SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)の耐久性


4.海岸での暴露試験

4.1 暴露試験の背景

コンクリートの耐久性に関する多くの研究は、海洋環境での暴露試験を通じて行う。その理由は、海洋環境におけるコンクリート構造物の劣化速度が速いからである。普通の環境下では、コンクリート内部への中性化はそれほど進まず、SFRCでは深部まで鋼繊維の腐食は進行しないなどのことが知られている。しかし、海洋環境条件、特に海岸飛沫帯では、海水・海水滴・海塩粒子などに豊かな塩分が含まれているので、塩化物イオンはコンクリート中に拡散することになる。その塩化物イオンの含有量は時間の経過とともに増大することで、鋼材の近傍での濃度がある程度になると、塩化物イオンは鋼材表面の不動体被膜を破壊し、さらに金属イオンの水和反応を助長し、鋼材の腐食が発生し始める。錆は膨張性を有するため、その蓄積によって内圧が増大し、コンクリートのひび割れを発生させる。いったんひび割れが発生すると、塩化物イオンがコンクリート中への浸透する速度は大幅に増大し、さらに大きなひび割れを引き起こして、最終的にコンクリート構造物は耐久性を失う。このように、コンクリート中の塩化物イオンによって鋼材腐食が進行し、コンクリート構造物が劣化する現象が塩害と呼ばれる10)。よって、海洋環境におけるコンクリート構造物は、中性化の脅威に及ぼされていると共に、塩害からの損害も受けているので、腐食問題に対して、一般的な陸上構造物以上の配慮が必要となる。

海洋環境下におけるコンクリートの耐久性に関する長期的かつ系統的な試験は、1936年に開始されたノルウェイのトロンハイム湾におけるノルウェイ工科大学によるもの11)、米国メイン州トリート島における陸軍工兵隊によるもの12)などが有名である。運輸省港湾技術研究所は、1970年に日本国の平均的な気象条件と思われる久里浜湾(神奈川県)において、各種のコンクリート試験体の暴露試験を開始し、これまでセメントや練り混ぜ水の種類が長期的なコンクリートの強度特性、化学組成、鉄筋の腐食特性などに及ぼす影響に関する調査継続して行ってきた13)

以上のような数十年間の長期間な暴露試験は、いずれも鉄筋コンクリートを対象とした研究である。SFRCに関しては、長くとも数年間から十数年間のいくつかの暴露試験報告がある。建設省土木研究所と鋼管杭協会は、1975年2月に東京湾・千葉港で、鋼管の外面にSFRC打設したもの(鋼繊維混入率1.5%)と吹き付けたもの(鋼繊維混入率2.0%)をそれぞれ大気部、飛沫帯、干満帯および海中部に暴露させて、それ以降、外観の調査と1986年9月の撤去時に12年間経過したSFRCの中性化、塩分濃度及び鋼繊維の腐食量を調査した14)。伊豆半島東海岸・伊豆海洋公園内で常時飛沫を浴びる場所に、1979年6月〜1982年6月の3年間に鋼繊維混入率2%のSFRCを暴露試験を行って、暴露後のSFRCの曲げ強度および鋼繊維の腐食状況、SFRC内部の中性化、塩分量などを調査した報告もある(文献同上)。これ以外も、高強度コンクリートを使用した海岸で3年間暴露試験、海水中で4年半間浸漬試験を行った報告がある(文献同上)。いずれの報告でも共通点としては、暴露試験体の表面では、かなり錆が発生していたが、内部では(表面から1mm以上の部分)ほとんど錆の発生は認められなかった。中性化された部分、塩分量高くなった部分もごく表面しかなかった。強度については、圧縮強度、曲げ強度とも暴露を経過して3年間、強度の増加が続けているなどの結果となった。

