SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)の一軸圧縮特性


3.強度・変形特性

3.1 強度と弾性定数

全ての試験結果をまとめたものを表1に示し、表2に各条件での平均値を示す。

まず、一軸圧縮強度からみていくことにする。図4に一軸圧縮強度σcと鋼繊維混入率Vfの関係を示す。鋼繊維混入率によって一軸圧縮強度は若干変化しているが、その傾向は明瞭ではなく、どちらかといえば鋼繊維混入率によってあまり変化していないとの見方ができる。同様の傾向は一軸引張強度においてもみられた。鋼繊維の補強効果はクラック(ひび割れ)が生じ、その幅がある程度になってはじめて現れるものと考えて良い。ピーク強度(強度破壊点)までは、圧縮・引張応力下とも試験体に目視できるようなひび割れはなく、したがってピーク強度は鋼繊維混入率にさほど影響されないとの結果が得られたと考える。

試験体aと試験体bの一軸圧縮強度を比較すると、若干ではあるが試験体bの方が一軸圧縮強度が大きくなっている。吹き付けたモルタルは、吹き付け面と平行な弱面を持ち、弱面と垂直に引っ張る試験体bの一軸引張強度は、試験体aのそれより大幅に小さかった。一軸圧縮試験では、試験体の長手方向にクラックが進展し、クラックの密度と長さがある値となるとピーク強度に達すると言える。したがって、弱面が試験体の長手方向に並ぶ試験体aの強度が、わずかではあるが小さくなったものと考えられる。

次に、図5に歪ゲージより求めたヤング率Eと鋼繊維混入率Vfの関係を示す。これより試験体ab試験体ともに鋼繊維混入率によるヤング率の変化が小さいことがわかる。図6にポアソン比νと鋼繊維混入率Vfの関係を示すが、この場合も鋼繊維混入率の増加に伴う変化は小さいといってよいであろう。一軸引張応力下においても、ヤング率とポアソン比は、鋼繊維混入率により変化しなかった。前述のように鋼繊維の効果はクラックの幅がある程度の広さになってはじめて発揮されるものであり、ピーク強度の1/3程度の段階の特性を示すヤング率やポアソン比に対して、鋼繊維の影響が表れないのは妥当な結果と考える。

今回行った実験の範囲では、引張応力下でのヤング率は21〜25MPaであるのに対して、圧縮応力下では18〜23MPaであり、圧縮応力下でのヤング率が若干低下している。この理由は、圧縮、引張ともに図3に示すように載荷直後と強度の30%程度での割線勾配を取ったためである。すなわち強度の高い圧縮応力下では、引張応力下に比べて高い応力での割線勾配から求めたため、非弾性歪が若干生じたためと考える。

今まで図4図5図6を用いて一軸圧縮強度、ヤング率ならびにポアソン比について述べてきた。ここで、歪ゲージの結果をもとに強度破壊点以前での応力と歪の関係について述べることにする。各条件ごとの応力と、歪ゲージから求めた縦歪及び横歪の関係を図7図8に示す。図7は試験体a、図8は試験体bの結果である。

図7(a)は試験体aのプレーンモルタルであり、2本の結果を示している。強度の50%にあたる応力30MPaまで、応力と縦歪とは直線関係となっている。その後、徐々に傾きは緩やかとなり、破壊強度点を迎えている。破壊強度点での非弾性歪は、約0.1%である。一方、横歪は20MPaまでは応力の増加に対して直線的に増加している。その後、40MPaを過ぎると、急激に増大しているのがわかる。体積歪は30MPaまでは応力とほぼ直線的であるが、その後、ダイラタンシが生じている。 図7(b)〜(d)までの試験体aのSFRCは、プレーンモルタルとほぼ同じである。

図8は試験体bの結果である。(a)〜(d)ではさほど変化が見られない。しかし、試験体aの結果と比較すると、強度破壊点付近での縦歪の傾きがゆっくり減少している。強度破壊点での非弾性歪は0.2〜0.4%程度も存在しており、試験体aとかなり傾向が異なっている。

