掘削体積比エネルギーを用いた岩石強度の寸法効果の推定
3.無次元化掘削体積比エネルギーの寸法効果

3・1 掘削代表寸法と無次元化SE

掘削代表寸法として,福井ら15) と同様に,刃物間隔,切り込み深さおよび両者の幾何平均を用いることにする.無次元化SEと,@刃物間隔,A切り込み深さ,B両者の幾何平均との関係を図1の両対数グラフ上に示す.(a)に示した無次元化SEと刃物間隔との関係では,両対数グラフで直線に近い関係があり,刃物間隔が大きくなるほど,無次元化SEが小さくなる傾向がみられ,無次元化SEに寸法効果のあることがわかる.図には線形近似した直線を示したが,刃物間隔が大きくなると,近似曲線からの偏差が大きくなる.発破および一軸圧縮試験では,近似曲線より無次元化SEは小さく,他方,砕岩棒,シェアラーおよびコンティニュアスマイナーでは,無次元化SEは大きくなっている.(b)に示した切り込み深さとの関係でも,両対数グラフでほぼ直線関係がみられ,刃物間隔とほぼ同様である.(c)に示した刃物間隔と切り込み深さの幾何平均との関係でも両対数グラフ上で直線関係がみられるが,一軸圧縮試験では近似曲線からの偏差が大きい.

掘削代表寸法(mm)として刃物間隔,切り込み深さ,両者の幾何平均のいずれを採用しても,無次元化SEの寸法効果が現れており,近似曲線および相関係数は次のようになった.

無次元化SE=1.87 (刃物間隔) −0.402   (相関係数:0.92)  (3a)
無次元化SE=1.24 (切り込み深さ) −0.398 (相関係数:0.96)  (3b)
無次元化SE=1.55 (幾何平均) −0.406   (相関係数:0.95)  (3c)

3者とも指数は−0.40程度であり,掘削代表寸法としていずれを採用しても寸法効果の影響はさほど変化しない.相関係数に関しては,刃物間隔との相関がわずかに低く,切り込み深さと幾何平均はほぼ同程度の強い相関である.これらより,寸法効果の影響を表すために,掘削代表寸法としていずれを採用してもかまわないことがわかるが,以下では刃物間隔と切り込み深さの幾何平均を用いることとする.

3・2 粒度分布との関係

今回示した11種類の岩盤掘削方法は,2.で述べたように掘削機構は大きく異なっているが,式(3)のように無次元化SEが掘削代表寸法でほぼ決定されているということは興味深い.無次元化SEに寸法効果が現れる原因として,掘削ずりの粒度分布が関係している可能性が高いと考える.

福井ら15) は,発破,TBM,自由断面掘進機,さく岩機,PDC回転さく孔機および振動回転さく孔機で得られた掘削ずりの粒度分布と掘削代表寸法との関係を調べた.縦軸をCDF(cumulative distribution function)とした粒度分布曲線(加積曲線)を図2に示す.図2では,発破から振動回転さく孔まで粒径は4桁程度変化しており,その間を3等分するかのように,TBMと自由断面掘進機,さく岩機とPDC回転さく孔の粒度分布曲線が並ぶ.粒径の小さい掘削ずりを回収できなかった,さく岩機とPDC回転さく孔を除いて,他の粒度分布曲線は比較的似た形状をしている.CDFが50 %の時の粒径D50と,@刃物間隔,A切り込み深さ,B両者の幾何平均との関係を図3に示すが,3者とも両対数グラフ上でほぼ傾きが1の直線関係がみられる.相関係数は,@,A,Bでそれぞれ0.997,0.996,0.999と,Bの幾何平均LとD50との相関が最も高く,次式で近似できる.

D50 = 0.353L                  (4)

このように,刃物間隔と切り込み深さの幾何平均と,D50との間には線形関係が存在している.図2に示したように,掘削方法によらず粒度分布はほぼ同じ形状をしており,式(4)に従い,掘削代表寸法によって平行移動するだけであると考えられる.

粉砕により生じた砕製物の粒度分布に対し,次式のRosin-Rammler分布がよく用いられる16).

    (5)

ただし,Dは粒径,Dは定数である.4種類(発破,TBM,自由断面掘進機および振動回転さく孔機)の掘削方法におけるnの単純平均値は0.88であった.次いで,式(4)を満足するように,Dを決めると次式が得られる.

     (6)

図2には,式(6)より計算した粒度分布を破線で示したが,各掘削方法で得られた粒度分布とほぼ一致する.式(3c)を式(6)に代入すると次式が得られる.

     (7)

式(7)によれば,無次元化SEから粒度分布を推定できる.また,式(4)を式(3c)に代入すると次式が得られる.

