SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)とは


2.鋼繊維

 2.1 製造方法による分類

 2.2 鋼繊維の諸性質およびSFRCへの影響

 2.3 SFRCにおける鋼繊維の分散と配向

 

2.1 製造方法による分類

鋼繊維の一般的な寸法は断面積0.07〜0.5mm、長さ20〜50mmの範囲にあり、 その形状や強度の基本的特性は製造方法に依存する場合が多いので、一般的に製造方法に沿って分類する。

製造方法は大きく分けて、鋼線切断法、薄板せん断法、厚板切削法および溶鋼抽出法の4種類があり、 その概略を図6に示す8)

@鋼線切断法
圧延後引き抜きによって製造した鋼線を所定の長さに連続的に回転カッターで切断する方法である。 この方法で製造された鋼繊維の特徴は、引張強度は高いが、そのままでは付着強度が小さいのでインデント(異形)加工して、 表面に凹凸を付けることで付着強度を向上させている。

A薄板せん断法
厚さ0.3〜0.5mmで鋼繊維の長さに相当する幅にスリットした冷延コイルをせん断する方法や、 コイルの幅だけ金型を連続して並べてせん断する方法などがある。この製造方法による鋼繊維の特徴は、 ばり・捻れ・湾曲等の変形がおこるので、コンクリートとの付着強度を増大させる効果がある。 また、薄板のローラーで凹凸を付けたり、切断刃を工夫することで鋼繊維に波形を形成して付着性能を高めた製品もある。

B厚板切削法
厚板またはスラブを回転するフライス平刃によって切削加工方法である。この方法による製品は、 切削により極めて大きな塑性変形を受けるので軟鋼を原料とした製品でも加工硬化が起こり素材の2倍程度に引張強度が増大する。 また、付着は切削加工によって生ずるねじれや線条効果に期待している。

C溶鋼抽出法
溶鋼の表面に、先端がねじ山状になっているディスクを接するように回転させ、ディスクに接した溶鋼 を瞬間的に凝固させて溶鋼から引き出し、遠心力によりディスクから飛び出す方法である。

以上の方法で製造された代表的な鋼繊維の諸元は、表1に示す。

2.2 鋼繊維の諸性質およびSFRCへの影響

@形状と寸法
SFRCに対して、鋼繊維の形状寸法は主に施工性とコンクリートの補強効果にかかわっている。 短い過ぎるものや太すぎるものは補強性能に劣り、長すぎたり、細すぎるとコンクリート練り混ぜ時にファイバーボールを生じて、 コンクリート中への均等な分散が妨げられたり、折れ曲がったりすると鋼繊維の補強効果も著しく減ることになり、 また、ワーカビリティーも悪くなる。鋼繊維の長さをl、直径(円断面以外は換算直径)をdとすると、 l/dはアスペクト比と呼ばれる。図7では、アスペクト比とSFRCの曲げ荷重の関係を示す。図からわかるように、 アスペクト比が大きくなると強度が大幅に増大する10)。さらに、せん断強度に関しても、 アスペクト比の影響が著しく、この比が大である鋼繊維ほどSFRCのせん断度を高める効果のあることが確認されている11)

A引張強度
SFRCの破壊は、鋼繊維の引き抜きによって生ずるので、鋼繊維はその際に破断しないだけの引張試験強度が 要求される。鋼繊維とコンクリートとの間の付着強度をτとすれば、コンクリートの中において鋼繊維に生ずる 引張応力度σfとの間に、σf=τ・l/dの関係が成立する。一般的に、τ=5〜6MPa、 l/d=60〜80であるから、鋼繊維の引張強度は高くても500MPa程度で十分ということになる。

B弾力性
鋼繊維の弾力性は施工性と補強効果に関係する。すなわち、材質が軟らかくなったものは、 コンクリートの練り混ぜ時に曲がりやすく、また、硬くてもろいものは練り混ぜ中に折損する。このような練り混ぜ中や、 吹き付け時の曲がりや折れは、鋼繊維の補強効果を著しく低下させることになる。したがって、鋼繊維は適度な弾力性を 有することが望まれる。

