岩石のピーク強度および残留強度の載荷速度依存性
3.田下凝灰岩の試験結果と試験条件の影響

今回行った試験では,試験片の変形がかなり大きくなる場合もあったが,応力,歪ともそれぞれ初期断面積,初期長さを基準とした微小変形の場合の式を用いた.三軸圧縮試験での応力と歪に関しては,周圧のみを加えた時点での値を0とした.なお,いずれの周圧下でも周圧の変動は±0.02MPa以内であった.

Fig.2には,歪速度を切り換えた試験で得られた,田下凝灰岩の標準的な応力−歪曲線を示す.一軸圧縮試験では,試験開始から応力が強度の約50%に達するまで,歪速度の切り換えによる影響はほとんど見られなかった.その後は,歪速度の遅速にともない応力も増加・減少を繰り返した.応力の増減の程度は強度破壊点付近で最も大きく,強度破壊点以降では徐々に小さくなっている.応力が5MPa以下まで低下しても載荷速度依存性が確認できた.周圧2.0MPaでも試験開始から応力が強度の約60%に達するまでは,歪速度の影響はほとんど見られなかった.その後は一軸圧縮試験と同様に,歪速度の遅速による応力の増減が見られるが,一軸圧縮試験に比べ,破壊が延性的であった.周圧7.8MPaでも試験開始直後は,歪速度の切り換えによる影響はほとんど出なかった.強度破壊点が明瞭ではなく,歪が1.5×10−2を越えると,応力−歪曲線は横軸とほぼ平行となった.

大久保他9,19)や福井他4)は,Fig.1に示すように,歪速度を切り換えた試験で得られた曲線のうち,それぞれの歪速度で描かれる部分を手作業でなめらかにつなぎ,各歪速度に対応する2種類の応力−歪曲線を近似した.しかし,曲線を手作業でつなぐことはそれほど容易ではなく,再現性も良くない.また,試験者ごとにばらつきが生じるおそれもある.そこで本研究では,補間を用いて応力−歪曲線の近似を行った.補間の手法は種々あるが,今回は,高次方程式で発生する振動を避けるため,3次スプライン補間20)を用いた.

Fig.2には,スプライン補間による2種類の応力−歪曲線の近似を細線で示した.補間では,歪速度を切り換える直前の点の座標と,試験開始・終了時の応力−歪曲線の傾きを入力値とした.田下凝灰岩ではTable 1のように,試験片ごとに条件を変えて試験を行った.そこでFig.3には,種々の条件下での強度破壊点付近の補間結果を示した.なおFig.3(a)は,Fig.2で示した一軸圧縮試験結果の強度破壊点付近の拡大図である.

まず,Fig.3(a),(b),(c)により,切り換え間隔が等しく2種類の歪速度の比C2/C1が異なる場合を比較してみる.Fig.3(a),(b)では,補間による曲線はそれぞれの歪速度で描かれる部分をなめらかにつないでおり,2種類の歪速度に対応する応力−歪曲線がうまく再現されている.一方,Fig.3(c)では,強度破壊点付近で,応力が増加していく途中で歪速度が切り換わっているのがわかる.すなわち,歪速度2×10−4/sで安定に変形している部分がほとんどなく,補間結果が歪速度2×10−4/sでの応力−歪曲線を近似しているとはいい難い.つまり,切り換え間隔は歪速度の比に応じて変化させる必要があり,間隔が短すぎると応力−歪曲線をうまく近似できないことがわかる.次に,C2/C1が10で,切り換え間隔が長い場合の結果をFig.3(d)に示した.切り換え間隔が長すぎると,補間に用いる入力点数が少なくなるため,この場合も強度破壊点付近がうまく近似できていない.

Table 1には,応力−歪曲線がうまく近似できた場合の切り換え間隔を太字で示したが,歪速度の比が大きく周圧が大きいほど,適切な切り換え間隔が長くなっている.なお,歪速度の比が等しければ,2種類の歪速度の選び方による影響はほとんどなかった.例えば,補間結果から推定される,歪速度を10倍にしたときの強度の増加率は,歪速度を10−5と10−4/sで切り換えても,10−6と10−5/sで切り換えても4.7%程度であった.