SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)の曲げ特性


4.最大モーメント        主な記号
4.1 計算法

前の節で導いた基礎式を使用して、はりの支え得る最大モーメントについて検討してみる。

傾向を把握するためβ=0とし、無次元化亀裂長αと、無次元化モーメントMの関係を描いたのが図6である。図からも傾向がうかがえるが、(9)式を解析的に検討すると、無次元化最大残留強度rが0〜1 /(3−2β)の場合には、亀裂長α=0でのMが最大であることがわかる。rが大きい場合には、αとともにMは大きくなり、α=1で最大となる。例えば、rが1の場合には、Mはαに比例して増加し、α=1でM=3となる。

図6はβ=0のときであるが、βを0から0.2まで0.05刻みに変えた時のM*とαの計算結果を図7に示す。予測される通り、βが大きくなるとMが低下する。

図4(a)に示した応力分布からわかるように、αが1に近づくとはり上面での圧縮応力σcmaxが急増する。そこで、r>1/(3−2β)では、σcmaxが一軸圧縮強度σに達した時に、モーメントも最大となると考える(仮定4)。αがどれほど1に近づくとσcmax=σとなるかを評価するのに(6)式を使う。(6)式でαをモーメント最大の時の値αに置き換え、σcmaxをσとすると次式となる。

1−α+2rα+(α−1)σ/σ−αβr=0

さらに、σ/σをB(ぜい性度)として整理すると次式を得る。

α=(B−1)/(B−1+2r−βr) (10)

βを0として、(10)式より計算したα図8に示す。rが大きい程、またBが小さい程、αが小さくなることがわかる。

鋼繊維の配向方向に載荷した場合のモルタルのぜい性度は約13であった。そこで、B=13とし、βを0より0.2まで0.05刻みに変えたときの計算結果を図9に示す。予め予測できるように、βが大きくなるとαは増加するが、増加の程度は小さいことがわかる。

従来の報告によれば、SFRCのはりが最大モーメントに達するときのαは0.7〜1.0である9、10)。B=13でβ=0の時、αはr=0で1.0、r=1.0で0.86となる。図8図9に示した計算結果は、従来の知見と矛盾していない。

β=0として、(10)式より計算したαを(9)式に代入して最大曲げモーメントMを計算した結果を図5.10に示す。図中の8本の曲線は、ぜい性度を2より16まで2ずつ増加させて描いたものである。ぜい性度が小さい間は、ぜい性度の増加に伴ってMが増加するが、ぜい性度が8以上では変化が小さいことがわかる。

図11は、一軸引張試験と一軸圧縮試験の結果より求めたぜい性度B=13の場合について、図10と同様にMとrの関係を描いたものである。βは0より0.2まで0.05刻みに変えた。


4.2 曲げ試験結果との比較

図11の計算結果と実験結果を比較するには、Mceを計算するのに必要なσ、h、bの他、rとβの値が必要である。これらの値のうち、はりの高さhとはりの幅bは、各試験体の実測値を用いればよい。σとしては、鋼繊維混入率0.0%の時の曲げ強度を採用する。σとして一軸引張強度を採用する方が望ましいが、前述のように曲げ試験は材令28日、一軸引張試験は材令7〜10ヶ月と試験実施時の材令の差がかなりあったので、やむを得ずσtとして曲げ強度を採用した。また、全データを整理したところ、鋼繊維混入率0%、0.5%、1.0%、1.5%におけるrの平均値は、0.21、0.43、0.66、0.82であった。

βはCmod/dであるので、ピーク強度における亀裂開口幅Cmod_pとdを知る必要がある。dについては、図5(b)に例を示した一軸引張試験における応力と変位(ひび割れ幅)曲線を全データについて調べたところ、鋼繊維混入率0.5%、1.0%、1.5%における値は、1mm、2mm、3mmであった。図5(b)に、混入率1.5%でd=3mmとした場合を参考までに破線で示した。Cmodについては、たわみvとの間に次の近似式の成り立つことが知られている9)

v=23P L/(1296 E I ) +LCmod/4h    (11)

(11)式第1項は図2で一点鎖線で示した値である。この1点鎖線からピークをとる点までの横軸に沿った値をΔvとすると、

mod_p=4hΔv/L  (12)

となる。(12)式のCmod_pはピーク強度をとる時の亀裂開口変位である。この式を利用して、鋼繊維混入率0.5%、1.0%と1.5%の場合のCmod_pを求めると、0.15mm、0.3mmと0.45mmとなる。

以上で検討した、r、d、Cmod_pと計算したβp=Cmod_p/dの値を表3に示す。

図11に、○にて実験結果(平均値)を示した。計算結果では、rの小さい間のMp*はほぼ1である。実験結果でも、鋼繊維混入率が0.0%(r=0.21)と0.5%(r=0.43)のとき、Mがほぼ1となった。図2によれば、鋼繊維混入率がわずか0.5%でもピーク強度以降の延性はおおいに増し、用途によっては大きな効果を発揮すると考えられるが、曲げ強度は増加しない。

計算結果では、rが0.4を越えると急激にMが増加する。実験結果でも、鋼繊維混入率が1.0%(r=0.66)と1.5%(r=0.82)では、曲げモーメントのピーク値Mが大きくなった。図11には、βを0から0.2まで0.05刻みに変えたときの曲線が描かれている。この内、今回の実験結果に対応するβ=0.15の曲線を他より太い線で描いた。鋼繊維混入率1.0%の時の実験値Mは太線よりやや下に位置するが、1.5%の時の実験値はほぼ太線と一致する。