SFRCはひび割れに優れた拘束性を持ち、しかも内部の鋼繊維は不連続であり(不連続な導電体が分散しているので腐食電流の流束が妨げられる。表層に露出している鋼繊維が腐食しはじめても、腐食はその鋼繊維に限定され、さらに腐食電流による内部への鋼繊維の腐食が伝搬する速度が極めて遅くなる)、鋼繊維の断面積が小さい(鉄筋腐食時のような酸化鉄の生成による膨張圧が小さいため、大きなひび割れを形成しにくい)などの特徴から、鉄筋コンクリートより、SFRCの方が、海洋環境腐食に対する抵抗性が大きいとの見解がある15)。しかしこの見解は、ごく一部の研究から得られたものであり、実証的な実験は少ない。そこで、SFRCの耐久性に関するひび割れ、力学特性などの経時変化・環境影響の実証データを取得するために、本研究は1996年3月から、千葉県勝浦市鵜原町の外房で太平洋に面した海岸線での鵜原海岸護岸復旧工事と並行してSFRCの暴露試験を行うことにした。試験の内容としては、@鵜原海岸護岸斜面にプレーンモルタルで吹き付けた法面(以下プレーン法面と呼ぶ)、鋼繊維補強モルタルで吹き付けた法面(以下鋼繊維法面と呼ぶ)及びステンレス繊維補強モルタルで吹き付けた法面(以下ステンレス法面と呼ぶ)の3種類の法面(いずれも同時に新しく吹き付け)について、ひび割れの経時変化を観察、対比する。Aプレーンモルタル、鋼繊維補強モルタル及びステンレス繊維補強モルタルの試験体を海岸で腐食させた場合(海岸暴露)と室内で放置した場合(室内放置)で、時間経過に伴う力学的特性の変化を調べる。すなわち、一軸圧縮強度・残留強度、ピーク強度点での歪、ヤング率・ポアソン比などの力学特性及び比重の経時変化を調べる。

4.2 暴露環境と吹き付け法面

暴露試験の場所は、太平洋に面した海岸線で周りには道路も工場なども無く、平時閉鎖中なので、人為な乱れを受けない。図21に試験場の周辺の写真を示す。図21(a)は試験場前方の海で、図21(b)は法面及び設置した暴露試験体の様子である。試験場は普段海水と10数メートルに離れて、満潮時でも暴露試験体を放置するステージは水面より1メートル上の位置である。台風のような大波が来ない限り、直接海水に浸されることはない。

吹き付ける法面は、図22に示すような長さ約30m、高さ9.5m、面積約270mの海岸護岸斜面である。吹き付け施工は、風化した石積みの目地(図23)の上にロックボルト、せん断ボルト及び水抜きパイプを設置した後、ポンプ式で左側端(図22を参照)から水平方向に9mまでプレーンモルタルを、9m〜22mの13m幅の範囲内にステンレス補強モルタルを、22mから右側端までの8m幅の間に鋼繊維補強モルタルを、いずれも約10cmの厚さで吹き付けた。図24は、吹き付け時の作業の様子である。モルタルの配合は水セメント比60%、細骨材率100%で、セメント質量の1%の減水剤(FT80)と7%の急結剤(QP55)を使用した。鋼繊維法面とステンレス法面に使用した補強繊維は、長さ30mmの日鉄建材工業のニポレックス鋼繊維(断面形状、三日月型)と長さ30mmの日本冶金工業のRC−DBステンレスファイバー(両端加工で、ドッグボーン型)で、いずれも1%の混入率であった。吹き付け工期は、1996年2月28日〜3月1日の3日間であった。法面の吹き付け施工状況は表9に、吹き付け材料の配合は表10に示す。

4.3 法面ひび割れの経年変化

法面を吹き付け完了後2.5ヶ月、1年3ヶ月、2年2ヶ月、計3回の法面ひび割れ状況の調査を行った。ここでは、時間順に調査結果を述べることにする。結果のまとめを、表11に示す。

1996年5月10日(暴露経過2.5ヶ月):

調査は、目視で法面の外観状況とステージからの上方2mの範囲内に関して、ひび割れ発生の有無に注目した。プレーン法面には、数個所に長さ約1〜3m、幅約0.1〜0.5mmのひび割れが既に発生していた。鉛直方向のひび割れもあったが、水平方向が卓越していた。これは静岡法面と同じように、吹き付け作業が上から下へ垂直移動したこと(図24)による結果と考える(3.2を参照)。ひび割れの発生個所では、法面の裏から湧水の跡が顕著であった(図25)。ステンレス法面と鋼繊維法面では、肉眼で分別できるひび割れが見つからなかった。しかし、ステンレス法面の外観では図26に示すように、ほぼまん中から左右両側の色が違っていた。左辺は水色、右辺は暗茶色であったことより、モルタル部の配合が異なっていたものと考えられる。初期ひび割れの発生時期について、前節で述べた静岡の法面と似ており、数ヶ月でひび割れが発生しているのに対し、鋼繊維およびステンレス法面にひび割れの発生がなかった。

1997年5月20日〜21日(暴露経過約1年3ヶ月):

