岩石のピーク強度および残留強度の載荷速度依存性
6.残留強度の載荷速度依存性

ピーク強度に比べて,残留強度の載荷速度依存性に関して得られている知見は少ない.Bieniawski27),Peng et al.28),Peng29)は強度破壊点以降での変形の載荷速度依存性を調べたが,いずれも定性的な議論にとどまっている.Stavrogin et al.13)は強度破壊点以降で歪速度を増加させ,歪速度を変化させる直前の点での応力と変化後の応力の最大値を比較した.福井他4)は一軸引張応力下での残留強度の載荷速度依存性を,除荷曲線を用いて調べた.このようにいくつかの研究結果が公表されているが,残留強度の載荷速度依存性を調べる方法は確立されておらず,データの蓄積や定量的な検討も少ない.また,残留強度とピーク強度の載荷速度依存性の比較もあまり行われていない.そこで以下では,残留強度が確認された,田下凝灰岩,来待砂岩,幌延泥岩の3岩種について,3,4章で得られた補間結果を用いて,強度破壊点以降の変形の載荷速度依存性を調べた.

まず,Fig.2Fig.4に細線で示した2本の近似曲線を用いて,歪が同じ点での応力を比較してみる.Fig.5に,遅い歪速度C1に対応する近似曲線を実線で,速い歪速度C2に対応する近似曲線を,縦軸方向に対して(C1/C2) 1/(n+1)倍に縮小した結果を破線で示した.すなわち,2種類の歪速度でのピーク強度が等しくなるように表示した.

Fig.5(b)は田下凝灰岩の周圧下での結果であり,わかりやすいように点線で囲んだ部分の拡大図も示した.なお拡大図には,試験で得られた応力−歪曲線を歪速度C1に対応する部分は黒塗り記号で,C2に対応する部分は白抜き記号で示した.ただし,歪速度C2に対応する応力は(C2/C1) 1/(n+1)で除してある.いずれの周圧下でも,強度破壊点付近で実線と破線がほぼ重なっており,歪速度を変化させても,強度破壊点での歪の変化は小さいといえる.また興味深いことに,強度破壊点以降でも2曲線はほぼ一致した.拡大図でより厳密に比較すると,強度破壊点直後よりもさらに破壊が進行したカット図Bの方が2曲線の差は小さかった.Fig.5(d)に示した幌延泥岩でも同様の傾向が確認できた.周圧4.0MPaでは強度破壊点以降で応力低下があるため,実線と破線がずれている部分もあるが,周圧2.0MPaでは強度破壊点付近から残留強度領域までほぼ重なっている.すなわち,周圧下での試験のように破壊が比較的延性的な場合は,強度破壊点以降で破壊が進行していっても,載荷速度依存性の程度はそれほど変化していない.これは,周圧下では強度破壊点付近と残留強度領域で,載荷速度依存性を支配する機構があまり変化しないことを示唆している.

Fig.5(a),(c)で示した一軸圧縮試験結果では,田下凝灰岩では応力5MPa以下,来待砂岩では応力10MPa以下の残留強度領域で実線と破線がほぼ一致した.しかし,強度破壊点付近では両者のずれが見られた.そこで,応力だけでなく歪の補正も検討した.Fig.6(a),(b)には,Fig.5(a),(c)に示した歪速度C2に対応する補正曲線を,横軸方向に対して1/(1+εi/100)倍に縮小した結果を破線で示した.ただし,εi(%)は歪速度がC1からC2に変化したときの強度破壊点での歪の増加率であり,C1=10−5,C2=10−4では,田下凝灰岩では約2.0%,来待砂岩では約2.7%であった.なお,いずれの図でも,強度破壊点以前で応力が強度の50%になる点で接線を引き,その接線と横軸が交わる点を原点とした.Fig.6ではFig.5に比べて,強度破壊点付近での2曲線のずれは改善されたが,残留強度領域では逆にずれが若干大きくなった.

一軸圧縮試験結果に関して応力と歪の補正を種々検討したが,周圧下のように,強度破壊点付近から残留強度領域まで,実線と破線を一致させる方法は見つからなかった.この原因の一つとして,一軸圧縮応力下では,強度破壊点以降で載荷速度依存性の程度が変化している可能性が考えられる.しかし,今回の試験結果だけで,周圧下との違いや,ピーク強度と残留強度の載荷速度依存性の関係を結論付けるのは困難であり,今後も検討が必要であると考えている.