刃物間隔を考えたさく岩機用ボタンチップの静的貫入試験
1.はじめに

さく岩機に関する研究は大別して3つに分けられる.一つは打撃エネルギー発生源のさく岩機本体であり,ついでエネルギー(弾性波)の伝達部であるロッドとスリーブに関する研究で,三番目が岩盤を打撃するビットに関する研究である.最後に挙げたビットに関する研究について述べると,一文字やクロスビットに関する研究は古くからおこなわれてきたが,比較的最近になって開発された,ボタンチップを先端に埋め込んだボタンビットに関する研究は少ない.そこで著者らは,まずボタンチップの衝撃・静的貫入試験(大久保ら,1992)によって衝撃と静的貫入試験の結果を比較・検討した後,摩耗したボタンビットによる静的貫入試験(大久保ら,1997)をおこなった.

ボタンチップの衝撃・静的貫入試験(大久保ら,1992)では,先端部直径14mmのボタンチップを用いて衝撃貫入試験と静的貫入試験をおこない,両者の試験結果を比較・検討した.試料岩石は,稲田花崗岩,秋芳大理石,和泉砂岩,本小松安山岩,三城目安山岩,山崎石(安山岩),伊西石,仙台石(粘板岩),村田玄武岩の9種類である.その結果によれば,衝撃貫入試験の方が20%ほど貫入力曲線(貫入力−貫入深さ曲線)の傾きは大きいが,孔の形状などには衝撃と静的とで大きな差のないことがわかった.この研究結果から,静的貫入試験結果から衝撃貫入時の挙動をある程度推定できることがわかった.そこで極めて困難な衝撃貫入試験に代えて静的貫入試験をおこない,基礎データを蓄積していくことにした(大久保ら,1997).本研究も,このような研究方針に沿った静的貫入試験の一つである.

ボタンビットに関する研究は少ないが,特に刃物間隔(貫入間隔)の影響に関する知見はほとんどない.そこで,実験的研究に先立って,静的貫入試験に加えて,ディスクカッタによる圧砕,切削に関する従来の研究を調査し,刃物間隔などの実験条件を設定する際の参考にするとともに,3者に共通点がないかどうかを検討することにした.今回の実験では,1つのボタンチップを少しずつ位置をずらして貫入し,その時の貫入力と貫入深さについて調べた.また,ボタンチップの先端半径を4種類変えて実験をおこなった.今回の研究の目指すところはボタンビットの改良であり,今後,@今回得た基礎データをもとにした削孔過程のシミュレータの開発,Aシミュレータを使用してボタンビットの適切な設計法を提案,Bボタンビットの設計・試作・試用,の順に研究を進めていく予定である.

主な記号

d [mm]:刃物代表寸法.ボタンチップでは先端部直径(先端部半球の直径).ディスクカッタではその直径.切削刃物および一文字ビットではその幅.

P [kN]: 切削抵抗,主分力

Q [kN]:貫入力,押し込み力,背分力

s [mm]:刃物間隔(Spacing)

t [mm]:貫入深さ,切り込み深さ

φ[deg]:刃先角

σc & σt[kN/mm2]:一軸圧縮強度と,一軸ないし圧裂引張強度