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1.はじめに

著者は,ピーク強度に近い,比較的高い応力レベルにおける岩石の粘弾性的性質(時間依存性挙動)を中心にして研究をおこなってきた. その結果,岩石ごとに少しずつ差はあるが,非線型粘弾性論である程度説明可能な挙動が共通してみられることが判明してきた(大久保,1991). そこで,非線型粘弾性論に基づく構成方程式を提案し(山口ら,1984;大久保ら,1987;大久保,1992a),その計算結果と実験結果を比較・検討したところ, 定歪速度試験結果(大久保ら,1992b),クリープ試験結果(大久保,西松,1986;大久保,秋,1993)とも構成方程式によってある程度説明できることがわかった.

ごく最近になって,超長期にわたる岩盤内構造物の安定性を検討することの重要性が高まったので,より低い応力レベルでの長期間にわたる粘弾性的性質を検討することにした.その結果(大久保,2000),例えば湿潤状態の田下凝灰岩にピーク強度の30%の応力を加え続けると,3年経過してもクリープ歪の増加はとまらないことがわかった.また,湿潤状態の花崗岩にピーク強度の50%の応力を加えた場合にも,クリープ歪が徐々に増大していくことがわかった.このように,少なくとも湿潤状態では,比較的低レベルにおいても岩石が粘弾性的性質を示すことは,従来の認識とやや異なると思われる.

今後も比較的小さい応力でのクリープ試験を続け,低い応力レベルでの粘弾性を調べていく予定であるが,非線型粘弾性現象は可能な限り多面的に検討していく必要がある.そこで,定歪速度試験を行い, 50%割線ヤング率の載荷速度依存性に特に注目して実験的研究を開始することにした.ヤング率の載荷速度依存性は,もっとも基本的な事項の一つであり,従来多くの研究者が挑んできているが(Perkins et al,1970; Lama and Vutukuri,1978),実のところ信頼できるデータが少なく不明な点が多いとの認識を著者は持っている.その原因の一つとして,ヤング率を正確に測定することが相当に困難なことが挙げられる.サーボ試験機では,試験機備え付けの差動変圧器でプラテン間の変位が正確に測れるが,この方法では試験片端面の凹凸の影響と試験機のフレーム剛性の影響が測定結果に紛れ込んでしまう.その結果,得られた変位から計算したヤング率は小さくなる.補正はある程度可能であるが,信頼性と精度が下がる.次に,試験片に歪ゲージを貼ることが良く行われるが,歪ゲージの個体差や貼り付け方には,どうしても多少のばらつきが生じる.その他,試験片にナイフエッジを2箇所とりつけ,ナイフエッジ間の変位を測る方法がある.金属試験片ではこの方法で正確に変形が測れるが,岩石では変形の絶対量が小さい上,ナイフエッジの固定が難しい.以上のように,変位ないし歪の測定を正確におこなうことは,荷重の測定に比べてかなり困難といえる.

これまでの研究結果で,載荷速度が大きくなると,多くの場合ヤング率は上昇気味であることは従来の研究結果で明らかになっているが,定量的な結果はまだまだ得られているとは言えないと考えている.このヤング率の載荷速度依存性は,例えば,強度破壊点以前における構成方程式の骨格を決める実験結果の一つであり,その結果によってはこれまでに提案してきた構成方程式に修正を加えなければならないかもしれない.このような事情から,これまで何度も挑戦して明瞭な結論を得るまでに至らなかった,ヤング率の載荷速度依存性に再度取り組むことにした.これまでの経験では,多数の試験片を用い載荷速度を変えた試験は,試験片ごとの特性の違い等により測定結果がばらつく場合があった.そこで,ばらつきを軽減するために,試験方法を工夫してみたのでその結果を最初に紹介する.ついで,これまでの試験結果を合わせて総合的にヤング率の載荷速度依存性について検討する.最後に,構成方程式との関連について考察する.

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