SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)の一軸圧縮特性


6.圧縮破壊過程の考察

試験体の写真を撮影しつつ試験を実施したので、写真を観察しながらSFRCの圧縮破壊過程について考察してみることにする。

まず、見通しをよくするため破壊後の試験体を見てみる。図21に歪3%まで試験した試験体の写真である。(a)は試験体aであり鋼繊維は縦方向(試験体の長手方向)に配向している。鋼繊維混入量が増すにつれてある程度外形を保つようになるが、いずれも残留強度はほとんどなく手で強く押すと容易に壊れる。いずれの場合も明瞭なせん断面が認められ、破壊様式は同じである。(b)は試験体bである。鋼繊維が含まれていない左端の試験体はすでにばらばらに壊れた状況である。一方、鋼繊維が含まれると外形を保っているだけでなくかなりの強度が残っている。試験体bでは、鋼繊維が横方向に配向しており、図22の概念図に示すように縦割れの進展を抑制し、その結果巨視的なせん断面ができることを遅らせているといえる。横方向に配向した鋼繊維は、試験体側面に加わる周圧と類似した効果をもたらすものと考えられる。

破壊が徐々に進行する様子を見てみる。図23に試験体aの写真を示す。最上段は歪が1%で既にピーク強度を越えた場合であるが、混入率によらず明瞭なクラックが観察できる。歪が2%となると、いずれの混入率でも側面より破片が剥離する。さらに歪が3%、4%と大きくなると、巨視的なクラックがますます発達し、より大きな破片が剥離して落ちるようになる。試験体aの場合、混入率による差異は少ないといえる。

試験体bの結果を図24に示す。混入率0%の試験体では、歪が1%になると明瞭なクラックが観察できる。その後の破壊の進行は、試験体aで混入率0%の場合と比較してわずかながら遅れ気味であるが大差はない。しかしながら、鋼繊維が混入している試験体bの挙動は、試験体aと比べて以下の点で異なり、その程度は混入率が大きいほど顕著であった。@歪が大きくなると試験体側面縦方向のクラックが観察されるようになるが、クラックの進展は徐々であり直ちに巨視的なクラックとなることはない。A初期にできた縦方向のクラックの進展はある程度の長さになると停滞するが、やがて新たな縦方向のクラックが幾つか観察できるようになる。B歪が数%になっても、試験体外形はある程度保たれ、かなりの負荷能力(残留強度)が残る。Cさらに歪が大きくなると巨視的なクラックができるがその形状は極めて複雑である。また、巨視的なクラックが試験体の端面まで達しても、鋼繊維によって支えられるため破片はなかなか落ちない。

図23図24は歪に注目して試験体の破壊の進行を整理した。引き続いて、残留応力に注目して試験体の破壊を整理した結果を図25図26に示す。図25は試験体aの場合であるが、応力−歪曲線が混入率により変わらないことから予測できるように、同じ残留応力での試験体の破壊状況はほとんど同じであるので、ここでは、試験体bについてのみ見ていくことにする。

図26は試験体bの場合である。残留応力が同じときを比べると、混入率が大きい方が側面のクラックは多い。鋼繊維混入率が大きい場合、初期にできたクラックは、長さがある程度に達すると鋼繊維の働きにより進展しなくなる。しかし、新たなクラックは順次増え続ける。新たなクラックもある程度の長さに達すると成長しなくなる。こうして、混入量が大きいと数多くのクラックができるが、いずれも試験体を横断する破断面にはならず、クラックがかなり多数になるまで大きな負荷能力が残る。