SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)の一軸圧縮特性


4.残留強度と破壊に要するエネルギー

4.1 残留強度の実験式

鋼繊維の混入による残留強度の変化を検討することにする。図13に残留強度σREと鋼繊維混入率Vの関係を示す。図13(a)は、試験体aの場合であり、今まで述べたように残留強度はさほど改善していない。一方、図13(b)に示した試験体bの場合には、残留強度は鋼繊維混入率に比例して増加することがわかる。この傾向は、引張試験の場合と同じである。例えば歪が2%の場合には、鋼繊維が1%増加すると、残留強度は20MPa程度増加している。図に示した結果をまとめると次の実験式が得られる。

σRE(V)=σRE(0)+b(ε)×V………(1)

ただし、V[%]は鋼繊維混入率、σRE(V)[MPa]は鋼繊維混入率Vの時の残留強度である。比例定数b(ε)[MPa/%]は歪の関数で、図14に示すように変化し、ε[%]が2%以下では約20MPa/%であり、ε[%]が2%以上では次式で近似できる。

b(ε)=0.8(7−ε)………………(2)

4.2 破壊に要するエネルギー

鋼繊維で補強したモルタルは、前述のように残留強度が大幅に増加し延性が増すので、破壊に要するエネルギーも増加する。そこで歪εに対する単位体積当たりに供給されたエネルギーE図15に示す。図では歪が1%より10%までの値を示した。歪1%以下で強度は最大となるので、図15に示したのは全てピーク強度を過ぎた後の値である。また、試験体aでは歪が3%までしか表示していないが、これは歪がこれ以上になると残留強度がほとんど失われるためである。ほかの試験体の場合も、途中で打ち切ったのは同様の理由である。あらかじめ予測できることであるが、試験体aの場合には単位体積当たりに供給されたエネルギは鋼繊維混入量の影響を受けず、また値そのものも比較的小さい。他方、試験体bの場合には鋼繊維の混入率が増加すると、単位体積当たりに供給されたエネルギーが大幅に上昇する。

試験体bについて、単位体積当たりに供給されたエネルギーEと鋼繊維混入率Vの関係を図16に示す。これよりわかるように、歪1%のときには鋼繊維のあるなしにより値はあまり変化していないのに対して、歪が大きくなるにつれ鋼繊維の影響があらわれてくる。歪8%の場合をみると、鋼繊維のない場合の値が0.65MPaであるのに対して、鋼繊維が1.5%では1.5MPaと2倍以上となっている。図11(b)でわかったように、歪8%での値は、試験体がほとんど壊れてしまい、もうこれ以上のエネルギーを吸収できなくなった時の値と見なせる。そこで歪8%の時の値を破壊に要するエネルギーE(V)[MPa]と称することにする。この破壊に要するエネルギーは次式で近似できる。

(V)=0.65+0.57V………(3)

SFRCやコンクリートにおいても、歪が0.75%に至るまでの試験体に供給されたエネルギを(歪が0.75%の時の縦変位)×(試験体断面積)で除した値を圧縮タフネス係数と称して、特性を示す重要な指標の一つとしている6)。これも一つの考え方であろうが、歪が小さ過ぎて鋼繊維の補強効果が顕著にあらわれない。著者は、完全に破壊するまでに要するエネルギーE(V)で特性を評価するほうが望ましいと考える。

鋼繊維の補強効果を表すために、プレーンモルタルに比べて鋼繊維混入率の影響による破壊に要するエネルギーEの増加倍率E図17に示す。図からわかるように、鋼繊維混入率が1%増加すると、破壊に要するエネルギーが約2倍となる。