SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)の曲げ特性


3.基礎式        主な記号

3.1 基礎仮定

高さhで幅bの長方形断面のはりを考えることにする。はりが曲げられて下面より長さaの亀裂が生じた時を図3に示す。

ここで、3つの仮定をおくことにする。

(仮定1)亀裂の入っていない部分は線形弾性体で、亀裂先端と接する部分の応力は一軸引張強度σに等しい(図4(a)参照)。

(仮定2)亀裂先端部の応力は残留強度の最大値σtrと等しい(図4(a)参照)。

(仮定3)残留強度は亀裂開口幅の増大にともなって線形に低下し、dで0となる(図4(b)参照)。

SFRCの一軸引張試験で得られた応力―歪曲線と応力―変位曲線の例を図5(a)と(b)に示す。図5(a)からわかるように、一軸引張強度に達するまでの応力―歪曲線はほぼ直線で線形弾性体とみなせる。そこで仮定1を設けた。

一軸引張強度に達するまでは、マトリックスであるモルタルが大部分の応力を負担する。一軸引張強度に達した直後、マクロな亀裂(破断面)が試験体を横切って生じ、これに伴って応力はσより急激に低下しσtrとなる。そこで仮定2を設けた。

一軸引張強度を越えて試験体を横断する亀裂ができた後の試験体の伸びは、亀裂開口幅(ひび割れ幅)の増大と一致する。残留強度は亀裂開口幅が広がると順次低下していくが、簡単のため仮定3を設け、図4(b)のようにこれを直線で近似することにした。


3.2 モーメント

亀裂部分における応力を考える。なお、以下の議論では引張応力を正とする。図3に示した亀裂開き角をθとすると、亀裂開口幅は(z−0.5h+a)θとなる。図4(b)のように残留強度が低下するときσ(z)は次式で与えられる。

σ(z)=(1−(z−0.5h+a)θ/d)σtr) (3)

亀裂が未だ入っていない部分(リガメント)の応力について考える。はり上面で圧縮応力は最大値となるが、これをσcmax(正値)とすればσ(z)は次式で与えられる。

σ(z)=(z+0.5h)σ/(h−a)+(z−0.5h+a)σcmax/(h−a) (4)

はりに加わる軸力Nが0のときを考えることにすると、次式が成り立つ。

N=b・(σ(z)を−h/2からh/2まで積分)=0  (5)

(3)式と(4)式を、(5)式に代入して整理すると次式を得る。

2N/(hbσ)=(1−α)(1−σcmax/σ)+(2−β)rα=0 (6)

また、モーメントMは次式より計算できる。

M=b・(zσ(z)を−h/2からh/2まで積分) (7)

(3)式と(4)式を代入して(7)式を積分すると次式を得る。

6M/(hbσ)=0.5(1+2α)(1−α)(1+σcmax/σ)−3(1−r)α(1−α)−0.5rα(3−2α)β (8)

(8)式中のσcmaxを(6)式を用いて消去し、整理すると次式を得る。

1≧βで、

=(1−α)+α(4−α)r−2αβr (9)

添え字の*は無次元化した値であることを示す。弾性はり下端の応力が一軸引張強度に達した時のモーメントMceにて規格化したモーメントをM*とした。Mceは、残留強度が全く期待できない時の曲げモーメントの最大値ともいえる。α、βは無次元化した亀裂長とひび割れ幅であり、rは無次元化した最大残留強度である。

(9)式右辺は3項よりなる。第1項は、亀裂の入っていない部分の弾性に基づくモーメントである。第2項と第3項は、亀裂部分で発生するモーメントである。この内、第2項は残留強度が一定値σtrとしたときのモーメントである。実際は亀裂開口幅の増加に伴い残留強度が低下する。第3項は、残留強度の低下に伴うモーメントの減少をあらわす。