無次元化SE =1.02 (D50)−0.4        (8)

式(7)と(8)から,粒度分布と無次元化SEとの密接な結びつきがうかがえる.粒度分布と消費エネルギーに関しては,古くから粉砕の分野で研究されてきたので,以下では,その成果を踏まえた検討を試みる.

強度の寸法効果は式(1)で表され,ヤング率は寸法によって変化しないとする.掘削(破壊)に要するエネルギーが単純に0.5×(強度)/(ヤング率)に比例するとすれば,体積で割って得られる掘削体積比エネルギーは試験片代表寸法の−2α乗となる.なお,ここでいう強度とは,掘削されにくさをあらわす量であり,掘削方法によって圧縮強度に近かったたり,引張強度に近かったりする.この後は山口・西松7)に示されているBondの式の誘導をそのまま用いれば,次式が得られる.

 無次元化SE = C(x2−2α−x1−2α)        (9)

ただし,x1,x2はそれぞれ掘削前,掘削後の粒径を表す.ここで,αとして0.25を採用すると,Bondの式となる.参考までに,図1(c)に,Bondの式に対応する傾き−0.5の直線も示した.このように,式(1)の岩石強度の寸法効果とBondの式を結びつけることができる.なお,Bondの式に関しては,Rittingerの式とKickの式の中間的な形として経験的な式であるとの見方17)もあるが,久保18) は式(1)でα=0.25を仮定し,球形試験片を平板で破壊させた時のエネルギーを算定し,最終的にBondの式を導いている.参考までに,一軸圧縮強度200 MPaの花崗岩を対象として,ボールミルによる粉砕エネルギー19) を試算してみると,図1(c)の破線に示すように,掘削エネルギーの20 %程度であった.これは,ボールミルでの粉砕では球状のボールと破砕物の衝突によって引張応力により破砕されやすいのに対して,岩盤掘削では自由面が少ないため,圧縮応力で破砕されやすいことが原因であると考える.

式(9)において,α=0.20,x1=∞,x2を掘削代表寸法Lとすると,

無次元化SE ∝ L−0.4       (10)

となり,式(3)の結果が説明できる.山口・西松7) に示されているαは0.17 〜 0.32であり,α=0.20は区間に入っているし,またHoek and Brown4) が一軸圧縮強度から求めたα=0.18に近い値なので,妥当な値と言える.

3・3 一軸圧縮試験に関する考察

一軸圧縮試験以外の掘削方法は,掘削後に比べ掘削前の寸法(粒径)は十分大きく,式(9)の第2項が無視できるのに対して,一軸圧縮試験では直径50 mm,高さ50 mmの試験片を破砕したため,その分無次元化SEを小さく見積もっている可能性がある.

大久保ら8) は,5種類の岩石試料を用い,一軸圧縮試験において変位を10 mm,20 mm,30 mm,40 mmの4種類とした試験を実施した.表1および図1に示した一軸圧縮試験の無次元化SEは,なるべくその影響が小さくなるよう,変位40mmでの5種類の岩石の平均値を示したが,それでもなお,図1に示した一軸圧縮試験の無次元化SEは近似曲線より小さい.

 式(9)でα=0.20とし,x2=D50とすれば,次式を得る.

 無次元化SE = C(D50−0.4−C2)              (11)

ただし,C2= x1−0.4で,元の試験片の大きさによって決まる定数である.式(11)によると,無次元化SEとD50−0.4 は直線関係が成立することとなる.大久保ら8)の結果を,無次元化SEとD50−0.4 の関係で示すと図4となる.田下凝灰岩,来待砂岩および秋吉大理石は直線に近い関係が見られ,結果を外挿すると3岩石とも無次元化SEが0となるのは,D50−0.4 =0.28でほぼ同じである.図には,式(8)の傾きで,無次元化SE=0の時,D50−0.4 =0.28を通る直線を示したが,3岩石の中間的な位置にあり,この3岩石に関してはほぼ式(11)が成立していることがわかる.

他方,三城目安山岩と葛生ドロマイトは下に凸の傾向が見られ,式(11)と一致していない.この点は今後の課題としたいが,両岩石とも変位30mmから40mmの間の勾配と式(8)の傾きはほぼ同じであり,式(8)は5岩石の平均的な値に近く,初期試験片の大きさを考慮すれば,一軸圧縮試験もほぼ式(8)に近い関係があることがわかる.なお,Bondの式では,CDFが80 %の時の粒径D80を代表寸法として扱う19).図4のD50をD80とした場合の結果を図5に示す.傾向は図4とほぼ同じであるが,無次元化SEが0となるのは,D80−0.4 =0.21程度である.これよりD80は50 mmとなり,試験片の大きさと一致する.