掘削体積比エネルギーを用いた岩石強度の寸法効果の推定
2.無次元化掘削体積比エネルギーと掘削代表寸法

掘削機械において式(1)の強度と良い相関を持つ量として,掘削抵抗があげられる.しかしながら,広い範囲の掘削機械を対象としたときには,正確な掘削抵抗を入手することは困難と考えた.これに代わるものとして,掘削機械の分野で広く使用されてきた掘削体積比エネルギー(単位体積の掘削に必要なエネルギー)のデータを収集することにした8).以下の議論では,岩種による強度の差異の影響を除いて寸法効果を検討するのに便利な,無次元化掘削体積比エネルギー(無次元化SE)を用いて議論を進める.

無次元化SE =(掘削体積比エネルギー)/(一軸圧縮強度) (2)

なお,式(2)の一軸圧縮強度は室内試験で得られるコア強度で,比較的入手しやすい.

式(1)の試験片代表寸法(掘削代表寸法)に相当するものとして,刃物間隔,切り込み深さ,および両者の積の平方根(幾何平均)などが考えられる.どれが優れているかは,データ整理後に検討することにして,以下では,11種類の岩盤掘削方法における刃物間隔,切り込み深さおよび無次元化SEの求め方について述べる.

自由断面掘削機,シェアラー,コンティニュアスマイナーはいずれも切削式ビットで岩盤を切削するので,刃物間隔や切り込み深さは通常の決め方でよい.自由断面掘進機では,カッタヘッド長をビット数で除した平均ビット間隔を刃物間隔とし,カッタヘッド1回転あたりのカッタヘッドの移動量を切り込み深さとした.シェアラーはドラムカッタとも称されて,主として炭坑の長壁切羽で使用される大型機械である.ドラムが回転しながら切羽に沿って横に移動していき,掘削された石炭は手前にあるパンツアコンベアにのせられて運ばれる.ドラムにはらせん状に多数のピックが配置されるが,この場合の刃物間隔はらせんの1ピッチとし,ドラム1回転あたりのドラムの横方向移動量を切り込み深さとした.コンティニュアスマイナーは,炭坑の沿層掘進や短壁切羽で使用されることが多い.自由断面掘進機と似た掘削機械であるが,機械幅とほぼ同じ幅のカッタヘッドを持つ点で異なる.カッタヘッドのデザインやピックの配置は,メーカーにより相当に異なるが,平均的な値として,刃物間隔360 mm,切り込み深さ150 mmとした.掘削体積比エネルギーを(電動機出力)/(掘削体積)として求め,これを一軸圧縮強度で除して無次元化SEとした.  

TBM,2種類の回転削孔,さく岩機はいずれも円形の孔を掘るもので基本的な扱いは似ている.TBMでは,トンネルの半径をディスクカッタ数で除した平均カッタ間隔を刃物間隔とし,カッタヘッド1回転あたりの平均掘進長を切り込み深さとした.PDC(Polycrystalline Diamond Compact)回転さく孔は, PDC刃先(直径13.3 mm)が18個埋め込まれた外径98 mmのビットで,沢入花崗岩(一軸圧縮強度203 MPa)をさく孔した場合を対象とした9).TBMと同様の考えで,ビット半径をPDC刃先数で除した平均刃先間隔を刃物間隔とし,切り込み深さは1回転あたりの掘進長とした.振動回転さく孔は,回転に加えて,ビットに振幅50 μm,周波数22 kHzの振動を加え,稲田花崗岩(一軸圧縮強度200 MPa)と江持安山岩(一軸圧縮強度120 MPa)をさく孔した場合を対象とした10) , 11).さく孔中には,ビット先端のダイヤモンドが上下して,岩石面に食い込んだり離れたりするので,1周期あたりのダイヤモンドの移動距離(岩石と再接触するまでの移動距離)を刃物間隔とし,1回転あたりの掘進長を切り込み深さとした.さく岩機では,ボタンビットが回転しながら,打撃により岩盤を掘削する.そこで1打撃あたりの回転によるボタンチップの平均移動距離を刃物間隔とした.なお,1打撃あたりボタンビットは20°回転するとした.切り込み深さは1打撃あたりの平均掘進長とした.以上の3機種においても,掘削体積比エネルギーを(電動機出力)/(掘削体積)として求め,これを一軸圧縮強度で除して無次元化SEとした.