C付着強度
鋼繊維による補強効果は、σf=τ・l/dの式から見ると、コンクリートに対する付着強度 およびアスペクト比に依存する。しかしアスペクト比を大きくすると、ファイバーボールが形成されやすく、 施工性を悪くさせるので、施工上にアスペクト比の限度がある。このことから、補強効果を増大させるために、 付着強度を高めることは重要である。一般的に、鋼繊維の付着強度を改善する手段としては、鋼繊維の軸線を変形せず、 軸方向に一定のピッチで表面だけ塑性加工(インデント加工)するか、軸線を波形に変形させるか、または、 鋼繊維の端部のみ加工して定着効果を期待するなどの方法がある。

2.3 SFRCにおける鋼繊維の分散と配向

不連続繊維を補強材として用いる複合材料では、マトリックスの中に繊維は一様に分散しているかどうか、 特定方向に配向しているかが材料の性状を大いに左右する。例えば、SFRCの練り混ぜ過程でファイバーボールが 形成された場合には、鋼繊維と鋼繊維の間にモルタルがほとんど入らないため、引張応力に対する抵抗力が極めて弱くなり、 材料全体の引張強度が落ちる。または、鋼繊維は特定の方向に配向してしまうと、異方性が現れる。よって、 マトリックス中の鋼繊維の状態を正確に把握することは重要である。

鋼繊維の分散とは、マトリックス中の鋼繊維の分布状況のことである。鋼繊維の分散度を定量化するために、 図8に示すように試験体のある切断面でn個要素に分割し、各要素中の繊維本数からこの切断面の繊維密度μおよび 繊維密度の変動係数ψを求め、分散係数αを計算する12)

α=exp(−ψ)

ψ=(Σ(xi−μ)/(n−1))0.5/μ

μ=Σxi /n

ただし、nは要素数で、xiは要素i内に含まれる繊維本数である。

鋼繊維の分散に影響を及ぼす主な要因として、三つがあげられる。@鋼繊維の形状寸法、A粗骨材の最大寸法、 また細骨材率(図2図4を参照)、BSFRCの施工方法.SFRCの中で鋼繊維が一様に分散していなければ、 鋼繊維が少ないところで補強効果が弱いことは明らかである。

鋼繊維の配向とは、マトリックス中の鋼繊維が特定方向に傾くことを指す。SFRC中における鋼繊維の配向度を 定量的に表す方法としては、一般的に配向係数が用いられる。配向係数βは、ある一定方向に全ての鋼繊維を投影した時 の投影長の合計と全鋼繊維の長さの合計の比である。例えば、鋼繊維が三次元的にランダム配向している場合、 図9に示すような単位長さの鋼繊維は、その一端を一点に集中させると、他の端の包絡面によって、球面が形成され、 この球面における鋼繊維密度ρ(球面にて単位面積あたりに存在する鋼繊維端の数量)が一定であると仮定すると、 配向係数は0.5となる。

鋼繊維が二次元ランダム配向をしている場合の配向係数βは0.637となる。

実際の試験体からSFRCの配向係数を求める方法は、試験体の切断面の鋼繊維本数から求める方法13)や、 X線写真から求める方法14)などが提案されている。前者では、単位面積あたりの繊維本数を数えた 鋼繊維密度ρと鋼繊維の断面積aを用いて、切断面と直交方向の配向係数βを次のように表している。

β=ρa /V

ただし、VはSFRC中、鋼繊維の容積混入率である。

後者はSFRCから厚さtの試験体を切り出して、X線写真から画像解析装置を用いて、鋼繊維の投影面積aと本数nから 次式によって配向係数を算出するものである。

β=(t/((a/n/d)+t))0.5

ただし、dは鋼繊維の直径である。

鋼繊維の配向は、コンクリートの締固め方法、部材寸法、鋼繊維の長さ、コンクリートの運搬方法などにより 左右される15)

図10は、鋼繊維混入率1.5%の吹き付けSFRCのX線撮影写真である。図中(a)は吹き付け面と平行な方向からの撮影、 (b)は吹き付け面と垂直な方向から撮影したものである。(a)からわかるように、ほとんどの鋼繊維は吹き付け面と ほぼ平行な面内に配向している。吹き付け面内における鋼繊維の配向の状況は(b)よりランダムであることがわかる。 マトリックス中の鋼繊維の配向状況はSFRCの力学的特性に大きな影響を及ぼす。特に、特定方向、或いは特定面に 配向する場合のSFRCは、異方性材料となる。