暴露試験体を入れたステンレス製容器とステージを固定していた鋼製針金はかなり腐食していた。その様子を図27(a)に示す。ステンレスと接触していたため、腐食が激しくなったものと考えられる。また、法面吹き付け時に跳ね返りによって、海岸に落ちていた鋼繊維とステンレス繊維も回収し、図27(b)と(c)に示した。鋼繊維の表面では腐食がかなり進行しており、ステンレスも斑点状に茶色になっており、表面はわずかに腐食していた。さて、前回の調査から1年経過したプレーン法面では、ひび割れが全面的に発生していた。1年前と比べて、ひび割れの数は倍以上に増大し、ひび割れ幅もかなり大きくなった。幅1.0mm以上のひび割れが珍しくなく、最大2mmの個所もあった。図28に示すように、ひび割れの形状は一字型(水平方向)とT字型である。T字型になる鉛直方向のひび割れは、水平方向より幅は遙かに小さい、一般0.2mm程度であった。ステンレス法面では、二つのブロックの状況は全く異なるため、図23に示すように、法面に面して左辺をステンレスA、右辺をステンレスBに区別することにする。 ステンレスAでは、一個所だけでT字型のひび割れを見つけたが、その幅は極細で(0.05mm以下)、肉眼でも認識しにくいため、写真では亀裂が全く判読できない状況であった。 ステンレスBでは、多数の個所に図29に示すようなT字型のひび割れが発生した。幅は、0.1〜0.5mm位程度で、最大0.8mmのところもあった。ステンレスAに比べて、ひび割れの発生は顕著的であった。 鋼繊維法面では、ステンレスAと同じ密度の細いひび割れが見られた。幅は0.05mm以下のものが多く、最大でも0.2mmであった。 まとめると、プレーン法面、ステンレスB法面、ステンレスA法面と鋼繊維法面の順にひび割れの数、幅ともに減少傾向が存在した。

1998年5月6日(暴露経過約2年2ヶ月):

全ての法面で、明瞭なひび割れの発生が認められた。ひび割れの発生頻度を定量的に示すために、各々の法面内に、ステージより上方1.25〜1.75m2の範囲内でひび割れの数量を測定した。測定方法は、まずその範囲内のひび割れ全長を測って、単位面積(1m2)あたりのひび割れの総長をひび割れ密度M(cm/m)として求めた。それからの測定区域に水平と鉛直方向の2方向に25cm間隔で、水平方向に5本、鉛直方向に6〜8本のスキャンラインを引いて、スキャンラインとひび割れの間隔を計測して、平均ひび割れ間隔d(cm)を求めた。 プレーン法面では、長さ1.25m、高さ1mの区域に関してひび割れ状況を観察した。外観としては、図30(a)に示すように、ひび割れの数が1年前に比べてさらに増えており、全体に網状になっていた。なお、図中の白線は写真で確認できるよう、ひび割れに沿って引いたチョークの跡である。ひび割れの最大幅の増大は認められなかったが(前期と同じ程度で最大約2mm)、図30(b)に示すような1.0〜2.0mmの幅の大きなひび割れが多くなっていた。また、法面の裏から大量の湧水がひび割れを通して流出していた。また、ひび割れ密度はM=950cm/m2であった。この値は、静岡のプレーン法面で吹き付けてから3年6ヶ月の時点でのM=290cm/mに比べ、3倍以上大きくなっている。両法面の地質背景、斜面勾配など異なるため、定量的な比較は難しいが、モルタルの配合がほぼ同じであること、後述する海岸暴露によるモルタル密度の増大などから、海洋環境でのモルタルは自己収縮が大きく、ひび割れが発生しやすいのではないかと考える。 ひび割れの分布状況を調べると、ひび割れの平均間隔はd=15cmで、静岡法面と同じように、全法面に分布していることがわかった。図18(a)と同じ手法で描いたひび割れ間隔分布は、図31(c)に示す。λ=2.4のポアソン分布にある程度にあうことがわかった。 ステンレスA法面では、全般的に多数のひび割れが発生していた。しかし、ひび割れ幅は、まだ細く0.05mm以下のものは主であり、最大で0.2mmであった。また裏面からの湧水はほとんどなかった。図31(a)に示す長さ1.50m、高さ1mの区域を観察した結果は、M=498cm/m、d=35cmで、プレーン法面の約1/2であった。ひび割れの形状はT字型が一般であったが、図31(b)に示すような交差している十字型も4個所にあった。 ステンレスB法面では、図32に示す長さ1.75m、高さ1mの区域を観察した結果は、M=630cm/m、d=25cm、プレーン法面の2/3、ステンレスA法面の1.3倍であった。ひび割れ幅は、0.5mm前後のものが多く、最大0.8mm(前期と同じ)であり、湧水の跡もかなり残っている。ひび割れ形状は、T字型が主であったが、十字型も3個所にあった。 鋼繊維法面では、図33に示すような長さ1.75m、高さ1mの区域内に2、3本のひび割れが1個所に集中して、ほかのところには発見していなかった。幅は、ほぼ0.05mm位で、最大でも0.08mmであった。スキャンラインで計測した結果は、M=192cm/m、d=88cmだった。しかし、観察はひび割れの集中していた個所で行ってあり、ひび割れの分布は非常に不均一(広い範囲には1本のひび割れもない)であるため、この数字は実際の状況より過大評価となっているものと考えられる。しかし、このデータを用いて、プレーン法面に比較しても、暴露経過後2年間の時点で、鋼繊維補強法面でのひび割れ発生数量は、プレーン法面の20%程度であることがわかる。

