SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)の曲げ特性


2.実験結果        主な記号

2.1 一軸引張試験結果と一軸圧縮試験結果のまとめ

吹き付けたSFRC試験体に対して、一軸引張試験、一軸圧縮試験をおこなった結果を述べた。用いたSFRCは、一軸引張試験、一軸圧縮試験、曲げ試験とも共通である。曲げ試験結果の検討に必要な事項に絞って、ここに再び一軸引張試験結果と一軸圧縮試験結果をまとめることにする。

法面補強工事現場にて、SFRCを木製のパネルに吹き付け、厚さ約20cmで縦横約80×120cmのブロックを作成した。このブロックより吹き付け面と平行および垂直にボーリングして、一軸引張試験用は直径5cm、高さ10cm、一軸圧縮試験用は直径3cm、高さ6cmの試験体を作成した。鋼繊維は吹き付け面と平行に配向し、図1に示すように試験体aでは鋼繊維と平行に、試験体bでは鋼繊維と直角に載荷される。使用した鋼繊維は、鋼線切断法で製造された後、表面に滑り止めの圧痕をつけたものである。鋼繊維の全長は25mm、断面積0.3mm、質量60mgである。モルタル中の鋼繊維の占める容積の割合(鋼繊維混入率)が、1.5%までの場合について調べた。なお、モルタルの配合は、セメント:細骨材=1:3で、水セメント比は0.6とした。

一軸引張試験は容量500kNのサーボ試験機を用いて、歪速度10−6/sでおこなった。一軸圧縮試験はMTS社製の容量1500kNのサーボ試験機を用いて、歪速度10−5/sでおこなった。試験室の温度は20±3℃、湿度は70±15%であり、試験体は作成後この試験室で保管した。試験時のモルタルの材令は、7〜10ヶ月(引張)と18〜19ヶ月(圧縮)である。

試験体はaとbの2種類、鋼繊維混入率は0%、0.5%、1.0%、1.5%の4種類のあわせて8条件下で試験をおこなった。一軸引張強度と一軸圧縮強度を表1に示す。一軸引張試験と一軸圧縮試験の異方性をまとめた表2を参照しつつ試験結果を箇条書きにすると次のようになる。

1)ピーク強度までの特性:鋼繊維の有無にあまり左右されない。ヤング率、ポアソン比、ピーク強度は鋼繊維を混入しても変化しなかった。

 2)異方性:吹き付けたSFRCでは、吹き付け面と平行に鋼繊維が配向する。

 3)ピーク強度以降の特性(引張):鋼繊維の配向方向に引張った時、鋼繊維の効果が顕著に表れ、残留強度が大いに増す。

4)ピーク強度以降の特性(圧縮):鋼繊維の配向方向に垂直な圧縮荷重に対して効果が表れ、残留強度がかなり増す。

5)残留強度:鋼繊維の効果が表れる方向に載荷した場合、残留強度は鋼繊維混入率にほぼ比例する。


2.2 曲げ特性

4点曲げ試験は、「鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法」9)に従っておこなった。

一軸引張試験、一軸圧縮試験の場合と同じ場所で、同じ日に、SFRCを木製のパネルに吹き付けてブロックを作成した。ブロックより断面10cm×10cmで長さ40cmの試験体を切り出し、万能試験機を使用して4点曲げ試験をおこなった。試験体上面の荷重点間距離は10cmで、下面の支点間距離(スパン)は30cmとした。また、試験体の上面と下面が、吹き付け面と平行となるようにした。したがって、図1に示すように鋼繊維は試験体の長手方向に配向しており、一軸引張試験結果から推測すると、試験体長手方向の引張特性は鋼繊維の影響を受けて延性を増しているはずである。なお、同一条件で3回の試験をおこなった。また、試験日の材令は28日であった。

荷重Pとスパン間中央たわみvとの関係を図2に、曲げ強度の平均値を表1に示す。曲げ試験において引張応力の作用する方向と繊維の配向方向は一致しているので、表1の試験体aと同じ上段に曲げ強度を記した。表中の曲げ強度は次式で計算した。

σ=Pmax L/(b h)  (1)

maxはピーク荷重、Lはスパン長(30cm)である。

鋼繊維が含まれていない場合の荷重−たわみ曲線はほぼ直線となり引張強度に達すると急激に破壊した。図2の一点鎖線は、一軸引張試験(試験体a)で求めたヤング率E=24.5GPaを、弾性論より得られる次式に代入して計算したものである。

v=23P L/(1296 E I ) (2)

ただし、I=bh/12は断面2次モーメントである。これをみると破壊に至るまでの荷重ーたわみ曲線は、理論式とほぼ一致していることがわかる。

表1をみると、鋼繊維混入率が0%と0.5%の曲げ強度はほぼ等しいが、図2の荷重−たわみ曲線はおおいに異なる。鋼繊維混入率0%ではたわみ0.03mm程度で破壊して急激に負荷能力が低下するが、0.5%ではたわみが2mmに達してもかなりの残留強度が残る。

鋼繊維混入率が1.0%となると曲げ強度が鋼繊維を混入しない場合の1.5倍に、さらに混入率が1.5%になると曲げ強度が2倍になる。荷重ーたわみ曲線も次第に延性的となり、ピーク強度をとる時のたわみが大きくなることが図2よりわかる。

さて、前節で述べたように、一軸引張試験と一軸圧縮試験における残留強度は鋼繊維混入率にほぼ比例する。他方、曲げ強度は鋼繊維混入率が0.5%では変わらず、混入量が1.0%と1.5%では顕著に増大した。引張、圧縮、曲げの3種の試験結果を合理的に結びつけることを一つの目標にして、次節以下で理論的な検討をおこなうことにする。