掘削体積比エネルギーを用いた岩石強度の寸法効果の推定
4.岩石の強度の寸法効果を見積もる手法の提案とまとめ

 掘削機械の無次元化掘削体積比エネルギーの寸法効果は,掘削ずりの寸法(粒径)に関連したものであり,岩石の強度の寸法効果と関連していることがわかった.岩石の強度の寸法効果を表す式(1)のαは,岩種により異なることが指摘されている1) .本研究では,極端な寸法効果を示す石炭などを除き,比較的標準的な寸法効果を示すと思われる岩石を掘削したときの無次元化掘削体積比エネルギーを用いて検討した.しかしながら,入手できたデータの数は必ずしも十分とはいえず,α=0.20が標準的な岩石の寸法効果を現しているかどうかを確認するには至らなかった.

岩種ごとのαがどのようになっているのかを調べることは重要である.3・2で述べたように,図1の傾きの半分がαであると考えると,岩石の強度の寸法効果を求めることは可能である.その際,誤差を減らすためには,なるべく掘削代表寸法の差の大きな掘削方法を選択することが理想的である.実験室と原位置とにわけて寸法効果の求め方をまとめておく.

a)実験室実験(一般的に購入可能な数十cmの岩石ブロックの場合)

 今回検討した掘削方法のうちでは,一軸圧縮試験と振動回転さく孔を行うのが,効率的である.一軸圧縮試験は,普通サイズ(直径2.5 cm 〜 5 cm程度)を用い,大久保8)のようになるべく大きな変位を与え,荷重−変位曲線の面積から掘削体積比エネルギーを求める.一軸圧縮試験では初期サイズの影響が表れるので,ふるい分けによりD50を求め,3・3で述べた補正を行う必要がある.振動回転さく孔は特殊な装置であるので,一軸圧縮試験用のボーリングをする際のボーリングでの掘削体積比エネルギーで代用できると考える.ボーリングでは回転トルクが主要なエネルギーとなるので,回転用の電動機の出力を測定し掘削体積比エネルギーを求める.掘削代表寸法はドリルの寸法・形状から求めることができる.たとえば,ダイヤモンドドリルであれば,ドリル先端のダイヤモンドの間隔から刃物間隔が求まるし,切り込み深さはさく孔深さを回転数で割れば求まる.また,一軸圧縮試験と振動回転さく孔の中間的なビット貫入試験も併用すると,比較的精度が得られやすいと考えられる.

b)原位置での計測

 原位置での施工では,TBM,自由断面掘削機,発破など何らかの掘削方法で掘削が行われるため,そのデータを取得すれば1つめの掘削体積比エネルギーが求まる.また,ほとんどの施工現場で,ロックボルト用や発破用にさく岩機が使用されるので,2つめの掘削体積比エネルギーが求まる.両者により図1を求めることが可能である.
最近のTBM,自由断面掘削機では施工管理の上で様々なセンサーを搭載しているため,容易に掘削体積比エネルギーを求めることができる.発破では本研究と同様の手法で使用した薬量から簡単に掘削体積比エネルギーは求まるし,掘削代表寸法も掘進長とさく孔間隔から求まる.自動さく孔用や切羽前方探査用のさく岩機はセンサーを搭載しており,そのデータから容易に掘削体積比エネルギーを求めることができる.このように原位置での施工では計測とデータ整理以外に余分な手間と費用は発生しないし,さらに掘削中に連続的に大量のデータが得られるため,様々な岩種での強度の寸法効果の推定が可能であると考える.

 本研究では,掘削代表寸法が0.01 mm 〜 1 mの11種類の岩盤掘削に関して検討した.その結果,無次元化SEは掘削代表寸法の−0.4乗に比例することがわかった.これは,Hoek and Brown4)が求めた強度の寸法効果の指数−0.18の約2倍である.掘削に要するエネルギーが単純に0.5×(強度)/(ヤング率)に比例し,さらにヤング率が寸法によって変化しないとすれば,式(3)の掘削体積エネルギーの寸法効果の指数は,式(1)の強度の寸法効果の指数の2倍となるはずであり,本研究の結果を説明できる.

粒度分布におけるCDF 50%の粒径D50と掘削代表寸法とはほぼ比例すること,無次元化SEはD50の−0.4乗に比例することがわかった.この関係と粉砕の分野で有名なBondの式との関連性を示した.

寸法効果は,実験室での実験結果を原位置に適用する場合に,是非とも考慮しなければならない事項である.しかしながら,小から大までの試験片を用いた試験は極めて困難であり,不明な点が多く残されている.今回提案した方法によれば比較的容易に寸法効果に関する情報が得られる.しかも得られた情報はまさに原位置で得られたもので,小規模強度試験の結果に基づいて大規模岩盤内構造物を設計する際や,小規模掘削試験結果に基づいて掘削機械を設計する際に役立つと考える.さらに,強度の寸法効果は亀裂や不連続面が強度に及ぼす影響の探求と結びついているので,本研究で提案した手法は破壊機構の解明に役立つ可能性がある.