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4.構成方程式による検討

著者は,非線形粘弾性論に基づいて構成方程式を提案してきたが,大きく分けて2つのタイプにわかれる. 一つは,岩石の破壊にともなって亀裂の数と長さが次第に増加していき,この結果として変形のし易さ(コンプライアンス) が次第に増加していくと考えて提案したものである(大久保ら,1987).もう一つは,非弾性歪(irrecoverable strain)が次第に増えていくことを重くみてモデル化したものである(山口ら,1984).実際にはコンプライアンスλと非弾性歪ε2の増大 とが並行しておこっていることを何ら(1989)は明らかにしたが,両者を分離して扱うには膨大な実験が必要であり実用的でないこと, また,歪ないし変形が単調増加する場合には,どちらか一方のみを考えた構成方程式で現象をよく表せることから, 通常は一方のみ考えた構成方程式を実用に供してきた.

前者のコンプライアンス可変型構成方程式を用いて,ヤング率の載荷速度依存性を考えてみることにする. コンプライアンスをλ,時間をt,応力をσ,さらにa,n,mを常数として,著者の提案した構成方程式は次のように書ける.

dλ/dt = a σn λm (14)

この解は既報(大久保,1992a)で示したが,その結果によれば,次のことがいえる.@ピーク強度におけるコンプライアンスは載荷速度によらない. Aピーク強度に対して50%など任意の応力レベルにおけるコンプライアンスも載荷速度によらない. B任意の応力レベルにおける接線および割線ヤング率は載荷速度によらない.(14)式は比較的高い応力レベルとピーク強度以降に重点をおいている. ピーク強度以前の現象まで扱うには,(14)式右辺を変える必要がある.そこで,やや一般化した次の構成方程式を考えてみることにする.

dλ/dt = a σn f( λ) (15)

f(λ)は,λの任意の関数である.これを定応力速度ないし定歪速度の条件下で解くと次の解が得られる(Appendix T).

ε* = λ(σ*)  σ* (16)

ここでε*とσ*は,歪と応力を,定応力速度の場合には(dσ/dt)1/(n+1) にて, 定歪速度の場合には(dε/dt)1/(n+1)にて割ったものである.(16)式より,載荷速度が変化しても, 図13(a)に示す基準化した応力-歪曲線(σ**曲線)は同一曲線となり,しかも対応する点のコンプライアンスは常に等しいことがいえる. したがって,この構成方程式が強度のピーク値を持つ場合には,基準化した強度は載荷速度に依存しない.すなわち,強度は載荷速度の1/(n+1)乗に比例する. 応力レベルは(応力)/(強度)であるため,応力レベルで整理した場合には,前記の@〜Bが成り立つことがわかる.よって,(14)式や(15)式の構成方程式では, ヤング率の載荷速度依存性は説明し難い.

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非弾性歪を考えた構成方程式は次のように書ける.

ε = ε1 + ε2 (17)

σ = k1 ε1

2/dt = f(ε2) σn

図14に示すように,ε1は弾性歪,ε2は非弾性歪である.k1は弾性ばね常数(初期ヤング率)である. この形の構成方程式を定応力速度の条件下で解くと,σ*をσ/(dσ/dt)1/(n+1)として,ε2はσ* によって決まることがわかる(Appendix U).

ε2 = ε2*)  (18)

(18)式より,載荷速度が変化しても,図13(b)に示すσ*2曲線は同一の曲線を描き,対応する点のε2は常に 等しいことがいえる.これから,ピーク強度を持つ場合には,応力レベルが同じならば永久歪ε2が同じであることがいえる.

上記の考え方が実験結果と調和的であるかどうかを確かめるため,若干の式の展開をおこなう.まず,コンプライアンスは次のようになる.

λ =  ε = (ε1 + ε2)/ σ = 1/k1 + ε2/σ (19)

載荷速度が変化した時,同じ応力レベルでの比較を考えると,ε2は同じであるのでδλ/δσ = -ε2となるので次式を得る.

(δλ/λ)/(δσ/σ)  = - (ε2/ε)   (20)

近似的に-δλ/λは,ヤング率の増加率となるので,(20)式は次のようにも書ける.

(載荷速度が10倍になったときの50%ヤング率の増加率)/(強度の増加率) (21)

データがもっとも豊富で信頼性のある三城目安山岩では、(21)式中の数値は次のようになる.

(載荷速度が10倍になったときの50%ヤング率の増加率)= 0.020

(載荷速度が10倍になったときの一軸圧縮強度の増加率)= 0.062

(応力レベル50%における非弾性歪)= 0.00066

(応力レベル50%における歪)= 0.0025

なお,(応力レベル50%における非弾性歪)は図15のようにもとめた.これらの数値を代入すると(21)式は次のようになる.

