刃物間隔を考えたさく岩機用ボタンチップの静的貫入試験
3.貫入試験

3.1 試験方法

これまでの力学試験における使用実績が多いので,性質がよくわかっている三城目安山岩を検討の主体とした.さらに,強度が半分程度の来待砂岩と強度が2倍程度の稲田花崗岩を試料岩石として選択した.表2にこれらの岩石の強度などの値をまとめて示す.表中の比重はみかけ比重であり,ショア硬度はC型ショア硬度試験機により測定した値である.試験には寸法 20×20×45cmの岩石ブロックを使用した.

200kN万能試験機を使用して貫入試験をおこなった.その際,岩石ブロックの平らな面に,先端が球状の超硬合金製ボタンチップを1〜2分かけて徐々に貫入させた.ボタンチップは先端部直径が,3mm,6mm,9mm,14mmの4種類を用いた.貫入試験では,図1のごとく,左右,上下とも一定の刃物間隔sだけずらし,ひとつの条件下で25回の貫入試験を実施した.すなわち,まず左上からはじめて,定まった刃物間隔だけ順次下方に移動して5回の貫入試験をおこなう.ついで,右に刃物間隔だけずらして,上方より下方に5回の貫入試験をおこなう.こうして都合5×5=25回の貫入試験を行った.刃物間隔sは,5,10,15,20mmの4種類とした.一連の貫入試験が終了後,岩片を取り除き,25点の深さをデプスゲージで測定した.25点の測定値の内,図1の破線内の3×3=9点の単純平均値をもって貫入深さとした.

実施した試験の一覧表を表3に示す.表中の数字は加えた貫入力(kN)を表し,数字の右の×は貫入孔間の連結がまったくなかったことを,△は何箇所か連結がみられたことを,○は全域が連結したことを示す.

3.2 三城目安山岩の貫入試験結果

図2に,三城目安山岩の貫入深さと貫入力の関係を示す.図2(a)は,ボタンチップ径が3mmの時のもので,○,●,△,□にて刃物間隔が5,10,15,20mmの時の結果を示した.データのばらつきはかなりあるが,貫入深さがある値を超えると急激に貫入深さが増加することがわかる.急激に貫入深さが増加する範囲は,表3の○で示した貫入孔が連結する範囲とほぼ一致することがわかる.ボタンチップ径が別の値の結果を示した図2(b),(c),(d)でも同様のことがいえる.

図2に示す直線は,貫入孔が互いに連結して急激に貫入深さが増加する領域での貫入深さと貫入力の関係を近似してみたものである.データのばらつきがかなり大きいが,この直線の傾きは,刃物間隔にほとんどよらないことが,いずれのボタンチップ径でもいえる.

ボタンチップ径の増加による,直線の傾きの減少を検討するため,今度は刃物間隔を一定としたときの貫入深さと貫入力の関係を検討した.図3(a)は刃物間隔が5mmの場合である.この例からもわかるように,ボタンチップ径の増大にともなって,直線のX切片(オフセット)は増加し,傾きは減少する.表1からわかるように,一定の貫入深さを得るための貫入力は刃物の代表寸法の平方根に比例するとの報告が多い.そこで,横軸を(貫入力)/(ボタンチップ径)0.5として,刃物間隔が5mmの場合の貫入深さを整理してみたのが図3(b)である.これからわかるように,ボタンチップ径の大きさにかかわらず,一つの線上にデータが並ぶ.

図2に立ち戻ってみると,刃物間隔が増大するとX切片は増加することがわかる.このX切片は貫入孔が連結するかどうかのしきい値でもある.しきい値と刃物間隔の関係を詳しく検討することは,なかなか困難であるが,ここでは極端な2つの考えを示しておく.まず,しきい値は新たに生み出される破面の面積に比例すると考えると,しきい値は刃物間隔の2乗に比例するはずである.もう一つの考え方として,しきい値は新たに生み出される破面の長さに比例すると考えれば,しきい値は刃物間隔の1乗に比例するはずである.以上の2つの考え方は,極端な場合で現実はその中間である可能性が高い.そこで,しきい値が刃物間隔の1乗,1.5乗,2乗に比例する場合を検討してみることにする.すなわち,a,b,cを常数とし,添え字1,1.5,2が,それぞれ1乗,1.5乗,2乗に比例する場合を示すとして,式で書けば次のようになる.