以上の調査の結果から、繊維で補強しないプレーンモルタル法面では、わずかの2年間に、幅広で数多くのひび割れが発生したことに対し、繊維による補強で、法面ひび割れへの抑制効果が認められた。ひび割れが多くある場合、法面の耐久性を損なうだけではなく、図34に示すように、海岸風景区の美観性にも影響を及ぼす。海洋環境における美観を重視する法面では鋼繊維を使うことより、外観保全にも利点があるといえる。 暴露時間がまだ短いため、最後の結論が出るまで引き続いて法面の変化状況を観察する必要がある。

4.4 力学試験

力学試験体は1996年3月7日に試験室で打ち込んで作製した。試験体としてプレーンモルタル、鋼繊維補強モルタル及びステンレス繊維補強モルタルの3種類を用いた。モルタルの配合は水セメント比W/C=60%、細骨材率100%で、セメント質量の1.1〜1.3%の高性能AE減水剤と1.5%の材料分離低減剤を使用した。SFRCの場合には、鋼繊維及びステンレス繊維の混入率はいずれも1%であった。鋼繊維及びステンレス繊維は鵜原法面に吹き付け時に使用した繊維と同じものである(4.2を参照)。表12には試験体の配合と使用材料を示す。

試験体は、枠の中に打設後、15×15×53cmのブロックの形で2週間の水中養生を行った。試験体に整形する時に、打ち込みSFRCは枠の近傍に繊維が少ない傾向があることを考慮して、ブロックの周辺1cm厚さの部分を除いて、できるだけ中央部の部分をボーリングした(図35)。全ての試験片は打ち込み面からボーリングした。試験体はφ30×60mmの円状形として、端面は0.01mmの平行度に仕上げた。

ボーリングの際、図35(b)に示すように、試験片採取位置を順番に番号を付けた。室内に放置する試験体と海岸に暴露する試験体の差をなるべく小さくするため、図36(a)に示すように、奇数番を室内、偶数番を海岸に分別して放置した。試験の時にも、図36(b)に示すように室内放置と海岸暴露の試験体をなるべく隣接するものを選んで一緒に試験することにした。

海岸に暴露する試験体は、端面に傷を付けないように両端にプラスチック製のキャップを取り付けて、ステンレス網箱に詰めて、前述の法面の手前でのステージに固定して暴露した(図37)。室内に放置する試験片は普段のプラスチック箱に入れたまま実験室に放置した。実験室の気温は20±3℃で管理した。

同一種類の試験片は約150本を作って、室内と海岸に各70余本を放置した。この本数で、一回で4本ずつを使うことと想定して、6ヶ月に一回のペースで、8年間の試験が可能である。

1996年4月末、試験体の製作が完了して、5月10日に鵜原海岸に設置した。 力学試験は、一軸圧縮試験とした。計測項目は、ロートセルにより荷重、LVDTによる変位、歪ゲージによる破壊点までの縦歪と横歪である。結果としては、応力−歪(σ−ε)曲線、一軸圧縮強度、残留強度、ヤング率、ポアソン比などである。試験装置は、MTS社製の容量1500kNのサーボ試験機を用いた。試験方法は10−5−1の定歪速度制御で、変位2mm或いは残留強度が0になるまで行った。

