打診は結局,割れ目間隔と風化度合いを表しているものと考えることができる.

以上で述べたように,花崗岩のトンネルでの岩盤分類として,分類要素は割れ目間隔と風化度合いとが重要となる.この2点により岩盤分類を行っているものに,表6に示すようなIMS分類がある.花崗岩をTBMで掘削した際の掘削データを発表したGrandori(1995)でもIMS分類がなされており,本研究での主張と似ている.また,舞子トンネルでは一軸圧縮強度と節理状況などを検討し,表7に示すようにシュミットハンマー打撃試験結果から換算した岩盤強度を,5つの等級に分けて岩盤等級を決定している(河野ら,1994).4章で述べたように,シュミットハンマー打撃値から推定した岩盤強度と,掘削抵抗から推定した岩盤強度はよく一致するので,舞子トンネルでの岩盤分類は,本研究で提案した岩盤分類に近いことがわかる.

TBM工法以外で花崗岩に限定した岩盤分類の例としては,石油地下岩盤内貯蔵における,久慈と菊間基地での岩盤分類(日本応用地質学会出版小委員会,1992)がある.ここでは主にハンマー打診による硬さと割れ目間隔で評価している.ハンマー打撃試験は先ほど述べたように,割れ目間隔と風化度合いを表しているものと考えると,分類要素としては,割れ目間隔と風化度合いである.この他,本州四国連絡橋建設における橋梁基礎のための花崗岩の岩盤分類(日本応用地質学会出版小委員会,1992)では,ハンマー打診,風化程度,割れ目間隔で行っており,これらも同じである.以上のように,花崗岩に関する岩盤分類は,IMS分類で行っているような,割れ目間隔と風化度合いを主パラメータとして評価されており,舞子トンネルのように両者の影響の現れた,シュミットハンマー打撃試験結果を代表させることも可能であるし,本研究で提案している,掘削抵抗から推定した岩盤強度で代表させることができるものと考える.よって,花崗岩のトンネルでは掘削抵抗から推定した岩盤強度の値をいくつかに区分することによって岩盤分類は可能であるといえる.