t1 = a1 Q/d0.5 − b1 s − c1   (19)

t1.5 = a1.5 Q/d0.5 − b1.5 s1.5 − c1.5  (20)

t2 = a2 Q/d0.5 − b2 s2 − c2   (21)

図4に三城目安山岩の測定−計算貫入深さ線図を示すが,(a)は刃物間隔の補正が線形,(b)は1.5乗,(c)は2乗の場合である.式にはa,b,cの3つの常数が含まれるが,aは直線部の傾きが1となるように決める.つぎに,刃物間隔が5mmと10mmの時の結果がほぼ一致するようにbとcを決めた.図4を書くのにあたって使用した値を表4に示す.これよりわかるように,cの値は共通であった.

図4(a)をみると,刃物間隔が20mmの時の測定結果が,右にずれた位置に来ることがわかる.これは,常数bとcを,刃物間隔が5mmと10mmの測定結果から決定したためである.刃物間隔が20mmの時に必要な補正量は,こうして求めたものよりかなり大きいことがこれからわかる.次に,補正量が刃物間隔の1.5乗に比例するとした同図(b)を見ると,刃物間隔20mmの測定結果がかなり左により,刃物間隔による相違がかなり改善されたことがわかる.しかしながら,まだ刃物間隔20mmに対する補正が不足である.次に同図(c)の刃物間隔の2乗で補正した場合をみてみる.この場合には,刃物間隔20mmに対する補正がほんのわずかではあるが大き過ぎるように見えるが,全体としてみると(b)より若干良いことがわかる.データのばらつきが大きく確たることはいえないが,今回得られた測定結果に基づく限りでは,(b)と(c)の間でどちらかといえば(c),したがって刃物間隔の2乗で補正した場合が最も良い結果となった.

3..3 来待砂岩の貫入試験結果

図5に来待砂岩の貫入深さ−貫入力線図を示すが,(a)はボタンチップ径が6mm,(b)は9mmの時のものであり,他のボタンチップ径の時の結果は省略した.データの数が少なくばらついているが,貫入深さと貫入力の関係を近似した直線の傾きは,三城目安山岩と同様に刃物間隔にはあまり依存しないことがわかる.また,X切片(オフセット)は刃物間隔に依存する.ばらつきは大きいものの上記の傾向は三城目安山岩と変わらない.

来待砂岩の場合にも,(19)および(20)式を適用して検討をしてみることにする.第一項の常数aを,三城目の場合と同様に求めてみた.その結果を表4に示したが,三城目安山岩のaの値1.6 mm1.5/kNと来待砂岩のaの値4.2 mm1.5/kNの比は,1/2.6であり,両者の一軸圧縮強度の比86MPa /36MPa=2.4の逆数にかなり近い.つぎに,式の第二項と第三項は,幾何学的な形状によるところが大きいと思われるので,三城目安山岩と同じ数値をもって整理してみることにした.

上記のように常数a,b,cを求めて描いたものを図6に示す.傾向は三城目安山岩の場合とさして変わらないといえる.しかし,この場合には,2乗と比較して1.5乗で補正した方が,刃物間隔の影響をよく表現できていたが,常数bとcを三城目安山岩と共通にして整理できたことは興味深い.

3.4 稲田花崗岩の貫入試験

図7は,刃物間隔10mmのときの稲田花崗岩の貫入深さ−貫入力線図である.○,●,△,□にてボタンチップ径が3,6,9,14mmの時の結果を示すが,ボタンチップ径が大きくなると直線の勾配が次第に緩やかになる.この点はこれまで検討してきた2岩石と同じである.そこで,次に再掲する(19)式により整理した結果を図8(a)に示す.常数a1 は刃物間隔10mmの時の結果を優先して0.8mm1.5/kNとした.b1とc1は三城目安山岩の場合と同じとした.

t1 = a1 Q/d0.5 − b1 s − c1  (19)

これよりわかるように,刃物間隔が10mmのときと20mmのときとで傾きが違う.この点は,これまで調べてきた2岩石と異なり,この場合には傾きに刃物間隔の影響があらわれている.若干の試行錯誤の後,図8(b)に示すように,次式で整理すればある程度の説明ができることがわかった.

t' = a' Q/{d0.5s0.5} − c'  (22)

ここにa'=2.5 mm2/kN, c'=6 mmとした.