SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)の耐久性


5.まとめ

SFRCの耐久性を関する研究は、一般に錆、中性化、塩分イオン含有量等の化学的側面と曲げ強度、圧縮強度等の力学的側面で調査を行う。手法として海岸での暴露試験などの劣化を促進させた試験は比較的容易であるため、いくつかの報告がなされているが、実際のSFRCがどのように変化しているのかを調べた研究は非常に少ない。そこで本研究ではまず吹き付け後、約20年経過したトンネル支保用SFRCの耐久性に関して調査・試験を実施した。それから吹き付け後3年経過した法面保護用SFRCの実際の劣化(ひび割れ)状況を、プレーンモルタル法面と比較しながら調査した。さらに、海岸での暴露試験を行い、2年間暴露された吹き付けSFRC法面及び力学試験体の経時変化と劣化状況を調べた。その結果は、以下の通りである。

20年経過したトンネル支保用SFRCは、空気にふれている表面では錆が発生しているが、コンクリートに包まれている内部の鋼繊維はまったく錆びていないことがわかった。コンクリートの中性化も普通コンクリートと同程度の速度でしか進行しておらず、コンクリート内部のpHも12程度であった。一軸引張試験および一軸圧縮試験を実施した結果より、吹き付け直後の特性と定性的には何ら変わりはないことがわかった。

吹き付けてから3年経過した法面保護用SFRCは、表面にひび割れが発生していたが、プレーンモルタル法面に比べて遅れて、密度は1/3であった。また、プレーンモルタル法面では全体的にひび割れが分散しているのに対し、SFRC法面でのひび割れは局所的に存在しており、広い範囲内にひび割れが1本もない個所も多く見られた。なお、SFRC法面に特有な交差型のひび割れは、ひび割れ面に鋼繊維による応力が働いていることを示している。また、表面での鋼繊維は全て錆が付いていたが、内部は健全である。以上の結果で、SFRCは法面に応用する場合に、ひび割れに優れた拘束性があると判断できる。

厳しい海洋環境下における吹き付けSFRC法面のひび割れ状況を、同条件で吹き付けたプレーンモルタル法面のそれと比べた。吹き付けてから2.5ヶ月以内にプレーンモルタル法面ではひび割れが発生していたのに対して、SFRC法面ではその時点でひび割れの発生がなかった。暴露してから2年2ヶ月の時点で、プレーンモルタル法面では、ひび割れの密度950cm/mに対し、SFRC法面では、ステンレスB法面:630cm/m、ステンレスA法面:498cm/m、鋼繊維法面:192cm/m、それぞれプレーンモルタル法面の66%、52%と20%であることがわかった。ひび割れ幅は、プレーンモルタル法面で、1.0〜2.0mmの大きなひび割れが多かったが、ステンレス法面では、最大0.8mm、鋼繊維法面では平均0.05mm、最大0.08mmであった。また、SFRC法面で、静岡SFRC法面と同じような交差している十字型のひび割れも多数見られた。以上のことを総合的に見ると、SFRCの方はひび割れが拘束されていることがわかった。

海岸に暴露された試験体と室内に放置された試験体を用いて、圧縮試験を実施した結果、暴露期間がまだ短く、明瞭な結論が出ていないが、暴露されてから2年間の時点で、以下のことがわかった。@室内に放置された試験体は、力学特性値はほとんど変化しなかった。A暴露された試験体は、室内の方に比べて密度、強度などが暴露期間により若干変化したが、顕著な経時変化はなかった。

海岸で暴露することで法面や試験体の表面にある鋼繊維は早々と錆び付き表面では中性化しているが、暴露して2年間の時点では試験体の内部で鋼繊維は腐食しておらず、中性化深さも最大2mm程度で、1年前の中性化深さに比べほとんど進行していなかった。

以上述べたように、法面でのひび割れ観察では、SFRCの方がひび割れは少ない。また、力学的特性に関しても経年変化が見られなかった。しかし、50年、100年の長期な耐久性に対しては、現在の調査を引き続いて、地道に調べる必要があると考える。