岩石のピーク強度および残留強度の載荷速度依存性
1.はじめに

岩石強度の載荷速度依存性は,岩石の時間依存性挙動や粘弾性的性質と関わりが深く,岩盤内構造物の長期挙動と安定性を評価するための重要な要素である.従来の研究により,多くの岩石について,ピーク強度が載荷速度の1/(n+1)乗に比例することが知られている1).これは,一軸圧縮応力下2)だけでなく,三軸圧縮応力下3)や一軸引張応力下4)でも成り立つとされている.また,破壊靱性値の載荷速度依存性5)やクリープ寿命の応力依存性6),応力腐食によるき裂進展速度と応力拡大係数との関係7)などがnを用いて記述できるという研究結果もある.すなわちnは,岩石の時間依存性や粘弾性的性質の程度をあらわす重要なパラメータであると考えられる.

従来の研究では多くの場合,ピーク強度のnを求めるために,4〜5通りの載荷速度で強度試験が行われてきた.試験片ごとの強度のばらつきを考えると,この方法では少なくとも20本程度の試験片が必要となり,実務的に実施するのは困難である.大久保他8)は強度破壊点直前で歪速度を10倍にし,そのときの応力の増加からnを求める手法を提案した.この方法により,1本の試験片でピーク強度の載荷速度依存性を調べることができるようになったが,歪速度を変化させるタイミングの選定に工夫を要し,試験者が試験方法に習熟している必要があった.大久保他9)は,試験開始から歪が一定量増加するごとに,2種類の歪速度を交互に切り換えた.それぞれの歪速度で描かれる部分をなめらかにつなぎ,各歪速度に対応する2種類の応力−歪曲線を近似した.これに近い手法は,砂や粘土の三軸圧縮試験でも用いられており10),1本の試験片から比較的容易にnを求めることができる.しかし,応力−歪曲線の近似は手作業によることが多かったため,試験者ごとにばらつきが生じるおそれがあった.

本研究では,一軸・三軸圧縮応力下で歪速度を交互に切り換えた試験を行い,より精度良く載荷速度依存性が調べられる,補間を利用したデータ整理方法を提案した.5種類の岩石のピーク強度の載荷速度依存性を調べるとともに,試験条件が試験結果に与える影響についても検討した.さらに,原位置などで採取された物性値が未知なる少数の試験片から,ピーク強度のnを簡便かつ精度良く求めるための試験方法を提案した.

ピーク強度とともに,残留強度の載荷速度依存性を調べることは,地下空洞周辺の緩み領域の安定性評価や岩石の破壊機構の解明に重要である.また,従来から提案されてきている種々の構成方程式11,12)の妥当性を調べるためにも役立つ.しかし,強度破壊点以降での載荷速度依存性に関する研究はほとんど行われていない13).この理由の一つとして,強度破壊点以降の変形挙動が試験片ごとに大きくばらつくことがあげられる.本研究では,歪速度を交互に切り換えた試験により,強度破壊点以降での載荷速度依存性を調べ,ピーク強度の載荷速度依存性と比較・検討を行った.