衝撃力を1打撃ずつ加えた時の結果を2例取り上げた.佐々木ら12)は一文字ビット(刃先角度90°)による動的貫入試験を行い,砂岩(一軸圧縮強度112 MPa)で貫入量(切り込み深さ)は0.38 mmであった.この場合,1打撃のみの貫入試験で刃物間隔は定義できないため,刃物間隔は切り込み深さと同じとした.砕岩棒による海底岩盤掘削は,重量500 kNの鋼製の砕岩棒を数m程度ウインチで吊り上げ,自由落下させ,岩盤を掘削する方法である13) , 14).後藤ら13)は来島海峡大橋下部工事での砕岩棒が岩盤(風化花崗岩)に貫入する際の荷重−貫入量曲線を求めた.岩盤物性および吊り上げ高さにより貫入量は変化するが,平均的には貫入量370 mm,最大荷重10 MN,一軸圧縮強度10 MPaであった.2 mずつ横に移動して砕岩棒を自由落下させたので,刃物間隔は2 mとし,貫入量を切り込み深さとした.掘削エネルギーを荷重−貫入量曲線の面積から求め,これを掘削体積と一軸圧縮強度で除して無次元化SEとした.

以下に取り上げる2つの方式は,機械掘削ではないが,広範に実施されており比較的容易にデータが得られるため取り上げた.

トンネルでの発破は,掘削機械による掘進と異なるが,比較的大きなずりが生じることもあってエネルギー効率が優れている.この場合には,平均さく孔間隔((トンネル断面積/さく孔数)の平方根)が刃物間隔に対応すると考えた.なお,トンネルの形状を制御するための壁面に沿うさく孔は,さく孔数から除外して平均さく孔間隔を計算した.発破は全断面ではなく,例えば上半1 mの掘進長の発破後,上半1 mおよび下半2 mの掘進長の発破のように進行する事が多い.そのような場合には,2回の発破で2 mの掘進長であるとして,1発破あたりの掘進長に相当する1 mを切り込み深さとした.例として,ねざめトンネルを取り上げた15).掘削体積比エネルギーは,岩盤1 m3あたりに用いた1.8 kgのエマルジョン系含水爆薬の爆発エネルギーと等しいとし,これを一軸圧縮強度で除して無次元化SEとした.

大久保ら8)は,直径5 cmの5種類の岩石(秋吉大理石,来待砂岩,田下凝灰岩,三城目安山岩,葛生ドロマイト)を用いて,一軸圧縮試験を行い,試験中にピーク強度を超えても試験を中止せず,初期高さ5 cmの1/5になるまで試験片を圧砕し続け,荷重−変位曲線の面積から消費エネルギーを求めた.これを掘削体積と一軸圧縮強度で除して無次元化SEを求めたところ,その平均は0.15であった.切り込み深さはプラテンの押し込み量である4 cmとした.刃物間隔は定義できないが,試験片の直径に相当する大きさを破砕しているため,これが刃物間隔であると考えた.

以上で述べた様々な岩盤掘削方法の刃物間隔,切り込み深さ,無次元化SEを表1に示す.表1は無次元化SEの小さいものから順に並べた.なお,同一の掘削方法でも条件(刃物間隔,切り込み深さ,岩種など)により,無次元化SEは変化することは知られている.そのため,今回は標準的であると考えられる値をなるべく採用したつもりであるが,無次元化SEの正確な見積もりは今後の課題として,表1の値により以下の議論を進めることとする.