(左辺) = 0.02/0.062 = 0.32

(右辺) = 0.00066/0.0025 = 0.27

左辺と右辺は,まずまずの一致を示しており,(18)式に関して述べた考え方と実験結果とが調和的であることがわかる. (21)式中の各数値の中で誤差がもっとも生じ易いのは,応力レベル50%における非弾性歪であろう.図15のようにもとめたのは, 最初の10%における非弾性歪は充分小さく,この部分の傾きがモデルのk1にほぼ等しいと考えたからである. もし,わずかながらでも非弾性歪があればk1より小さな10%割線ヤング率が求まり,その結果,応力レベル50%における 非弾性歪は小さめに見積もられることになる.このように考えれば,(21)式の右辺が左辺より小さくなったことを説明できる.

応力レベル50%における非弾性歪のもう一つのもとめ方は,除荷後の永久歪とほぼ等しいと考えることである.応力レベル50%まで載荷し, その後,除荷する.応力が0に至った時の歪を応力レベル50%における非弾性歪とみなすことにする.この扱いは除荷過程で非弾性歪の回復 が生じなければ良い方法である.そこでこのようにして非弾性歪をもとめると,

(応力レベル50%における非弾性歪)= 0.00032

(右辺) = 0.00032/0.0025 = 0.13

これからわかるように,右辺は左辺の40%位にしかならない.これから類推するに,除荷過程で非弾性歪の回復が生じている可能性が高い.

コンプライアンスの変化を考えた(15)式ではヤング率の載荷速度依存性があらわれなかったのに対して,(17)式の非弾性歪を考えた構成方程式ではあらわれた. しかしながら,ヤング率の載荷速度依存性があらわれるかどうかは,コンプライアンス可変型と非弾性歪を考えた構成方程式の特徴ではなく, λないしεの関数形に依存する.すなわち,(17)式を用いた検討結果でヤング率の載荷速度依存性があらわれたのは,ε = ε1 + ε2の右辺第一項と第二項の載荷速度依存性が異なるためである.(16)式のコンプライアンス可変型構成方程式でも, 右辺に載荷速度依存性が異なる第二項を足せばヤング率の載荷速度依存性があらわれる.

これまで信頼性の高いデータのある三城目安山岩に限って検討してきたが,歪ゲージで測定をおこなった来待砂岩,秋吉大理石,稲田花崗岩,白浜砂岩 についても簡単に考察しておく.表1に,(21)式中の強度の増加率,ヤング率の増加率,応力レベル50%における歪,応力レベル50%における非弾性歪と, 同式の左辺および右辺の値を示す.来待砂岩の強度の増加率は不明であるが,ヤング率の増加率は前に見たように比較的大きかった.しかしながら, 三城目安山岩と比べると非弾性歪は0.0003程度と小さく,よって右辺の値も0.12とかなり小さくなった.この理由を究明するには,追実験が必要である.

残る3岩石の永久歪は負の値となった.まず,秋吉大理石であるがこの岩石の永久歪は-0.00003程度であり,事実上永久歪なしとみなすことが正しいのであろう. これと呼応して,ヤング率の載荷速度依存性も一桁あたり-0.07%と小さく,これも事実上ないとみなすのがよかろう.ただし,前述のように, 歪の絶対値が小さいため測定誤差が紛れ込み易いので,今後,確認のための実験が必要と考える.

稲田花崗岩の場合には,良く知られているように,亀裂の閉鎖によって応力―歪曲線は最初下に凸となり,図14に示した方法に従ってもとめた永久歪は負値となる. また,稲田花崗岩のヤング率の載荷速度依存性も負値であった.よって,(21)式の左辺は-0.46%となり,右辺は-0.37%と近い値となる. 構成方程式dε2/dt = f(ε2n中のf(ε2)は任意の関数であり, ヤング率の載荷速度依存性が負値になる場合にも対応している.花崗岩の場合には,亀裂の閉鎖に時間依存性があり, しかも強度の50%まではこの現象が優勢であるため,このような結果となった可能性がある.Wangら(2000)は,水圧破砕亀裂の閉鎖に際して時間依存性が認められ, 稲田花崗岩の場合にはシミュレーション結果と実験結果とがほぼ一致したと報告している.これは,本研究の検討結果と深く関わる報告と考えている. なお,ここで述べたことが成り立つ岩石や,実験条件については不明であり,今後の検討が必要である.

最後に白浜砂岩であるが,これも,永久歪が負値となっている.これに呼応してヤング率の載荷速度依存性も負値となっている. しかしながら,応力-歪曲線が顕著に下に凸になる理由についてはよくわかっていないので,これ以上の議論をするには追実験が必要である.

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