プレーン、鋼繊維、ステンレスの3種類の試験体を3本ずつ海岸から回収してから、温度20±3℃、湿度70±15%の実験室内に室内放置の試験体と一緒に4週間位(ただし三期目の試験は4ヶ月間放置した)保管した。試験体表面についた錆、ごみ等を除去して、試験体の寸法と重量を測って、試験体の密度を求めてから、試験を開始した。試験期間は1〜2週間程度である。

1995年5月10日に試験体を海岸に設置してから1998年6月までの2年間に、暴露期間4.5ヶ月、12ヶ月、17ヶ月、24ヶ月の4回にわけて試験体を回収し、圧縮試験を行った。そのうち、暴露された試験体の表面と内部の錆、中性化状況もついてに調査した。

図38に、海岸で暴露された試験体と室内で放置した試験体の表面状況を示す。図38(a)は、暴露経過4.5ヶ月間の様子である。プレーンとステンレス試験体は室内に比べて海岸の方が表面がやや荒くなっているが、大差はなかった。鋼繊維試験体では、室内の方はほとんど錆びていないに対し、海岸の方は、表面に露出している鋼繊維は全て錆が発生していた。図38(b)は、暴露経過2年間の試験体の様子である。室内の方は鋼繊維試験体でも、錆がほとんどなく、表面には肉眼で認識できる変化は見られなかった。しかし海岸の方は、全ての試験体で表面の色が暗くなって、かなりの荒い表面を呈していた。鋼繊維試験体では、4.5ヶ月のものより一段と錆の進行が見られた。ステンレス試験体でも、錆のようなものが数個所、観察できた。

同場所で1年間暴露された長方形の鋼繊維試験体(寸法:長さ40×幅10×高さ10cm)を真ん中で切断して、内部の錆状況を観察するところ、図39に示すように、内部では錆が発生していないことがわかる。

この切断面にフェノールフタレイン1%エタノール溶液を噴射して中性化を調べた結果、図40(a)に示すように、表面は全て中性化しているが、試験体の内部で中性化深さは平均1mm未満、最大2mm程度であった。また、2年間暴露された試験体を用いて、その内部の中性化進行を調べたところ、1年前に比べて、さほど進んでいなかったことが図40(b)よりわかる。

各暴露期間ごとの結果を、表13(a)〜(d)に、平均値を表14に示す。図41表14の結果を示す。

図41(a)は試験体の密度の経時変化である。密度の測定は試験体が温度20±3℃、湿度70±15%の実験室内3週間以上、放置されてから行った。室内に放置された試験体の密度はほとんど変化がないことが図よりわかる。海岸に暴露された試験体の密度は、三期目の結果を除いて、室内の方より1.5%程度大きくなっている。

図41(b)にヤング率の経時変化を示す。室内の方が、やや上昇する傾向が見られる。海岸の方は、三期目のデータがかなり低い値を取っている。原因としては、コンクリートの密度が大きいほどヤング率が大きいことは知られており16)、試験体の密度が低いため、その影響が現れたものと考える。

ポアソン比は(図41(c))、室内と海岸とも0.15〜0.18の範囲にあり、暴露による変化は何とも言えない。

図41(d)に一軸圧縮強度の経時変化を示す。室内の方はほとんど変化していないが、海岸暴露の方は一期目の結果では、室内より約10%(5MPa)増大していることが図よりわかる。この結果は過去に報告されている海岸暴露試験の結果とほぼ一致する13,17)。二期、三期の結果は、一期目の結果に比べ、減少している。四期は一期とほぼ同じ値である。プレーンモルタル試験体の強度と密度の関係を図42に示す。ばらつきは大きいが、密度によって一軸圧縮強度は変化していることがわかり、三期目と二期目の結果は密度の影響であると考えられる。今回の結果では、室内に比べ海岸の方が少なくとも強度が低下することはなかった。このことより、安全側に判断すれば、2年間暴露しても、強度は室内とさほど変化していないといえる。

ピーク強度点での歪については、図41(e)ではやや下がる傾向を示しているが、ばらつきは大きいため、明瞭な結論は得られていない。歪1%時の残留強度については、図41(f)に示すように、全般には室内より海岸の方は大きくなっていた。これと密度の変化傾向(図41(a)を参照)と一致している。

図43(a)、(b)、(c)には暴露経過2年時のプレーン、鋼繊維、ステンレス試験体の応力−歪(σ−ε)曲線を示す。図からみると、いずれの試験体でも、海岸の方は、室内の方の曲線を包絡するような形をしており、定性的な傾向は一軸圧縮特性の結果と一致している。