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5.まとめ

ヤング率の載荷速度依存性は基礎的な現象の一つであるが,これまでの実験結果で明瞭な結論は得られていない.その原因は, 正確な歪の測定が困難なことと,載荷速度依存性の程度と比較して,試験片ごとのばらつきが大きいためと思われる.そこで, 正規化ヤング率E50/E10をもってデータを整理することを試みた.まだまだ,検討段階ではあるが, 今回提案した方法は有望であるとの感触を得た.

三城目安山岩,来待砂岩,秋吉大理石,稲田花崗岩,白浜砂岩,田下凝灰岩と大谷石の7種類の岩石について検討した.この内,三城目安山岩, 来待砂岩,田下凝灰岩と大谷石については,載荷速度が上昇するとヤング率も増加した.

三城目安山岩では,歪速度が10倍になるとヤング率は2 %程度上昇した.構成方程式を交えた検討によれば, ヤング率の載荷速度依存性は次のように説明できることがわかった.強度破壊点以前の領域でもかなりの非弾性歪が生ずるが, これは粘性的なもので時間遅れがある.よって,載荷速度が速いほどこの時間遅れは顕著になるので,弾性歪と非弾性歪の和である歪の中で, 載荷速度が速い時程,非弾性歪の占める割合が小さくなる.その結果,接線ヤング率と割線ヤング率は,載荷速度にともなって大きくなる. 上記の考え方によれば,強度破壊点以前の非弾性歪と,ヤング率の載荷速度依存性との間には密接な関係が成り立つはずである.そこで, 三城目安山岩について検討した結果では,構成方程式より予測される関係がほぼ成り立った.

田下凝灰岩と大谷石では,ヤング率の載荷速度依存性がみられた.また,気乾状態より湿潤状態での依存性が大きかった. 残念ながら,今回は実験をおこなわなかったのでこれ以上のことはわからない.来待砂岩については,載荷速度依存性がみられ, 非弾性歪もかなり大きかった.残念ながら強度の載荷速度依存性が現時点ではわかっていないのでこれ以上のことはわからない.

稲田花崗岩においては,応力-歪曲線の最初の立ち上がり部分が下に凸になる.これは,試験片内部の亀裂が次第に閉鎖していく過程といえる. もし,この亀裂の閉鎖過程が時間依存性をもっており,かつ非弾性歪の増加が比較的小さければ,ヤング率は載荷速度にともなって小さくなるはずである. 実験結果でも実際このような結果がでたが,詳細な検討は今後進める考えである.

秋吉大理石は,非弾性歪とヤング率の載荷速度依存性がともに小さかった.白浜砂岩は,永久歪が負値となり, これに呼応してヤング率の載荷速度依存性も負値となった.両岩石については,今後も検討を続ける予定である.

本研究で得られた重要な結論は下記のとおりである.

1.ヤング率の載荷速度依存性は,低応力レベルにおける非弾性歪(時間依存性)を認めれば説明可能である.もしそうであるならば, この現象は,低応力レベルにおける安定性とも結びついているはずであり,今後詳しく検討する価値がある.

2.載荷速度によりヤング率は増加する場合が多いと報告されてきた.今回の検討でも7岩石中4岩石はそのとおりであった. しかし,稲田花崗岩のようにヤング率が低下する可能性もあることを指摘した.

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