鋼繊維補強モルタルの耐久性に関する研究
5.まとめ

本研究では, SFRMの耐久性のデータを取得することを目的とし,環境が異なる3地点で耐久性調査をおこなった.

北海道上磯郡の峩朗鉱山機械運搬坑道では,18年前に吹き付けられた坑道壁面のSFRMを調査した.中性化深さを測定したところ,平均で5 mm,最大で15 mmであった.中性化深さの予測式はいくつか提案されているが,今回得られた中性化深さは比較的良い環境におかれたモルタルとしては標準的であり,鋼繊維混入により中性化が促進されることはなかった.鋼繊維は坑道壁面に露出している部分のみ錆びており,中性化のいかんにかかわらず,モルタル中に埋め込まれた部分は錆びていなかった.この観察結果からも予測できるように,中性化の生じていない部分の力学特性には劣化が認められなかった.

静岡県蒲原郡での調査では,1994年に県道法面に吹き付けられたSFRMのひび割れ観察をおこなった.この地点は凍結融解が年に数回起きている可能性の高い地点である.6年後におこなった2000年の調査では,プレーンモルタル法面に比べSFRM法面では,ひび割れ数が少なく,ひび割れ幅も小さいことがわかった. 鋼繊維の引抜抵抗に基づくひび割れ抑制効果が,6年間にわたって有効であったためといえる.ひび割れが少ないと中性化が進み難いので,両者の効果により,法面の耐久性が大いに向上する可能性が大きいと考える.

千葉県勝浦市鵜原町の太平洋に面した海岸線の海岸飛沫帯において1996年から暴露試験を実施した.この地点では,主として塩害,副として中性化が問題となる.直径3 cm,高さ6 cmの試験体では,暴露5年経過すると,鋼繊維が錆びて体積膨張しひび割れが生じた.ひび割れた試験体の中性化深さは2 〜 3 mmであり,これは峩朗鉱山坑道の結果と変わらない.この結果から判断する限りでは,鋼繊維の錆と中性化との関連は薄いといえる.ステンレス繊維を混入した試験体は,7.5年経過してもほぼ健全であった.海岸飛沫帯のように厳しい環境下では,ステンレス繊維が適しているとの結論を得た.

鋼繊維がわが国で使用されはじめてから約30年が経過した.当初,細い鋼の繊維は表面がわずかに錆びると,強度が大幅に低下するのではないかとの懸念があった.しかしながら,本研究で調査・検討した限りでは,地下の坑道でも地表の法面でも,鋼繊維は十分な耐久性を示すことがわかった.ただ一つの例外は海岸であった.この環境下ではステンレスや高分子の繊維を用いることが望ましいといえる.また本研究から,通常の雨水や地下水があっても耐久性が著しく低下することは見られず,湧水のある坑道,さらには導水路トンネルへの利用は可能であると考えられる.

耐久性に関する長期試験は手間ひまのかかる試験であるが,耐久性調査は重要であると考えられ,今後も継続していくつもりである.