3.2 応力−歪曲線

強度破壊点以降での応力と歪の関係を検討することにする。各条件ごとの、LVDTによって測定した変位より求めた縦歪εと、応力σの関係を図9図10に示す。図9は試験体a、図10は試験体bの結果である。

図9(a)は試験体aのプレーンモルタルであり、2本の結果を示している。強度破壊点以前は、前述した事項と同じである。強度破壊点以降、応力が20MPaまでは歪の増加にしたがい、応力は直線的に減少している。その後、傾きは緩やかとなり、歪3%で残留強度はほとんどなくなっている。

図9(b)〜(d)も試験体aとほぼ同様であり、鋼繊維混入によって、応力−歪特性はさほど変化していない。

図10(a)は、試験体bのプレーンモルタルであり、5本の結果を示している。傾向的には、試験体aの結果とほぼ同様である。

図10(b)は、試験体bの鋼繊維混入率0.5%の応力σ−歪ε曲線である。強度破壊点以降、応力30MPaまで歪の増加に従い、応力は直線的に減少している。プレーンモルタルと異なり、かなり延性的になっていることがわかる。

図10(c)、(d)と鋼繊維混入率が増加するに従い、強度破壊点以降で歪の増加に対する応力の低下は小さくなっている。

今までは、各条件ごとに述べてきたが、これからは各条件での平均値や、平均的な応力−歪曲線によって、鋼繊維混入率や異方性の影響を調べることにする。

図11(a)に試験体aの応力σ−歪ε曲線を示す。鋼繊維混入率に拘わらず、40MPaまでほぼ応力と歪は直線的に増加しており、それ以降徐々に勾配が小さくなり約55MPaでピーク強度となる。ピーク強度を越えた後、歪の増加に従い応力は直線的に減少するが、応力が20MPaより小さくなると徐々に傾きがなだらかとなっていく。以上の傾向は鋼繊維混入率にほとんどよらず、各混入率の応力−歪曲線はほぼ重なる。試験体aの場合には、鋼繊維は試験体の長手方向すなわち載荷方向に配向している。今回おこなった混入率1.5%以下の範囲では、載荷方向に配向した鋼繊維が荷重を支える効果は極めて小さく、試験体aの応力―歪曲線は鋼繊維のあるなしによらないとの結果が得られたといえる。

図11(b)に試験体bの応力σ−歪ε曲線を示す。ピーク強度以前の領域の応力―歪曲線は、試験体aと同様に応力40MPaまでほぼ直線である。その後の応力―歪曲線は、鋼繊維混入率により変わる。まず、図12に示すように試験体bでは、鋼繊維混入率が増すと、ピーク強度をとる時の歪が増す。図12には試験体aにおける結果も示したが、この場合には、鋼繊維混入率によりピーク強度を取る時の歪はほとんど変化しない。図11(b)に戻って、ピーク強度以降の応力−歪曲線を見ると、試験体aと異なり、試験体bの応力―歪曲線は鋼繊維混入率が増すに従い延性的な特性を示すようになることがわかる。

圧縮応力下での破壊の進行は載荷方向に伸びるクラックと密接に結びついている。試験体bのように鋼繊維がクラックと垂直に配向していれば、クラックの幅の拡大が抑制され、クラック長さの進展も抑制される。したがって、試験体bにおいて、鋼繊維の影響が顕著に表れたのは、妥当な結果といえよう。また、鋼繊維の影響が顕著であったのはピーク強度を過ぎて、クラックの幅がかなり大きくなってからであった。これは、鋼繊維に働く力は引き抜き抵抗に基づく受動的なものであり、クラック幅がある程度広がらないと効果を発揮しないためといえる。

異方性を考慮して、SFRCの圧縮試験を行った結果、一軸引張試験と同様に、1方向には鋼繊維の効果が現れたが、もう1方向にはさほど特性の改善は見られなかった。また、鋼繊維の混入により延性的に特性の改善がなされた方向が圧縮応力下と引張応力下では逆となっている。すなわち、引張応力が吹き付け面と平行な方向であるa方向、圧縮応力が吹き付け面と垂直なb方向である。これについては破壊機構と関係するため、6節で述べることにする。以上の内容をまとめた結果は表3表4に示した。