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2.新しい実験法
2.1 実験方法
ヤング率の載荷速度依存性を調べる実験では,かなりの数の試験片を用意しておき,例えば4つの載荷速度 10−6/s,10−5/s,10−4/s,10−3/sで10回ずつ試験をおこなうことが多かった. この方法で,著者も何度か検討を試みたが,試験片毎の特性の違いが大きいと明瞭な結論を得ることは難しかった. そこで,これまでの実験方法に若干の工夫を凝らし,図1に示す載荷手順で実験をおこなうことにした.

@予備実験でもとめておいたピーク強度(平均値)の10%まで歪速度10−6/sで載荷する. そして,応力−歪曲線の原点とピーク強度の10%の点を結んだ直線から割線ヤング率E10をもとめる. なお,ピーク強度の10%という低い応力でも内部構造が変化する可能性はあるが,これより応力を低くすると, 正確に割線ヤング率をもとめることが困難なため10%とした.

A除荷する.

B定められた歪速度dε/dtでピーク強度の50%まで載荷して,50%割線ヤング率E50をもとめる.dε/dtは10−7/s,10−6/s,10−5/s,10−4/sのいずれかの値とした.

C非弾性歪を測定するため除荷する.

D破壊するまで載荷して,一軸圧縮強度をもとめる.

このようにすると,4本の試験片で歪速度を10−7/sから10−4/sまで変えた1組の実験が完了することになる. 実験より得られたE50/E10を評価の対象とすることにより,試験片ごとのばらつきを低減するのが, ここで提案する試験方法の主たる狙いである.

これまでの経験によればほとんどの岩石において,採取場所と採取時期が一致していたとしても, 作成した試験片の強度等にはかなりのばらつきが存在することがわかっている.そこで前もって,試験片の縦波速度を測っておき, 比較的似通った縦波速度を持つ試験片4本を用いて1組の実験をおこなうことにした.例として三城目安山岩を取り上げ, 3組の試験片の縦波速度Vpとヤング率E10図2に示す.E10は歪速度10−6/sで載荷したとき の10%割線ヤング率である.これよりわかるように,1組目の縦波速度は3580m/s程度でありヤング率も小さめであった.2組目と3組目の場合,縦波速度は3700m/s程度でありヤング率は大きめであった.弾性波速度がかなり似通っていても, ヤング率はかなりばらつくことがわかるが,縦波速度で分別して1組の実験をおこなう意味はあるといえよう.

2.2 実験結果
試験には,最大容量100kNの油圧サーボ式試験機を用いた.測定項目は,ロードセルによる荷重,差動変圧器による変位, 試験片に貼り付けた歪ゲージによる歪である.ヤング率をもとめる際に使用したのは,歪ゲージによりもとめた歪である.また,試験片は直径2.5 cm,高さ5 cmで,試験室において自然乾燥させたものを用いた.

図1に,三城目安山岩の応力−歪曲線を示したが,最初の立ちあがりの勾配がやや大きいことがわかる.0〜40 MPaまでの曲線は若干上に凸となる. 一方,除荷時の曲線は下に凸となり,応力が0 MPaとなったとき6×10−4程度の残留歪が残る.

図3には,図2と同じ3組の実験例における50%割線ヤング率の載荷速度依存性を示した.1組目の実験で使用した試験片のヤング率は, 弾性波速度が遅かったことから予め予測したように,他の2つと比較して小さかった.図よりわかるように, 歪速度が10−7/sの時のヤング率がもっとも小さく,歪速度が10−6/s,10−5/sとなるとヤング率は増大する. しかしながら,歪速度が10−4/sとなると一転してかなり小さくなる.また,2組目と3組目の実験結果をみると, 試験片ごとの特性の違いのためと思われるばらつきがかなり大きいことがわかる.

図4には,今回提案した正規化ヤング率E50/E10をもって載荷速度依存性を整理した例を示す. 実験結果のばらつきは多少あるが,図3と比較すると大幅な改善がみられた.三城目安山岩の他に,来待砂岩,秋吉大理石, 稲田花崗岩,白浜砂岩を用いて実験をおこなったが,図1に示す方法でE50/E10をもとめると, 試験片毎のばらつきがかなり低減することが認められた.

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